ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
「ここも・・・綺麗だな。」
心機一転してやる気満々の遊馬の意志に反して、15号車もまた平和だった。肩透かしを喰らったが、これはこれでいい。ゲーム的にはアイテムが落ちてる場所だろう。
「よし、休憩がてらちょっと探索していこうか。」
「らぴ!」
アシュリーとラッピーには見張りとし称して少し座っていてもらう。短い距離だが、アシュリーはとくに疲れていることだろう。売店で失敬していたジュースを与えて、遊馬はそこらのカバンを漁る。
しかし、無言でいるのも間が持たない。何かを話そうか、と思っても子供の好きな物なんか知らない。
「えーっと、アシュリーはどうして一人で列車に乗っていたのかな?」
「・・・叔母さんの家に行くところでした。」
うん、知ってる。ゲームで見たから。それにあまり明るい話題でもなかった。話が続かない。
「らぴ!らぴ!」
「そうだ、好きな動物はいる?」
「ウサギ!」
「らっぴぴ!」
「ふふふ、ラッピーのことも好きだよ?」
どうやらいたくラッピーのことが気に入ったらしい。ぬいぐるみを抱き上げる姿は、まさに年相応・・・いや、年齢より少し幼く見えるかもしれない。
「ラッピーがそんなに気に入った?」
「うん!じゃなくて、はい!」
「もっと普通に、子供らしくしてくれていいんだけど・・・。」
「え、あ、はい・・・叔母さんの家では、礼儀正しくしてないといけないから・・・。」
『他人』行儀でいなければならないなら、それは家族ではないと思うが。
「私、パパもママも死んじゃって、それで叔母さんの家に引き取られるところだったの・・・。」
「・・・その叔母さんの家って、どこ?」
「日本。」
「え?スコットランドじゃないの?」
「?違うよ。」
原作ではスコットランド行きだったのだが。原作は北欧の列車が舞台で・・・やはりところどころ違うのか。
ともあれ、意気消沈しているわけではなさそうで安心した。生きる気力を失った人間のお守りは御免だ。
(そういえば、僕もほんの数週間前まではそんな人間だったか。)
学校に馴染めず、引きこもりになってしまった『以前』の自分。ゲームに熱中し続けて、いっそゲームの世界に入ってしまいたいと思っていたっけ・・・。
「だからって、こんな世界はないよなー・・・。」
「?」
「なんでもない。あっ、銃みっけ。」
大きなカバンのひとつから、金属製のガンケースを見つけた。ほくほくと開けてみるが、残念なことに銃そのものは入っていなかった。
「けど弾はあるか、よしよし・・・。」
幸運なことに、銃弾の口径は合うらしい。空になった弾倉に一発ずつ詰め込んでいく。馴れない手つきで数分の作業を終える。使わずに済めばそれが一番なのだが。
「よし、もう行けるかな?」
「うん。」
「もうちょっと先のところで、助けを呼べるはずだから・・・それから、どうしようかな。」
「らぴ!」
「そうだな、一緒に行こうか。多分叔母さんの家よりは楽しいよ。」
「・・・誘拐?」
「違う。まあそうなるけど、違う。」