マギアレコードRTA ワルプルギス撃破ルート南凪チャート 作:みみずくやしき
ラピヌお姉さまと散策するRTA、はーじまーるよー。
前回はミィちゃこと『
みかげちゃんはあのみたまさんの妹で、『肉体崩壊』という超殺傷能力の高い固有魔法を持つヤバめな魔法少女です。
特にチャート上で重要な役目はないのですが、グループのひとつ『午前0時のフォークロア』の関係で会っておくと早くなるので合う予定はありました。偶然会えなかったら? みたまさんをストーカーするだけなんだよなぁ。
「ねーねー、今日はどこ行くのー?」
それはさておき、タルトイベントを完遂させたことでラピヌお姉さまが加入しました。
再契約イベントも速攻で完。くれはちゃんより圧倒的に強く、いつでも連れ回せる魔女化でロストしない戦力ゲットです。
また、以前言いましたが、この先調整屋でのステータス配分はしません。ロスです。強化イベント以外はほぼ第一部終了時のステータスのまま最後まで駆け抜けます。ちょっとひとりだけレベル置いてかれてるんよ~。
ただでさえ紙装甲なのに走り切れるの? バカなの? とお思いのそこのあなた。元より当たったらお陀仏なので全部避ければ問題ありません。なーにソウルジェムが割れなきゃ生きてるゾ。
それに、調整を受けるということは記憶を見られるということ。ラ・レーヌの黄昏の記憶をみたまさんに見られるとそれはもうパニックパニック大混乱。神浜市に舞い降りる滅びよくばりセットの中に封入され最後の最後で大復活。ラスボスお代わりのご注文で戦うことになってしまいます。
とはいえケアしてるので大丈夫です。チャートにも書いてあるのでちゃーんと守ってます。
安心したらラピヌお姉さまを連れてイクゾー!!
◇
やってきました南凪の空港。
南凪区は国際色豊かなので空港もあります。しかもミナギーシーのホテルからシャトルバス出てるらしいっすよ?
「おほー! いいのっ? いいのー!?」
さっきから自販機でジュースを買いまくってますが、こうすると不思議なことに誰も近寄らなくなり、空港内でランダムイベントが発生しなくなります。余計なイベントはフヨウラ!
しかも増えたジュースはラピヌお姉さまにあげて信頼度の足しになります。食品ロスを防ぐ魔法少女の鑑(自画自賛)。
「立ってるだけ? ねえねえ乗らないの?」
空港くんの役割通り海外に行くこともできますが、そんな予定も時間もないので行きません。
フランスで色々とフラグを立てて来たのでこうしてゲート前で待っていると……。
「おー、ウサミミフード! KAWAIIデスネー!」
「うわああ、なんだお前!」
違う、アシュリーじゃない! なんで空港来てんだお前!
今来たのは『アシュリー・テイラー』! 工匠学舎に属する外国人魔法少女デース! アリナ先輩と違って普通に英語が喋れマース。
しかしジュース大量買いでそうそう話しかけられないはずなんですが……。
「はなせー! 持ち上げるなー!」
「くれはのことは理子とせいらとあの人から聞いていマース。だから出迎えに来てたデス。そろそろ来るはずデスよ」
ははぁ~ん? なんかのフラグ立ててたみたいですけど、これは……なんでしょうね?
「は?」とか「再走しろ」とか聞こえてきそうですが、わからないものはわからないんじゃい!
後で調べましたが、アシュリーは海外に行くキャラと知り合ってる可能性があるそうです。ふらっと数か月行くアリナ先輩とかですね。またアイツか(困惑)。
ですが今回は……。
「来たデース!」
「おや、探す手間が省けたみたいですね」
「お、お前……! あの錬金術師っ! なんで生きてるの!?」
Tシャツにジーンズのラフな格好の彼女は久しぶりのペレネル先生です。600年ぶりぐらいですかね?
