ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第5章
第102話


 「とうちゃーく!!」

 

 さて、海上で戦闘があったことなど世間にはどこ吹く風。それで世界の大動脈は止まるはずもなく、セシルとシェリルは無事にオービタルリングに到着した。

 

 「ようやくつきましたわね・・・。」

 「んー、お尻が痛いわね。揉んであげようか?」

 「結構よ。セクハラで訴えますわよ?」

 「冗談。」

 

 突如として起こった戦闘と、そこに割り込むように照射された衛星からのマイクロウェーブ。すわ一大事かと思われたが、この事件によってどこかの国の人的被害が出たとか、そういう話は全くない。様々な憶測が飛び交った後、明日明後日には世間一般からは忘れ去られることだろう。

 

 しかしこの2人にとっては、今回の照射事故は大きな意味がある。今回狙われたのは彼女らの家である、潜水戦艦ネプチューンだ。先に『忘れ去られるだろう』と言ったが、それも世界の裏に蔓延る蜘蛛の糸、エアヴァリアンの策略によるものに違わない。

 

 エヴァリアンの陰謀を知るものが、このオービタルリングにどれだけいることだろうか。2人はかくも孤独なものだ。

 

 「けど、遊馬がこっちに来るんでしょ?」

 「ええ、先ほど暗号回線で通知が来ましたわ。」

 「やった♪」

 「・・・嬉しそうですわね。」

 「そりゃあもう、別れたのも昨日の今日だけど。」

 「やれやれ。」

 

 遊馬がこちらに来るという事はすなわち、ネプチューンも無事という事。足取りも軽やかに、シェリルはシャトル搭乗ゲートに向かう。その後についていくセシルだったが、ふと窓の外を見てごちる。

 

 「・・・月って、あんな形だったかしら?」

 「なに?」

 「いえ、なんでもないです。」

 

 宇宙での任務も久しいセシルであったが、この真空の海の光景も半ば見慣れたものに近かった。しかし、その見慣れた光景に浮かぶ物に抱いた違和感がどうにも拭えなかった。

 

 地球から遠く離れることおよそ40万kmに、兄弟星とも呼べる月はある。夜空にぽっかりと浮かび、古来より人々は夜の友としたり、あるいは魔性の力を恐れたりした。

 

 その実態は、水も空気もない、岩と砂とクレーターのあばたまみれの死の世界に他ならない

 

 そんなところにウサギはおろか生物がいるはずもないと、アポロ11号は証明して見せた。最も、この世界に限っては火星にアダムが眠っていたように、その限りではないのかもしれないが、それはそれとして。

 

 少なくとも、セシルの中の『月』とはそんな場所だった。

 

 「月ってあんなに・・・。」

 

 あんなに、パウンドケーキのようにふわふわだっただろうか?

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