ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第17話

 エレベーターはやはりグラウンドへと通じていた。暗い地下から一転して、眩しい日差しが目に入ってくる。

 

 「外だ・・・。」

 「外に出たというのに、新鮮な空気を感じないな、ここは。」

 「花畑にでも行けば少しは違うかもよ?」

 「黒い花というのは、どうにも不気味だ。」

 

 ここはゲームの世界。風も吹かなれば、鳥の囁きもない。昼は復讐の花が目を伏せて立ち並び、夜には顔のない月がだけがある。

 

 「ところで、アレはどうしよう?」

 「カサブランカ、忘れていたね。」

 「なんだか、このまま放置しておくのはかわいそうですわね・・・。」

 

 主を喪った機械の兵が、無残な姿のまま横たわっている。

 

 「下に機材があったし、せめてハンガーに格納してあげようか?」

 「出来るんですの?」

 「クレーンならボクも運転できるけど。」

 「その行為に意味があるのか?」

 「ある、と思う。」

 

 現状、イベントも消化してしまってやることがない。つまりヒマなのである。こういう時は一見無駄そうなことをやってみると、案外サブイベントが発生したりもするから、決して無駄にはならないだろう。

 

 そうと決まれば行動は早かった。地下からクレーンを持ち出してカサブランカをリフトに運ぶと、ハンガーに掛けて直立させる。

 

 「こっちの足はどうする?」

 「替えのパーツがあれば直してあげられるのかもしれないけど・・・まあ、一緒に置いておいてあげようか。」

 

 モンドは義手の力で千切れた左足を運んでくる。もっとも、元は問い追えば千切ったのもモンドであったが。

 

 「そうえいば、パイロットのあいつは一体どこへ行ったんだろうか。」

 「カサブランカのパイロットってことは、あれが『天野川雄二』だったってことだよね?」

 「多分、そうだね。」

 「多分ってなんだよ。」

 「キャラが違い過ぎるから。雄二って、もっと明るい性格だったし、少なくともゲームの中では。」

 

 少なくとも見た目や恰好が違い過ぎる。

 

 「それに、あの人は私たちの事を『来訪者』と呼んでいましたわね。」

 「来訪者、それに『希望』とも。」

 「希望ね、一体何をさせたかったのか。」

 

 やはり情報が少なすぎる。手掛かりが小出しな上に、自分で推理しなければならないから、攻略難易度が高い。

 

 「ところで、誰かコックピットに入ってみない?」

 「遊んでるつもりか?」

 「ボクは気になるんだけどな、ロボットって初めて見るし。」

 

 と、トビーは開いた胸に一跳び収まる。

 

 「スタートボタンはどこかな?」

 「動くのか?」

 「動かしてみる・・・これか?」

 「・・・。」

 「ダメっぽい、アスマ交代。」

 「僕?」

 「ゲームやってるならわかるんじゃない?」

 

 トビーはスイッチやレバーをあれこれ弄った挙句、匙をパスした

 

 「そんなこと言われても、僕なんてもっと機械の事なんかわかんないし・・・。」

 「そう言いつつ嬉しそうだな。」

 「まあ、ね。」

 

 トビーに手を差し伸べられて、コックピットに引き上げられる。

 

 「どれどれ・・・たしか、意思を伝達することで動かせるんだったな。」

 「へー、脳波コントロールみたいな?」

 「いや、たしかナノマシンで神経を接続してるんだとか書いてあったかな・・・とにかく、僕たちじゃ動かせないと思うな。」

 「なーんだ、ちょっとザンネン。」

 

 トビーは興味が失せたのか、カサブランカの肩から降りてしまった。

 

 「でも、こうして乗ってると、なんだか落ち着いてくるな・・・ちょうどいい狭さだし、お菓子を持ち込めばずっとゲームしてられそう。」

 

 と、何気なくゲームPODを取り出してみる。

 

 「ん?なんだこのウィンドウ・・・。」

 

 見覚えのないメッセージが、画面には表示されている。

 

 『ARIGATOU』

 

 (ありがとう・・・?なにが?)

 

 「おーい、そろそろ戻ろうぜ。」

 「あ、うん、ちょっと待って。」

 

 これは今までにない反応。皆に伝えるべきだろうと、シートから立ち上がった時、ウィンドウは消えてしまった。

 

 「あれ・・・?」

 「どした?」

 「いや・・・なんでもない。」

 

 結果、謎が一つ増えた。だが着実に前には進んでいる。


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