食器や宝石を売りさばくフランスの恩を仇で返す行為は彼女を呼び寄せるフラグのひとつです。フラグが立てられる、お金も貰える、ビキビキビキニ123。
どうもこのフラグを立てていて、工匠の学生複数と知り合っていると確率で起こるらしいです。本走中のくせに『忘却の輪舞曲は久遠に睡る』が終了してたことを完全に忘れてたヤツいるらしいっすよ。
「それはまあ、魔法少女ですので。あなたもいるではありませんか」
「ん? んんー? そうなのかな……?」
なんで生きてるのという歪みねぇ疑問ももっともでしょう。魔法少女だって人間。普通に成長するし老化します。
ところが彼女はかの賢者の石の錬金術師、ニコラ・フラメルの妻です。錬金術キメてるのでグリーフシードさえあれば不老不死でしょう。ズルくない? 錬金術はルール無用だろ。
ちなみに、いるんだったら第一部で助けてくれてもいいんじゃないかと文句を言いたくなりますが……。
「もっと前から連絡できれば良かったのですが、このタイミングでなければタイムパラドクスが起こってしまって世界が闇に閉ざされる可能性もあったもので」
という理由です。
実際はさっきフラグ立てたから第一部じゃ無理なんですけどね。こいつすげぇ辻褄合わせだぜ?
「あれ? でもなんで見た目変わってないの?」
「ああそれは、ニコきゅんの賢者の石――」
やっべノロケスイッチを押すなラピヌ! 長話はやめろー! ロスりたくなーい! やめろー!!
「……ん? あそこ、誰か見てるデスよ」
なにィ!?(バッ)
これはチャンスです。クソ長ノロケ話をされる前に別のイベントを割り込ませてキャンセルだ!
はいそこ! そこの工匠の!
「あ、く、くれはさん……」
「Oh! 塁デス!」
華麗な判断により塁くんの会話を差し込ませて防ぎました。こういう要所要所の判断が重要だってそれ一番言われてるから。
せっかくいたのでついでに解説しておくと、記憶保護してないので塁くんには大勢の死相が見えた記憶は残っていません。トラウマものだからね、仕方ないね。
しかしイベント中の成長取り消しなんてご無体は許されず、不思議なことに固有魔法の経験値はしっかり上昇。成長したことで危ない人間の死相を勝手に見せてくるありがた迷惑オートモードが実装されました。
今後はランダム要素で狙われるキャラを察知できるだけでなく、彼女自身が他の魔法少女をカバーしてくれます。チャートの安定度が上昇して完走しやすくなるわけですね。塁くんの双肩に魔法少女の運命が託されていた……?
走者ならもっと攻めたチャートで走るべきなんでしょうが、ただでさえ長いRTAなのに運が絡むとかやってられねぇぜ。さすが、完走を目的としてるだけはある(皮肉)。
そんなこんなで話していたら、帆奈ちゃんがお迎えに来たので移動しましょう。
ペレネル先生は勝手にどっかに住みます。アシュリーハウスとかじゃないっすか?
と、その前に……ペレネルさんよぉ、なにか忘れてませんかね~?
目立つ場所から離れたし、(例のブツわ)キメてるんだろ? くれよ……。
「そうでした。渡そうと思っていた物があるんです」
「これ、くれはのカトラスにそっくりだけど豪華な……」
「私が冶金したものです。時折タルトよりも魔力を消費していたものですから、相当な不器用かと思いまして……当時はもう一度出会えるとは思っていませんでしたが、お礼の品として用意していました」
来た、来た、来たなあっ!?
これぞフランスへ行っていた理由! くれはちゃん強化計画のひとつ! ペレネルさん特製カトラス『クテラス・ド・ペレネル』!
