ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第130話

 「ここも・・・綺麗だな。」

 

 心機一転してやる気満々の遊馬の意志に反して、15号車もまた平和だった。肩透かしを喰らったが、これはこれでいい。ゲーム的にはアイテムが落ちてる場所だろう。

 

 「よし、休憩がてらちょっと探索していこうか。」

 「らぴ!」

 

 アシュリーとラッピーには見張りとし称して少し座っていてもらう。短い距離だが、アシュリーはとくに疲れていることだろう。売店で失敬していたジュースを与えて、遊馬はそこらのカバンを漁る。

 

 しかし、無言でいるのも間が持たない。何かを話そうか、と思っても子供の好きな物なんか知らない。

 

 「えーっと、アシュリーはどうして一人で列車に乗っていたのかな?」

 「・・・叔母さんの家に行くところでした。」

 

 うん、知ってる。ゲームで見たから。それにあまり明るい話題でもなかった。話が続かない。

 

 「らぴ!らぴ!」

 「そうだ、好きな動物はいる?」

 「ウサギ!」

 「らっぴぴ!」

 「ふふふ、ラッピーのことも好きだよ?」

 

 どうやらいたくラッピーのことが気に入ったらしい。ぬいぐるみを抱き上げる姿は、まさに年相応・・・いや、年齢より少し幼く見えるかもしれない。

 

 「ラッピーがそんなに気に入った?」

 「うん!じゃなくて、はい!」

 「もっと普通に、子供らしくしてくれていいんだけど・・・。」

 「え、あ、はい・・・叔母さんの家では、礼儀正しくしてないといけないから・・・。」

 

 『他人』行儀でいなければならないなら、それは家族ではないと思うが。

 

 「私、パパもママも死んじゃって、それで叔母さんの家に引き取られるところだったの・・・。」

 「・・・その叔母さんの家って、どこ?」

 「日本。」

 「え?スコットランドじゃないの?」

 「?違うよ。」

 

 原作ではスコットランド行きだったのだが。原作は北欧の列車が舞台で・・・やはりところどころ違うのか。

 

 ともあれ、意気消沈しているわけではなさそうで安心した。生きる気力を失った人間のお守りは御免だ。

 

 (そういえば、僕もほんの数週間前まではそんな人間だったか。)

 

 学校に馴染めず、引きこもりになってしまった『以前』の自分。ゲームに熱中し続けて、いっそゲームの世界に入ってしまいたいと思っていたっけ・・・。

 

 「だからって、こんな世界はないよなー・・・。」

 「?」

 「なんでもない。あっ、銃みっけ。」

 

 大きなカバンのひとつから、金属製のガンケースを見つけた。ほくほくと開けてみるが、残念なことに銃そのものは入っていなかった。

 

 「けど弾はあるか、よしよし・・・。」

 

 幸運なことに、銃弾の口径は合うらしい。空になった弾倉に一発ずつ詰め込んでいく。馴れない手つきで数分の作業を終える。使わずに済めばそれが一番なのだが。

 

 「よし、もう行けるかな?」

 「うん。」

 「もうちょっと先のところで、助けを呼べるはずだから・・・それから、どうしようかな。」

 「らぴ!」

 「そうだな、一緒に行こうか。多分叔母さんの家よりは楽しいよ。」

 「・・・誘拐?」

 「違う。まあそうなるけど、違う。」

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