マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート   作:みみずくやしき

95 / 141
パート57 トラブルラビット大騒動

 現代で四苦八苦するRTA、はーじまーるよー。

 

 地獄のフランス百年戦争から帰ってきたぜ神浜市。

 いつものように『停止』くんを使っておいたので記憶は残っています。お前最近休まることがねぇな?

 

「いたた……あれ、家? あたしら戻ってきたの?」

 

 帆奈ちゃんまで引き継いでるように見えますが、対処してないのでそのうち夢のように忘れます。あっちで撮った記念写真や思い出の品を見せれば、「そんなこともあったかな」ぐらいには思い出してくれますが悲しいなぁ。

 印象に残ってて常に記憶を維持できるようなもの、ないですかね~?(チラッ)

 

「う、うぐ、眩し……」

「あーっ!?」

 

 というわけで、ラピヌを影の牢獄から引きずり出して現代に持ち込みました。

 

 彼女は肉体もソウルジェムも影の牢獄という切り離された空間に突っ込まれたため、そもそもあの時間以降歴史上に存在しません。確定したのも地獄の門に送り込まれるまでです。

 なので現代に引っ張り出しても過去を変えることにはならず、空白の時間があるなどのパラドクスを引き起こしません。ちょっとミヌゥさん抜け道あるんよ~。

 

 まあもっとも、今回は『停止』くんがいるのでこの辺はあんまり関係ないんですが……リズの決死の行動は連れてくるために必須だったので、帆奈ちゃんに『影』をコピーさせる必要があったんですね。

 

 くれはちゃんは強化イベントを踏みまくると言いましたが、第二部は第一部以上に魔法少女の大人数バトルなので手数の対処も必要です。

 弱すぎず、うっかり退場せず、正義感がないような子が一番いいので強制変身解除の魔眼を持つラピヌをお友達にするんぜよ! 固有魔法の都合上、神浜外で活動させてもロストの危険がほぼゼロなのもウレシイ……。

 

「外に出られた……よし、ぐっちゃぐっちゃにっ!」

「くれは、へ、変身! こいつを野放しにしてたら!」

 

 まま、そう焦んないで。別に対処する必要はないから安心しろよ~。

 だって、ラピヌお姉さまはもう魔法少女じゃないので。

 

「あ、あれ、なんで!? なんで力が!」

 

 そんな簡単にチートキャラが味方になるわけありませぇええん! なんだとぉ……。

 

 というのも、現代が無事にある=イザボーが倒される未来のままということです。

 つまりイザボーと契約してるラピヌお姉さまは契約が強制解除。魔法少女にあるまじき超イレギュラー現象が発生し、再契約イベントを通過しないと見た目も精神年齢も10歳そこらの普通の成人女性です。

 

 ですが簡単に連れ歩くことはできません。魔法少女がただの人間に負けるわけないだろお前オゥ! というのはごもっともですが、向こうからしたら仇なので暴れまくり外に出まくり警察のお世話になりまくり。ロスの温床となります。

 

 まったく説得できない、抑えようにも暴れ出す、困りましたねぇ。

 

 ではこういう時どうするか。もちろんみとさんの出番です。好きッス!

 もしもーし元気? 今から神浜市立大附属に乗り込むからよろしくな!

 

『う、うん……? わかっ――あっ、れいら』

『ちょ、ちょっとみと替わって! くれはさん、この前怪我して私が治しましたよね? あの後大人しくするって言ってたじゃないですか!』

 

 なんのこったよ(すっとぼけ)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんでも解決『心を繋げる力』で記憶を見せてあげました。借りて来た猫みたいに大人しくなったウサギがこちらです。

 

「嘘だ……」

「どうすんのこの空気」

 

 心に直接真実だと理解させてやるので効果は抜群。

 くれはちゃんが覚えている必要があるので、コルボーの最期を見てミヌゥの発言を引き出す必要があったんですね。

 