このように、フラグを立てておけばペレネル先生が作れる武器なら作ってくれます。
申し訳ないがルービックキューブやクレーンゲームのアームを使うヤツはNG。しかしエリザのライフルを作ってるので銃は作れますしガトリングぐらいできます。ちょっとオーバーテクノロジーすぎんよ~。
カトラス装備しました? しましたね? してなかったら(1敗)になるのでちゃんと確認して、どうぞ。
「おぉ~……ねぇねぇ、私にも貸してよ~!」
「あんた剣使わないじゃん」
カトラスにはいろんなメリットが入ってるんだぜ。
妙に魔力の消費が抑えられてるのは『魔力消費減少』だな、このバフは『固有魔法強化(弱)』だな、この切れ味は抜群だなとかガタイで分析。
このままでもスーパーアイテムですが、条件を満たすと"真なる賢者の石"まで組み込んでさらに強化してくれます。
するとステータスの魔力さえ上昇、アルまど様の固有魔法強化バフや『概念強化』といった固有魔法と同種のバフが発動するとんでもアイテムが完成。強くなっていくくれはちゃんが頼りになるって言うけど、こんなことしてたらタイムマジに壊れるな。なのでやりません。
あともうペレネル先生に用はないのでどうでもいいです。
特に居座る理由もないので神浜観光したらそのうち帰るでしょう。ありがとな、頑張りや錬金術。
いきなり最終装備になったので今回はここまです。ご視聴ありがとうございました。
◆
はっきり言おう。
最近の水樹の調子はおかしかった。
それはダークヒーロー的言動である厨二病のことじゃない。水樹に教えてもらったし、彼女の個性で良いものだとは思ってるんだけど……なんか、ちょっとおかしいんだ。
「せいらちゃん、私ね、世界を救ってたみたいなんだ……」
だって、学校で会ったら開口一番にこの一言。
いつものカッコいい口調でなく素で言うのは明らかに奇妙で、随分と本気なんだろうと心底理解できる。
世界を救ったって言われたらすごく気になる。そういう題材の映画はたくさんあるし特撮もそう。
なにより、水樹が本気で言ってるんだ。
話を聞きたい気持ちは次第に抑えられなくなっていって、自然と話題はそれになる。
「どういう感じで? アイデアにもなるかもだし知りたいな」
「ふふ、それはね……」
「それは?」
「……わかんない」
って、本人にもわからないとなるとどうしようもない!
あわや私の好奇心は行き場をなくして不時着…… かと思いきや、意外にも、お昼休みに次のステップに進んだんだ。
「世界を救った、ですか?」
「なにか忘れてる気がするけど……スケールが大きすぎてウチにはわからないなぁ」
そう言ったのは、映画撮影の時に知り合った魔法少女の二人。千秋理子ちゃんと天音月咲先輩だ。
彼女たちとはお昼休みに一緒に食べることがある。千秋屋さんの試作品のお試しがあったりするから結構楽しみで、二人の性格もあってか、水樹もいつのまにか慣れていた。
「そうだよね、正直私も把握してないし……」
「あれ? じゃあなんで救ったってわかったんですか?」
「言われてみればなんでだろ? 水樹、わかる?」
「うん、それはわかる……くれはさんが言ってたから」
くれは。
ある意味で想定できた名前が出て来て、私たちは一斉に微妙な反応をした。
私はため息をつき、理子ちゃんは苦笑いをし、天音先輩は呆れたふうに納得するというように。
それぐらい彼女の名前は変な出来事とセットなのだと、この中では付き合いの浅い私でも十分にわかっている。
ただ水樹は「え? そんな……?」とオロオロし始めてしまった。
「良い人だって知ってるんですけど、お店に来るとお父さんとお母さんは複雑な目で見てるんです。南凪の不審者だって知ってるから……」
「ウチと歩いてるのをタケさん――あ、竹工房の人ね。その人に見られたことがあって、ほら、くれはさんって綺麗だから話しかけてきたんだけど……会話が斜め上の方向に行っちゃってカバーが大変だったんだよー」
「大丈夫だよ水樹! くれはさんはほんとアレだけど、嘘は言わないから!」
「フォローどうもです……」
いや確かに、水樹の思うこともわかる。
クールかつミステリアスで見た目だけは良いから、あれで優しくされたらラブロマンスの映画のごとく一目惚れする人だっているだろう。時には凛々しくもあるのだから、古町先輩にさせたように髪をまとめて男装させたらよっぽどだ。同性だって惹かれる魅力があるに違いない。
もちろん、見た目だけだって知ってると途端に心配になるんだけど、そこを含めても水樹は気に入っているようだった。
だけど結局、世界を救った話はまったくわからない。
「うーん、考えてもわかんないか。よし、くれはさんに会いに行こう」
「いきなり!?」
だって思い立ったら即行動!
