ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第119話

 今まで一番ゲームを投げたくなったのは、あまりの鬱展開にそれ以上進める気が失せた時ぐらいなものだ。ゲームの難易度で投げたことは一度もない。

 

 「やっと8号車か・・・。」

 

 だが、この『現実』はその両方を兼ねそろえている。グロテスクな光景や雰囲気に、いつどこから襲われるかという緊張感。片時もコントローラーを離すことが出来ないが、正直今すぐ止めたい。そして出来ることならこの列車もろとも核爆弾を撃ち込んで焼き払ってしまいたい。

 

 相変わらず、出入り口のところはグズグズの肉の泥が固まっていて出ることが出来ない。むしろ後部車両に向かえば向かうほど、その肉の泥は増えていく。

 

 靴も新しいのを買わなければ。というか今すぐ服を脱ぎ捨ててシャワーを浴びたい。ガスが発生していて息が詰まるし、臭いが染みついて取れない。ホラーゲームの舞台を歩くのがこんなにも辛いとは。

 

 「くわばらくわばら・・・。」

 

 さて、進むはいいが、いよいよ気が滅入ってくる。腰を下ろしても落ち着ける雰囲気ではないし、何より一秒もここにはいたくない。さりとて、あまり駆け足で進むことも出来ない理由がある。

 

 敵、ゼバブは光への知覚が鋭敏で、光を好む。夜に街灯に集う蛾やカゲロウのように、光に対して向かってくる性質がある。外のような暗闇でライトをつけたまま歩いていると、たちまちゼバブが迫ってくる。故に、暗闇では光に警戒しなければならない。最終的にはヒトの背丈ほどの大きさにもなり、銃撃に耐えるほどの強固な外皮を持つようにもなる。終盤のクリーチャーというわけだ。

 

 「中でも人間の遺伝子を取り込んだタイプは『サピエン・ゼバブ』と呼ばれる。二足歩行でなかなか強い。見た目はまんまハエ男だけど。」

 

 逆に幼虫のマゴーは聴覚が敏感で、普段は土の中に潜っているが音を感知すると、餌を求めて這い出て襲ってくる。また暗がりを好み、明るいうちはあまり出てきたがらない。外が暗くなる、または『影』を感知しても出てくる。ただ強さはイマイチで、数発殴っただけで倒せる。つまり序盤の雑魚だ。

 

 「足も遅いからロックオンの仕方や間合いの取り方を覚えるのに適任なんだよなぁ。」

 

 外は成虫、中は幼虫が敵として出てくる。中を進むしかない今は、あまり音を立てて進むことが出来ない。いくら弱いとは言っても、どれだけの数がいるのか見当も出来ない。

 

 ・・・と、いうことをゲームの知識として知っている。本来なら、ゲームの進行に伴って、拾えるファイルから知れる情報なのだが、遊馬はこの手の情報を最初から持っている。生き残るうえではアドバンテージとなることは間違いない。

 

 そして抱えるディスアドバンテージは、ゲームのキャラクターではなく生身の人間であって、一撃貰えば多分死ぬという事。体力を一定量回復する救急キットや、全回復する特効薬もない。殺人バイオ兵器と化したEADは、一度感染すれば爆発的に人体を汚染し、分解する。EADに対処するには、低温で冷やすか、アルコールをかけて活動を阻害するしかない。

 

 ゲームは主に北欧など寒い地域が舞台なので、冷やす手段には事欠かない。あるいはアルコールを摂取することで一時的に抑えることも出来る。だが遊馬にはそのどちらの手段もとれない。ここは暑い太平洋のど真ん中だし、未成年で酒も飲めない。

 

 「・・・進むか。」

 

 しばし考えて、体を休ませるとまた進軍を再開する。とにかく前へ進まないことには、何も得られずに死が待っている。

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