 一応この状態でもパーティに入れることはできるものの、契約してない彼女にできることはありません。

 また、仮加入の段階なので条件を満たさずに一定時間が経過すると離脱してしまいます。こういうキャラは他にもいますが、ラピヌの場合は離脱=死亡なので再チャンスはありません。マップ切り替えで復活なんてしないので絶対に正式加入させましょう。

 

 というわけでダメ元で説得してみましょう。一発通ってくれたら最速待ったなしです。

 

「ふん、ほっといてよ!」

 

 ダメみたいですね(諦念)。倫理観ゆるキャラなので説得の難易度が非常に高いですよこれは。

 それに見てくださいよこの信頼度! ×じゃなくなったのに低すぎる数値! いつ刺されてもおかしくねぇぜ?

 

 だったら成功するまで説得すればいいだろ!

 ジュージューになるまでやるからなぁ~? お友達になるんぜよ!

 

「こんのぉ!」

 

 いってえ殴りやがったな! 

 ラピヌお姉さまの女子パンチがくれはちゃんの鳩尾にクリーンヒット。地味にダメージを受けました。

 

 しょうがねぇなぁ……まあ最悪第二部第4章ぐらいまでに成功してればいいので、必要なイベントだけ回収し、信頼度を上げつつ合間合間に行っていきましょう。できなかったら? 再走だよ再走!

 

 それにそんなことしてる場合じゃねぇ。不思議なことに(すっとぼけ)ラピヌお姉さまのメンタルは危険域。まずは引き連れてメンタル回復してあげましょう。恩を押し売りします。

 

 もちろん、フランス百年戦争時代の恰好で大っぴらに出歩かせるわけにはいかず、本来はここでドキドキワクワクショッピングイベントが始まるのですが……くらえ!

 

「……なにこれ? これ服?」

 

 柚希姉妹と行ったショッピングモールで買った服をプレゼントすることでスキップできます。RTAなんだから短縮しますよそりゃあねぇ。見たかったら通常プレイをして、どうぞ。

 信頼度が低いと渡しても着てくれないのが普通ですが、今回は激闘後でボロッボロなのでしぶしぶ着てくれます。

 

 そしたらさっそく神浜観光ツアーとしゃれこみましょう。

 この時、スマホは絶対に所持品から外してはいけません。最悪また夢の中からやり直すことになります。

 

 ただ高速で散策するだけでは絵面が面白くないので……みなさ~まの~た~め~に~……。

 

 

 

 

 

 魔法少女のラピヌが現代で暴れたらどうなるか解説します。

 

 中世フランス並みの倫理観を持つラピヌがあの力で暴れまわった場合神浜は大惨事。あっちこっちで死傷者多数、もはや魔法少女の存在を隠し通せるわけもなく、危険物扱いされなんやかんやで神浜が丸ごと吹っ飛びます。怖いねぇ。

 

 変なフラグを立てて現代に連れてきてしまったらゲームオーバー確定とかやってられないですよね。人間ただでは転びません。そんな惨劇を経験した有志により対策は確立されています。

 

 例えばねむちゃんがウワサの力で作成した変身不可のブレスレット。変身を封じたうえで、神浜市内に置いておけば魔女化がドッペルになるので固有魔法が発動せず無力化できます。

 または様々な方法で強化した雫ちゃんに太陽に跳ばしてもらうのが手っ取り早いですね。蘇生ループを半永久的に繰り返すことになり考えるのをやめます。ミスると神浜どころか地球が終わりますが些細なこった。

 

 こんなこと話してるうちに等速に戻ってますがガバでもミスでもありません。

 

「くれはさあ、どこまで行くの。もう夕方だし、帰ろうよ」

「ふん……」

「ほらラピヌもずっとこんなだし」

 

 そりゃあもちろん参京区の『あした屋』なんだよなぁ。

 購入できる駄菓子は子供キャラにプレゼントすることで信頼度を上げることできます。特に味覚が中世フランスのラピヌお姉さまには特効ですね。

 

 おう、やってるかい!