その意気込みで、放課後になったら水樹を連れて南凪区へ向かう……つもりだった。
学校を出てから気づいたのは、彼女は南凪に住んでるってだけで家の場所も知らないということ。忙しいのか連絡しても出ないし、あの神出鬼没っぷりを思うと学校に行っても会うのは難しい。どこに行ったか知ってそうな人もいない。
しょうがないからくるっと回って学校に戻り、なにか手がかりがないかと歴史研究部の門を叩く。
すると、部室では相変わらず古町先輩と吉良先輩が思い思いに過ごしていた。ここに私を加えたらいつもの光景だ。
とは言うものの、今は水樹がいる。
そして――
「コンニチハー! アシュリーデス!」
僅かな時間の間で、私の後ろにさらにもう一人増えていた。
「いやせいらちゃんが意気投合したんじゃ……」
「こればっかりは仕方ないって」
彼女は理子ちゃんの知り合いで、アメリカからの留学生のアシュリー・テイラーさん。
そう、テイラー。
聞き覚えのある苗字にまさかと思って聞いてみたら――彼女、ハリウッドの超大物映画監督の娘さん! ということはお母さんは女優さん! とんでもない大物なんですよ!
彼女が我が映画研究部を見たいというわけで、こうして連れてきたわけなんです!
「三穂野、声が漏れてますよ。事情はわかりましたが歴史研究部です」
「と言ってもずっと仮部室だし、特に見るものはないと思うけど……」
「映画撮影をしたもののお蔵入りしたと理子から聞きマシタ。ぜひインタビューしたいデース!」
アシュリーさんの言葉に自然と部室に飾ってある集合写真に視線が行く。
それは私たちの魔法が大事件を起こしたもので色々あった話。全部が全部魔法少女に関係することでもないし、撮影の方法なら問題ないから私が許可を出したんだ。
「そうだ、その前にちょっと。先輩方、帆秋さんが行きそうな場所知りませんか?」
「私たち、聞きたいことがあって……」
ダメ元ではあった。水樹には悪いけど、今日はアシュリーさんと話すのが部活動になりそうだなって思いつつだったんだから。
けれどまあ、なんてこともないように、古町先輩は言った。
「それなら調整屋の八雲さんからあした屋にいたって聞いたよ。最近はそこなんじゃないかな」
「あした屋ですか。私たちも以前行きましたね」
「まだ中学生の時だったっけ」
「ええ、お店にいた……潤さんでしたか、古町が眼鏡を探してあげて」
「なくしたと思っていた本を見つける手助けをしてくれた。あの時は本当に焦ったよね。図書館から借りた本なのに」
「しかも高価でしたから。しかし運命とは不思議なものです。偶然にも挟まっていた地図のおかげであした屋は今も――」
「ちょっと待ってください先輩方、話がどんどん逸れてますよ」
結論から話してくれるのはいいものの、この二人には独自の世界があるのか放っておくと話が進んでいく。無言の時間のほうが多いらしいけどやっぱり仲が良いらしい。
「でも三穂野、面白い話なのよ。その時夏目書房に行ったんだけど、同じ先生が書いた本が出版社に回収されたって教えていただいたから調べたの。そうしたら霧峰村という村の巫に関する研究でね」
「ほぉ~……なんだかアイデアが湧いて来そう――って、アシュリーさんと水樹もいるし今はいいですよ」
「そうですか? 面白いのはここからなんですが……」
「その口ぶり、吉良先輩は聞いたんですか」
「幼馴染ですから」
「……あとで聞かせてくださいね!」
同じ歴史研究部の一員としての気持ちと、これ絶対映画に使えるという気持ちが勝った。
村モノといえば一種の閉鎖空間で起こるホラーが有名だし、独自の信仰による奇祭が導入になったりするんだから。実際の例を見てみるのも悪くないよね。
「じゃあ映画のこと話しましょうか。帆秋さんの話もありますし」
