ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第157話

 『自分の中にある記憶と、現実としての事実が異なることってあるよね。』

 「今がまさにそうだよ。」

 『それ以外にもない?小さい頃の思い出と、当時実際にあった記録が別ってこと。』

 「うーん?」

 

 廊下を進む中で、トビーが突然問いかけてきた。一見すると難しいテーマだが、そういえばと遊馬にも心当たりがあった。

 

 「そういえば、『100万回生きたねこ』って絵本があるんだけど、子供のころ読んだときは『100万回死んだねこ』ってタイトルだった記憶があるな。」

 『子供のころって、今も子供だろうに。』

 「高校生はもう大人じゃない?」

 『んー、未成年はまだ子供ですわね。』

 『自分のケツ持てなきゃまだ子供だろ。』

 「僕は自分の行動に責任持つよ?」

 

 本当にただ『持つ』だけだが。責任は『果たす』までがセキニンというもの。

 

 「まあそれは今はいいとして、その記憶がどうしたの?」

 『うん、記憶は確かに曖昧なものなんだけど、それが間違ってるとは限らないんだ。』

 「というと?」

 『逆に考えるんだ、『間違ったのは世界の方』だと。』

 『悪役みたいな思考ね。』

 『そこまで尊大な話じゃないよ。スケールは大きいけど。』

 

 かなりややこしい話になるから聞き流してくれるくらいでいいよ、ひとつ前置きを置いてトビーは話し出す。

 

 『この仮説には、並行世界の話と関わりがある。』

 「並行世界?SFでよく聞くあのパラレルワールド?」

 『そう、そのパラレルワールド。堅苦しい言い方をすると、その記憶の齟齬は『並行世界の収斂』が起こった証なんだ。』

 「収斂?」

 

 並行世界というのは、ほんのわずかな違いによって無数の分岐が起こる。

 

 『例えばアスマがバーガーショップに入って、チーズバーガーを選んだかフィレオフィッシュを選んだか、と仮定する。』

 『随分くだらない理由だな。』

 『そう、そしてこんな些細な違いでも並行世界が発生する。だとすれば、いつかは『世界』が溢れかえってオーバーフローするんじゃないのか?』

 「それは『仮定』でしょう?」

 『それはそうだけど、今回言いたいのはその逆、並行世界同士がくっついて纏まることもあるんじゃないのかな?ってこと。』

 「どういうこと?」

 

 『真面目に考えてみて、アスマがその日何を食べたかなんかで、世界の命運が変わったりすると思う?』

 『思わん。』

 『思わない。』

 『らぴ!』

 『思いませんわ。』

 「うん、正直僕もそう思う。」

 『でしょう?だからあまりに小さな分岐なら、別れた直後でまた合流するんじゃないかな、というのがこの仮定だ。』

 

 そりゃあ、お店の売り上げに多少変化はつくかもしれないが、そんなもの世界の、宇宙全体で見れば誤差のレベルだ。バタフライエフェクト、風が吹けば桶屋が儲かるなんてこともあるかもしれないが、それはさておき。

 

 『同じように、アスマのその絵本が『100万回死んだねこ』というタイトルの世界も、『100万回生きたねこ』というタイトルの世界も両方『あった』んだよ。』

 「僕の記憶の中では『死んだ』なのに、現実として『生きた』なのは、僕が『死んだ』の世界だった記憶を引き継いでいるから?」

 『そういうこと。』

 

 なるほど、そういう考え方もあるか。そう言われてみれば、色々と例も思い出してくる。

 

 「昔、ラッピーが出てくるゲームで、ラッピーがあるアイテムを食べちゃうシーンを見た記憶があるんだけど、実際にはそんなムービー無くっておかしいな、って思ったんだけど、それも並行世界の収斂が原因だったのかな。」

 

 『で、だ。ここから本題。その仮定を今のアスマに当てはめると、『デッドソイルを最後までプレイした』、『プレイしなかった』世界があるんだと思う。』

 「その世界も収斂したけど、僕はプレイしなかった世界の記憶しか持っていないと?」

 『そうじゃないのかなって。記憶は過去につながるカギだけど、そのカギが合う扉が必ずしもあるとは限らないのかもしれない。』

 「だから?」

 『思い出せない事、そんなに深く考えなくてもいいんじゃないかな。』 「そっか。」

 

 自分は自分でも、それは違う自分のこと。なら自分が悩む必要もないだろう。逆に考えるんだ、これからクリアしてやるんだと。そう思えば攻略への意欲もわいてくるじゃないか。

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