 

「……お?」 

 

 あぁん? なんかイベント踏みました。

 

「おぉー、帆秋久々だな! ……ってあたしより高けぇ。背ぇ伸びたなぁ」

 

 急に話しかけてきたのは『飾利(かざり) (じゅん)』! あした屋に関係する魔法少女!

 んなことよりどうしてまた知り合いが増えてるんですか? ことと次第じゃリセだぞ?

 

 しかし、この程度でうろたえていたら第二部なんて走れません。既に予想できています。くれはちゃんのプロフィールを確認しているのが証拠です。ホントです。

 これはいつの間にか生えたくれはちゃんの妹、『帆秋 あかり』にあした屋との信頼度があることが原因でしょう。こんなん考慮してらんねーよ! 別にチャートに影響しないのでいいですぅ!

 

 実際今回は上振れです。

 飾利潤の情報は夏目かこ、古町みくら、吉良てまり、雪野かなえといった魔法少女から得られるのですが、先に会えるならそれに越したことはありません。このチャートではかこちゃんから入手するイベントを起こすつもりだったのでその分短縮できます。

 

 ですが……うーん、普段よりスケジュールが後ろにズレているかもしれません。

 彼女が挨拶以外でも何度かあした屋に通うパターンはありますが……まあ『ディペンデンスブルー』は第二部第3章以降第4章未満? なのであんまり関係はないですね。第二部に入る頃にはあした屋では会えなくなるはずです。

 

 そんなことよりくれはちゃんのお財布を開放。けっ、しけてやがる。

 フランス帰りで金策のアテはあるので全財産ぶち込むぞ! おうあした屋のバアちゃん、棚の全部頼むぜ! 

 

「おーおー……あんたも生粋の駄菓子ジャンキーか?」

 

 違います。

 この大量の駄菓子は全部ラピヌお姉さまに食わせます。オラ信頼度を上げるんだよ食え!

 

「なっなにす、もがっ――あまっ!? え、なにこれ!?」

「もしかして初めて食ったのか? ハハ、じゃああたしが他にも教えてやるよ」

 

 あした屋は子供がたくさん来るので扱いは手慣れたもの。店主のバアちゃんと潤にかかればこの通りってワケ(一般通過アリナ先輩)。

 じゃあもっと駄菓子を食べてもらおうかな。お菓子もジュースもたくさんあるよ? 

 

「こんのぉ!」

 

 いってえ殴りやがったな!(2回目)

 油断も好きもありゃせずラピヌお姉さまは逃走、片っ端から食わせてたら当たり前なんだよなぁ。

 

「ど、どうすんのくれは! あいつ逃げた!」

 

 大丈夫だってヘーキヘーキ、安心しろよ~。

 神浜は広いので普通に探すと大幅に時間を食ってロスしますが、もう夕方ですし連絡を入れてみましょう。ハロハロー?

 

『もしもし……』

「誰に電話してんの? え、クシュ? いや誰?」

 

 ラピヌは確実に北養区の山中に行くので、普段その周辺で魔女を粛清しているクシュちゃんと知り合っていると手伝ってくれます。ウサギ狩りとしゃれこもうぜ。

 

 でも北養区は自然ばっかりですし、もう少し情報が欲しいですよねぇ。

 さて次はかはるんに電話しましょう。もしもーし。

 

『これはくれはさん、なにか御用でしょうか?』

 

 実は北養区、一部の監視カメラが香春グループの管理下にあります。かはるんの身に危険が迫ればすぐに救援が飛び込んで来る脅威の監視体制です。

 かくかくしかじかで人を探してるので情報が欲しい……と言えば、北養区ならすぐ見つけてくれます。この情報をクシュちゃんに伝えればはい捜索終わりっ!

 

 あとは情報が来るまで捜すという名目でやることやっちゃいましょう。

 南へ参りまーす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 連絡が来たので単身山へアタック。

 クシュちゃんの隣にラピヌお姉さま発見! もう逃げられねぇぞ!

