ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第140話

 さて、新たな武器を得てウキウキな遊馬は、順調に敵を撲殺しながら破壊されて道の寸断されていた13号車にまでやってきた。

 

 「よっと・・・ここ壊せば崩れそうだな。アシュリー、ちょっと下がってて。」

 「うん。」

 「おりゃっ!」

 

 壊れた座席や、崩れた天井のガレキなどが積もって道を塞いでいたところを、押したり蹴ったりして崩していく。

 

 格闘すること数分、道は拓けた。かつて通路があった場所を塞ぐガレキを踏み越えて、少し前に通ったグリーン車への道を踏む。

 

 「よし、この売店だな。すこし休もう。」

 

 勝手知ったる他人の店。冷蔵庫からジュースを取り出してアシュリーに渡してやる。

 

 これからの道もまだまだ長いので、少し補充もしておこう。アルコールでもう一回火炎瓶を作ってもいい。

 

 そうえいば、と最初のアラニアとの戦いで傷ついた腕の包帯を剥がしてみる。

 

 「うっ、なんか気持ち悪くなってる・・・。」

 

 痛くはないが赤く腫れあがっていた。ナイフで切り落として膿を絞り出したいところだが、不衛生な今の環境ではそうすることもままならない。

 

 ライターであぶろうか?と生兵法を試そうしていると、アシュリーが脇からのぞき込んできた。

 

 「うわっ、ひどい。」

 「あんま見ない方がいいよ。」

 「・・・私を助けるために?」

 「そうはそうだけど、気にしないで・・・アシュリー、そのケガどうしたの?」

 「さっき、転んじゃって。」

 「そうか。」

 

 アシュリーも何も言わないから気づかなかったが、手を擦りむいているようだった。

 

 「アシュリーのも消毒しよう。ほら、おいで。」

 「え、でも・・・。」

 「痛いかもしれないけど、我慢してね。」

 「うん・・・。」

 

 酒瓶の中身を布に浸して、つんつんとアシュリーの手を消毒してやる。

 

 「いたっ・・・。」

 「ごめんね、優しくシュッとできるやつがあればよかったんだけど・・・。」

 「ううん、平気。」

 「えらいね。」

 

 最後にフッと息を吹きかけて、アルコールを飛ばしてやる。

 

 「じゃあ、今度はわたしがやってあげる。」

 「うーん・・・じゃあ、頼もうかな。」

 「よーし。」

 「・・・優しくしてね?」

 

 にっこり笑うアシュリーには、まさか仕返しをしようなんて気持ちは微塵もないだろう。

 

 「いっ・・・つっ・・・。」

 「大丈夫?」

 「平気・・・けど、だんだん楽になってきたよ。」

 

 蒸発するアルコールの感覚が気持ちいい、がそれ以上に痛みがあっという間に引いていく感触がした。

 

 「ん?アシュリー、ケガしてる手でやったのか。」

 「え?」

 「そっちの方の指はいたわってあげなよ。」

 「ごめん。」

 

 そうだ、アシュリーの体にはEADの抗体があるんだった。それが傷口から傷口へ入ってきたのかもしれない。

 

 感染症の観点から言えばあまりよろしくないことだが、おかげで助かった。お互いに包帯を巻きあうころには痛みはすっかりなくなっていた。

 

 「楽になったよ、ありがとうアシュリー。」

 「うん!」

 

 ひとつ、絆が深まった気がする。

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