「……あ、それってまったく演技ができないっていう?」
「そうそう。水樹にもよーく知っててほしいから」
「彼女のことは私も気になりマース!」
そんなこんなでその日はあした屋へ行く選択をせず、心に秘めておくことにした以外を話したのだった。
けど。
アシュリーさんが忘れていった"高そうな宝石"がきっかけになるとは、水樹もきっと思ってなかったんだ。
◇
――翌日。
手にはせいらちゃんから渡された宝石。目の前には南凪のエントランス。
「アシュリーさん、空港にいるって言ってたけど……」
彼女が忘れていったという高そうな宝石を返そうとしたそうなんだ。でもタイミングが悪くて学校で会えなかったらしい。せいらちゃんも映画撮影の急用ができちゃったってことで、いつものお礼に代わりに私が行くことにした。
彼女の容姿やファッションは非常に目立つ。コスプレや中二病とも違って私とは方向性がまったく違うけれど、恐れず自分を表現している姿はどこか羨ましくもあってよく覚えていたのもあるから、すぐ見つかった。
のだけど……。
「う、話しかけづらい……」
アシュリーさんは、くれはさんとこの前見た小さな子、そして大人の人と会話をしているようで、非常に声をかけにくいことになっていた。
だって友達が別の知り合いと話してる時ってすごく気まずい。友達の友達は他人だし、割って入れる自信なんかない。
それに、親しく話すくれはさんを見て、なんだかツラくなってきた。
私が特別って訳じゃないってわかってたし、うん……別に、わかってたし……こんな根暗中二病女に構ってくれてるだけでありがたいし……うっ、また調子に乗ってたんだ。泣けてきた。
そのときだった。「塁」って、私の名前を呼ぶ声が聞こえたんだ。
顔を上げるとやっぱり、彼女がいた。大量のペットボトルや缶ジュースを持ってたのは意味不明だけど。
「あ、く、くれはさん……」
「会えて良かった」
えっ。
「やっぱりもう一度お礼を言いたくて。あなたのおかげよ」
「えっ、ちょっ、えぇぇぇ!?」
また手を握ってきた。
ギャルゲーとか乙女ゲーとかの子じゃないんだからそんな簡単に好きになったりするわけない……はずだと思ってたのに、直接言われたらこれは、効く。効いちゃう。
いや落ち着けフォートレス・ザ・ウィザード――!
僕はそのために来たわけじゃない、覇王たる我が身を行使する使命がある。クク、ならばこの程度の誘惑が効くわけないだろう? 効かない……だろ!?
そうやって自分に幾度も言い聞かせて……なんとかアシュリーさんに例の物を渡せたんだ。
「これは……Thanks! 私のKAWAIIグッズのひとつデース!」
なんでもアメリカの家にあったもので、鑑定してもらったけど宝石としての価値はないらしい。綺麗だから今は装飾として使ってるんだとか。バッグに入れてたのが偶然落ちてしまったそうだ。
うん、私も気をつけよう。カミケ帰りに駅のホームで紙袋が崩壊したら恥ずかしくて死ぬ。
「あら、賢者の石」
「ワッツ?」
は?
「そうですか、巡り巡ってあなたのもとに……大事にしてくださいね」
「よくわからないデスガ、もちろんデス! 物は大事にしませんとネー!」
私の研ぎ澄まされた中二病センサーは、確かにその単語を聞き届けた。
賢者の石。
それは錬金術における最終到達点と言われるもの。錬金術を題材にしたアニメやゲームでは最後のほうでやっと手に入ったり、物語の目的だったりする。そうじゃなくても、大抵すごいアイテム扱いされている。
クク、かくいう僕、フォートレス・ザ・ウィザードが身に着けている指輪も賢者の石をあしらったもの――という設定を一時的していたこともある。ちょうどハマっていたジャンルがあった。
「あ」
待って、待って待って待って! 思い出した!