 

「……くれは」

「ね、すぐ来てくれた」

 

 へっ、甘ちゃんが! 現代でどう動くかなんてお見通しだぜ!

 夜中腹減んないすか? 減ったなぁ(断定)。今度はウォールナッツに寄って貰ってきた料理を食うんだよ!

 

「どう、かな? ウォールナッツはこの辺りで有名なお店なんだ」

「う、うう……うぁぁぁぁぁん!」

「えっ、泣いちゃった……!」

 

 百年戦争ぐらいの料理とオーダーしただけで良い仕事しますねまなかちゃんは。

 ほら見てくださいよこの信頼度、一応ついて来てくれるまで回復しましたよ! ちょっと想定より高いですが!

 

 これにてラピヌを一時的に置いておけるようになりました。

 後は予定のついでに各地を連れ回しつつ、信頼度を上げていきましょう。

 

 連れて行けない日はどうするかというと、紗枝ちゃんにバイトとしてラピヌのお守りを頼んでおきましょう。5000円だな? 5000円で引き受けるんだな?

 スマホを欠かさず持ち歩きつつ今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 むかついた。

 

「大丈夫?」

 

 私にかけたその言葉が、なにを考えてるのかわからなくて、ただただ頭にきた。

 

 帆秋くれは。ずーっと表情を変えないおかしなこいつのことは知ってる。

 よくわかんない魔法で私を転ばして、光線を何度も弾いて、本気で撃ったのさえ止めたイヤなヤツ。"乙女"たちの後ろにいて積極的に戦おうとしてなかったから、メンドーとしか思えなかった。

 

 けど、コルボーを殺したあいつらの仲間だ。それだけで殺すのには十分だ。

 手と足を引きちぎってやる。頭をかち割ってグッチャグッチャにしてやる。殺した後はもっとバラバラにしてやる。

 

 そう思って変身しようとしたのに――できなかったんだ。

 

「あ、あれ、なんで!? なんで力が!」

 

 お母さまがくれた力を失くすなんてありえないのに、私の中のいやに冷静で大人な部分がひとつの答えを突きつけてくる。

 

 

 

 

 もう私は、魔法少女じゃないって。

 

 

 

 

 ……その後のことも、よくわからないままだった。

 

 そもそも、この場所は全部変だ。見たこともない建物に、馬がいないのに走る鉄の馬車。みーんな変な服を着てて、私の知ってる世界じゃない。

 時代が違う、国が違うなんて言われてわかんないことだらけなのに、連れられた先にいたヤツの魔法はもっとわかんなかった。

 

「頼むわ、みと」

「う、うん……? じゃあ二人とも手を握ってね?」

 

 それは心を見せつける嘘のつけない魔法。見たそのものが見える記憶の魔法。

 見知った風景に映っていたのは、コルボーのソウルジェムを砕いて、私たちを愛してないと言ったミヌゥだった。

 

 もう、ぜんぶ、わからない。

 

 ミヌゥがなにを考えているのかわからない。

 むかつくあいつがどうして私とコルボーのために怒ったのかもわからない。

 

 唯一わかったのは、繋がれた手の感触。

 

「……大丈夫、だから」

 

 ただただあったかくて、でもどこか心細くて震えてる、不思議な手。

 私を安心させたいのか、自分が安心したいのかわからない、どっちつかずの頼りない手。 

 

 忘れもしない、あの堕とされた暗闇の世界から引き上げてくれた光だ。

 

 こんなのすぐ振り払えばいいのにできなかったのは、()()だったから。

 その意味に気づいた時、心がぐちゃってなったんだ。

 

「ふん、ほっといてよ!」

 

 それが怖くて、モヤモヤとした感情を拳にしてぶつけた。

 顔を真っ赤にして怒ればいい。最初のように敵になればいい。そうすればきっと、この気持ちは晴れる。

 

 ――なのに真顔は変わらなく、ただただ、その瞳が悲しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、くれはは私を着替えさせた。

