ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
『ここね、エレベーターシャフトは。』
『そして、あれが敵か。』
地上と宇宙とをつなぐ大動脈、そお地上30mほどのところに瘤のように『それ』はへばりついている。
大動脈瘤でありながら、時折それは心臓のように拍動している。
「なんだろう、原作のよりもスケールが大きいような。」
『なにあれ、蛹?』
「うん、バアル・ゼバブの蛹。」
一見すると巨大な泥の塊のようにも見える。だが、その中ではゼバブの王が目覚めの時を待っているのだ。
『昆虫の蛹なら、今のうちに破壊しちまうチャンスじゃないのか。』
『そして手元には強力なビームがある。これはやること決まったかな?』
『まあまあ、少し様子を見てからでもいいんじゃないかな?』
「出来るだけヤワそうな部分を探そう。」
それに、下から撃つと落ちてきた残骸に潰されそうだ。上に回り込んで薄そうな部分を狙い撃ちにしよう。
と、バーニアを吹かせて上を目指そうとしたその時。
『おい、なんか動きが大きくなってきてないか?』
『ホントだ、遊馬急いで!』
「わかってる!」
蛹が揺れ、同時にこの場の空気が震えていることに気づいた。どうやら蛹の中の主はこちらの存在を感知し、急いで羽化しようとしているようだ。
『撃て遊馬!』
『焼き払えー!』
「よぉし、リオンビィイイイイイイイイイム!!」
最大出力のビームを蛹の上部に浴びせかける。動かないうえにバカデカいだけ、こんなもの的以外のナニモノでない。しかしオーバーキルかもしれないが、念には念をと気合と共にボタンを押し込む。
『やったか?』
「それ、フラグ!」
モンドの感嘆の声に思わず嫌な予感を察するが、そんな遊馬の思いとは裏腹に蛹は赤い火柱を上げながらシャフトの底へと落ちていく。
『やった?』
『やりましたの?』
『やったっぽい?』
『やったようだな。』
「よってたかってフラグ立てないで。」
こいつら・・・と思いつつも遊馬も内心で胸を撫でおろす。あれだけの火力となれば、噴き出すガスに引火して火が火を呼ぶ。あっという間に燃え尽きることだろう。
『ぬっ?』
「なにエルザ?」
『ぬぬっ?熱源が接近中。大群だ!』
遊馬たちの通ってきた道や、それ以外の通路からゼバブの大群が押し寄せてきている。
『今頃?』
『もうお前らのボスは焼き払われた後だっていうのに。』
「なんか・・・様子が変だ。」
まさに飛んで火にいる夏の虫、というようにそのゼバブの大群は次々に炎の中へと飛び込んでいく。まるで集団自殺のようだが、その勢いはとどまるところを知らない。
『ゼバブとは、そこまでバカだったのか?』
「けど、なんだか不気味だよ。」
『まるでレミングの死の行進のよう・・・。』
そこまで言ったところで、トビーは押し黙って考え込んでしまう。その間にも状況は変化していく。
『やっぱりやったんじゃないのか?』
「いや、こんなにもあっけないはずはないと思う・・・。」
今にも大群は燃え尽きてしまいそうだが、変化は止まらない。溶けたタールのような液体が、シャフトの内に溜まっていく。その地獄の沼の中に、蠢くものが見えた。
『十の災い・・・。』
「なに?トビー。」
『繁殖力の高い生物は、大量発生と減少を繰り返す性質がある。そして生き残った個体は特に強い・・・。』
『あっ、なんか出てきた。』
『あれがバアル・ゼバブなのか?』
「違う、あれはバアル・ゼバブじゃないぞ?!」
その巨体は、遊馬の記憶にあるラスボスとは違っていた。羽のある蟲というよりは、3対の脚を持つ巨人。黒光りする不浄なるその姿を沼の底からもたげ、赤い複眼をダークリリィへと向ける。