賢者の石で"フラメル"って、どこかで聞いたことあったんだ。映画にもなったあの有名魔法ファンタジー児童文学の第一弾にもいたじゃないか! 現実でも錬金術士として知られていたはず……!
即座にスマホを取り出して検索してみる。インターネット百科事典はこういう時便利だ。
ニコラ・フラメル、いた。そこの項目に――
「どうしました?」
目の前と同じく『フラメルの妻ペレネル』の文字が――!
「いや、同じ名前の人はいるよね……」
「どれどれ、ああ、私です」
「ええーっ!?」
「と言ったら面白いでしょう? ただ同姓同名なだけですよ」
そ、そうだよね。
この世界には魔法少女が実在してたけど、いくらなんでも歴史上の人物がそのままいるわけがない。
「そうね、ペレネルはフランスでタ――」
「くれは嬢、私のことはいいですが、あのことは不用意に話さないように。知るということは知られるということ。そして『願い』はどんなものでも叶う。おわかりですね」
「ペレネルはフランスでタコを食べてたの」
「Oh、これがジャパニーズはぐらかし! わかりやすいデスネー!」
「タコってあのぐにゃ~ってしたのでしょー? イヤだなぁ」
……なんか本当みたいじゃない?
実は過去の人物が現代まで生きていたなんてありがちだけど、こうも現実になるとそう簡単に納得できない。
なんて言ってたら。
「おや、くれは嬢。あちらから来るのは帆奈嬢では」
「えっ」
「そういえば出かけるって言ってなかったねー」
「あっはー!」
紫の髪をしたその人は、裂けそうなほどの怖い笑みを見せて、ラピヌちゃんと協力してくれはさんを引っ張っていったのだった。
「――それと、キューブは役に立ってくれたかしら」
なんて、ペレネルさんのつぶやきを残して。
■今回の内容
『アシュリー・テイラーのジャパニーズホラーはどこデスカ!?』(一部分)
飾利潤 魔法少女ストーリー1話 『駄菓子と古本』(一部分)
■アシュリー・テイラー
北米版から来た魔法少女。まさかのブラスト4枚の破壊神。誰が呼んだかブラストゴジラ。
クエストやミラーズではあらゆる敵を成敗していく謎のアメリカ人が出没するという。9割9分のメインストーリーは彼女だけですぐ勝てる。
■賢者の石
『仮面生徒会の逆襲』で出てくる。願望や妄執を具現化する奇跡の触媒。
タルトの死後作成できており、現在もニコラが保管しているものと600年前に遺失したものの2つが存在する。気前の良い人なので困ってる人にあげたとか。もうちょっと数が増えてるかもしれない。
この小説では巡り巡って現代ではアシュリーが持っている。なんで?
■JPホラーはどこデスカ!?
アシュリー実装イベント。ウワサが出てくるので時系列的には第一部。
なので名前だけで申し訳ナス!
■ペレネル先生
普通に生きてる錬金術師。既婚者。さらっと現代にいる。
フランク王国初代国王クロヴィス1世(466年頃 - 511年)の時にもう魔法少女。現代だと最低でも1500歳を超えている。キュゥべえ曰くヘルメス神ゆかりの洞窟で生まれたらしく、下手すると神話の存在である魔法少女。魔法少女ってなんだよ(哲学)。
■後日談の影響
『忘却の輪舞曲は久遠に睡る』により、歴史研究部と知り合ってたこと。
おかげでアシュリーがペレネル先生の友人になった。なんで?
■ミナギーシーのホテルからシャトルバス
灯花&ねむ聖夜verのイベント『Christmas String ~指を結んだあの日~』で出てくる情報。
ミナギーランドといいミナギーシーといいやっぱりここ夢の国。ハハッ。
■霧峰村
独特の信仰があり、"久兵衛様"を祀っている謎の村。
潤のMSSで少しだけ出てくるので、実は潤は名前を見たことがあったりする。なお、魔法少女になる前なので祀っているのがなんなのか気づいていない。