 ちょうど家にあったっていう服はなぜか私のサイズにピッタリで、悪い気分はしなかった。

 

 コイツは不思議なヤツ。紫のやつが「構うことないって」とか言ってるのに、私を連れ出して色々見せてくる。

 

 でも、今はなんにも考えたくなかったから、黙ってついてった。

 ずーっと私を気にしてるようで、景色を見せたり、気になるものがあることに気づいたらすぐに説明したり。説明の内容は大半が間違ってたらしくて紫のに訂正されてた。

 

 それで日も落ちてきた頃、あした屋って場所に着いたんだ。

 

「おぉー、帆秋久々だな! ……ってあたしより高けぇ。背ぇ伸びたなぁ」

 

 先にそこで立っていたピンクのヤツが急に話しかけてくる。

 友達みたいな言い方だったけど、こいつらは知らないみたいで返事しない。ずーっと無言で、「誰?」って紫のが聞き返してやっと話し出した。

 

「まあ、神浜を離れて二年だもんな。入院中にお見舞いに行けなかったし……」

「二年? お見舞い? ……妹の知り合い?」

 

 その話は、少しだけ気になった。 

 

「――そっか、亡くなったのか」

 

 くれはの家族は、病気や事故でみんな死んだらしい。

 普段ならそんなのどーでもいい。私には関係ないし。

 

 だけど、だからこそ、理由に繋がっちゃう。

 それがイヤで、目を背けた。

 

 顔を伏せたままどのぐらいたっただろう。

 気がついたら会話の雰囲気は明るいものへと変わっていて、先にいたピンク髪がパンッと手を叩いた。

 

「よしっ、改めて自己紹介しとく。あたしは飾利潤。親の出張の都合で神浜市を出ててよ、最近帰ってきたばかりなんだ。ま、電車で日帰りできるとこだけどなー」

「よろしく」

「……よろしく」

 

 二人の後に私は続けない。必要ないし。

 

 眉一つ変えないくれはは、急に物が並んでる棚に向かっていったかと思ったら、片っ端から持てるだけ持っておばあちゃんに話しかけていた。

 それが買い物だってことは会話でわかった。

 だけど、1回じゃない。何度も何度も止められるまで買い続けてた。

 

「どうしたの気でも狂ったの?」

「私は正常よ」

「まーた始まった……普通は全財産使って駄菓子買わないって」

「正常よ」

「ほら冷や汗出てる!」

「オイオイ……」

 

 その買ったものってのは全部私に渡された。

 次から次へと食べてもなくならない。しゅわしゅわするアメみたいなの。口に入れるとパチパチと弾ける丸いの。色んな味の棒。ひたすら甘い黒いの。全部が食べたことなくて、こんなのがあるんだって素直にびっくりした。

 ただ、なんか足らなかった。私一人だけだから、完璧には届かない。

 

「しかし、今日は懐かしい顔がよく来るねぇ」

「……んん? バアちゃん、あいつに姉がいたこと知ってたのか?」

「まあねえ、ちょうど今日みたいな感じに前は妹ちゃんと一緒に来てたんだよ。あんな感じの無表情だったけど、妹がおいしそうに食べてると嬉しいみたいで、少しだけ微笑んでたりしたもんだ。それだけに、今のくれはちゃんはねぇ……」

 

 ああ、そっか。

 こいつの真顔、ちょっと違うの、そういうことか。

 

 ……よりいっそう、モヤモヤした。

 むかついて、一発殴ってから駆け出した。

 

 行く先なんて決めてない。

 思う方向に突き進んでいれば、今度こそ浮かんだモヤモヤとした感情が晴れる気がした。それどころか、またみんなに会える気さえする。

 

 だけど、行けども行けども知らない景色だ。

 鉄の乗り物にぶつかりそうになってすりむいた脚が痛い。それでもグッと我慢して、いっぱい木がある方向に向かった。知ってる風景はそれだけだったから。

 

