ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
意を決して、明るい学園ゲームの世界から暗いホラーゲームの世界へと戻ってきた。
ダークリリィの整備は終わっているから、いつでも召喚できる。けど、ラスボスを倒すための装備を別に用意してもらっているから、戦いに行くのはまだ少しかかるだろう。
それに、ただラスボスを倒して、通常エンドをクリアするだけでは不十分だろう。
「っと・・・アシュリーは、まだ寝てるか。」
「らぴぴぴ?」
「ああ、向こうは変わりなかったよ。」
無防備に眠るアシュリーを守るように、ラッピーは傍らを固めていた。まるでナイトのようだ。
「今度はラッピーが休みなよ、働きっぱなしでしょ。」
「らぴ?るぅ・・・。」
ラッピーはずっと起きているし、時には戦いもしていた。疲れていたのだろうかひとつあくびをすると、その場で元のぬいぐるみに戻った。あれだけ暴れまわったのに、新しく汚れなどはついていない。
「そういえば、セシルさんの借り物だったなこれ・・・。汚したら怒られるな。血の染みってなかなか落ちないし。」
キックを繰り出す足を入念に確認するも、何も問題はないようだ。虫の体液とか、もっと気持ちの悪いものとかついてそうだったけど、そんなことは無い。
「ううん・・・。」
「あっ、アシュリー起きた?」
「うん・・・あれ、ラッピーどうしたの?」
「今は休んでるだけだ。そのうち戻るよ。」
アシュリーは、軽く抱きしめたラッピーをやさしく横にしてあげた。
「これからどうする?」
「そうだな・・・けど、その前に。」
「?」
「うーん・・・なんて言ったものかな。」
ちらり、とアシュリーの瞳をみやる。髪と同じ金色だが、疲れの色も見える。それに、その奥には何者にも攻略され得ぬ複雑な迷宮が広がっている・・・。
「アシュリーはさ・・・。」
ダメだな。なんと言ったものか、言葉が見つからない。きょとん?とした顔でこちらの顔を覗き返してくる。
引きこもっていたころの自分は、どんな言葉をかけてほしかったものか、どうしてほしかったか、何を思っていたか。
「あっ・・・。」
自然と、その金髪を撫でていた。アシュリーは少し驚いたようだが、特に何も言わずに受け入れていた。
何が欲しかったかというと、こういう人の温かさだった。
「アシュリーは、こうされるの好き?」
「わかんない・・・こんな風に撫でてもらったことないから。」
「そうか・・・。」
遊馬も、随分スキンシップとはご無沙汰だった。シェリルはちょっと情熱的というか、近すぎるものがあるけど、とにかく飢えていた遊馬の心にはとても染み込んできた。ならば、やはりこれが正しいのだろう。
「アシュリーは・・・僕と似ている気がする。」
「アスマと?」
「僕も、両親からは見放されていたから。」
父は仕事にかまけて、母は遊馬に興味が無かった。
「気を引きたくって、色々やったっけ・・・今思えば、それが原因で出ていったんじゃないかな。『ダメな子』だって。」
「ダメな子・・・?」
それでもお母さんには『母親』をやってほしかった。
「アシュリーも、寂しいんじゃないかな?」
「うん・・・。」
「だから、僕はアシュリーの『兄』になるよ。」
「お兄ちゃん?」
「うん、イヤかな?」
「ううん、嬉しいな・・・。」
ギュッと抱き着いてきた。それがまた可愛くて、愛おしくて・・・。