「……月だ」

 

 空に浮かぶまん丸の光は知ってるものよりぼやけてるし薄暗いけど、確かに同じ。

 森に着いた頃にはもう周囲は暗くて、その静けさも相まって懐かしい。近くの木に登ってみるとなおさらだ。

 

 それから考えた。

 ぼんやりとしてた頭は段々と晴れてきてて、自分が自分じゃないみたいに思考が回る。

 

 今の私が魔法少女じゃないってことは、たぶん、お母さまが死んじゃうんだ。

 それを、あのミヌゥが許せるはずがない。よくわからないけど、今まで立ててきた作戦も全部、防ぐためにやってたはず。だったらあいつらを呼び寄せたように、私も戻れるかもしれない。

 

 いいや、過去に戻る方法はきっとある。あるんだ。なきゃおかしい。

 何度かその言葉を繰り返すと、より心が落ち着いた。

 

「でも、どうしよ……」

 

 お母さまにコルボーとミヌゥがいればなにをすればいいか教えてくれた。

 侍女がいれば命令すれば動くけど誰もいない。

 

 ……魔法少女じゃない私は、どうやってひとりで生きればいい?

 

 足の先からイヤな冷たさが上って来て全身が冷えてくる。

 一点を見つめられなくなる。ドキドキと心臓がヘンだ。不安が抑えられない。

 

 怖い。

 ただただ、怖い。

 

「う、うぅ……」

 

 気分が悪かった。

 暗い森が底の見えない崖のように真っ暗に見えて、それがまるで、あの影の世界みたいに思えてきて、飛び降りた。

 

 逃げないと。どこへ?

 倒せばいい。どうやって?

 手伝わせれば。誰に?

 

 そんな思考が終わりなく頭を支配して動けない。

 さっきたくさん食べたはずなのにお腹がすいてきて、私には縁がないはずだった()()()()()が迫ってきているみたいで、呼吸することさえツラくなってきた。

 

 次に足に力が入ったのは、ガサリと草を踏む足音が聞こえてからだ。

 

「誰だ!?」

「あなたが、ラピヌ?」

 

 出てきたのは小さいヤツで、着ている服はここに来てから見たことのないタイプ。どっちかと言うと私たちみたいな感じだった。

 

「私は入名クシュ。くれはさんにあなたを探すのを頼まれて協力してるの。ここ……結構危ないから」

「……あいつが?」

「すごい心配してたよ。たぶん、すぐに来てくれる」

 

 そう聞いて、安心した自分が信じられなかった。

 

 敵だった。あいつは、そう思ってない。

 コルボーを殺した。いいや、殺してなかった。

 ミヌゥだってあいつは殺せって――1回も、言ってなかった。むしろ殺すなって……?

 

 聖女の仲間だって理由だけで十分でも、浮かんだ疑問が悩ませた。

 どうしてあいつは怒らないのか、どうして手を伸ばしたのか。その理由と掴んだ手の感覚がずーっと心に焼き付いている。

 

 帆秋くれはがやって来たのは、本当にそれからすぐのことだった。

 

「ラピヌ」

 

 私を見て、なにも言わなかった。

 怒ったら逃げてやろうと思ってた。抱き着いてきたりしようものならまた殴ってやるところだった。

 

 だけど私をじっと見たかと思えば、片手で持てるぐらいの箱を渡してくる。

 

「くれはさん、それ」

「お腹減ってるかなって」

 

 開けてみると、それは知ってた匂いと見た目だった。

 その味は昨日も食べたはずなのに、とっても懐かしくて、どうしてか泣いていた。

 

「……」

 

 なんにも言わないくれはの目は、()()だ。

 そうだ。家族が大好きで仲良くしてて当たり前だって思ってる、ひとりぼっちになったこいつが、どこか私と同じに見えたんだ。

 

 だから我慢できる。ほんのちょっぴりは信頼できる。

 それに戻るまでなんだから、利用してやるだけ利用すればいい――そう、思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんでお風呂にスマホ持ってきてんの? わざわざビニール袋に入れてまで」

「いいじゃない」

「いいけどあんた使わないじゃん――って、ラピヌ! またシャンプー丸ごと使ってるし!」

「ウヒヒ!」

 

 言ってしまえば、"現代"の暮らしは楽しかった。

 湯汲ひとつでもね、泡をたくさん出せたり、ブクブクとするお湯だったり、サウナまであってぜんぜん違う。入り方のルールが違うらしいけどそんなの知らないし。

 

 そうそう、遊び相手も増えたんだ。

 

「あの……この子は?」

「知り合いよ」

「なんだいつものまた増えてるやつじゃねーか」

「あちし毎回別の人と会ってる気がする!」

 

 フェリシアとかあやめとか、なんか気が合う小さなの。魔法少女だったらもっとバーンって遊べるんだけどもったいない。一緒にいるかこはあんまり周囲にいなかったタイプで、時々私を怯えた目で見てるのがむしろ心地よかった。

 

 そういえば、あやめと遊んでたらほとりってのが来たこともある。

 

「あちしが鍛えてやってんだ!」

「ピ、ピンク先輩にはお世話になってるんです!」

「ピンク先輩?」

「へっへっへ、あのドラレンジャーのドラグーンピンク! この前話したろー?」

 

 こうやって出会うやつら、不思議なことにみーんなくれはの知り合いなんだよね。

 

 あとゲテモノスイーツ? ってやつも食べた。

 

「なんですかつむぎさんと一緒に急にまなかを呼び出して……ってうおわああああああ!! なんですかこれ! ウエハースとしてスターゲイザーパイが如く天空を見上げる焼き魚! 底にあるのはシリアル……じゃない! 鶏の唐揚げ!? そして添えられたしめじ、タケノコ、スイカ。意味不明の並び! ふんだんに使われた生クリームとストロベリーソースはまだいいです。でもそこにイクラ! ひょっとしてチョコチップだと思ってるんじゃないですか!? 食材への冒涜ですよ!!」

「うへへおもしろーい! よしぐっちゃぐっちゃに!」

「まなか、ねえ、まなか」

「き、気絶してる……」

 

 そうそう、食べ物といえばあした屋にもよく行ってる。

 来てる子たちは小さいけど、お姉ちゃんは大人だから分別のある楽しみ方ができるもん。潤が教えてくれるからちゃんとわかるし。

 

「こいつはこうやって混ぜるんだ、ほらやってみな」

「ぐっちゃぐっちゃに! うへへ、あまーい!」

 

 ……なんて、あの恐怖を忘れてしまうほど、こんなんでいいのかなって過ごせていた。

 

 それでも、ミヌゥのことはずーっと心に残っていて、でもどうすればいいのかわからなくて。なんて言葉をかけてあげたらいいかも想像できなかった。

 いつか一番良いやり方を思いつくと考えてたけど――その時が来るのは、ずいぶん早かった。

 

 

 




■今回の内容
 『はじまりは夢を重ねて』(一部分)

■飾利 潤
 駄菓子系魔法少女。だがしかし。
 月出里が神浜に来たあとぐらいには戻ってきている。

■ラピヌお姉さま
 現代なので魔法少女の力が失われている。
 素の状態のまま来たらバランスが壊れちゃう、ヤバいヤバい。

■くれはちゃんハウス
 帆奈ちゃんに加えてラピヌが追加。
 フェリシアちゃん「地獄みてぇ」

■ゆきかちゃん
 特に関係ないトラブルでラビット。
 たると☆マギカとはただならぬ関係を持っているってもっぱらのウワサ。

■ほとりん
 なんとあやめにコーチングしてもらう話がある。
 意外とちゃんと教えてもらえてひとりで魔女と戦えた。パワーアップ。

■くれはちゃんの妹
 名前被ってるんですがそれは大丈夫なんですかね?
 普通にあかりと言ったらあの子です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。