ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第2章
第18話


 「さて、ここらで一回『夜』にしてみたいんだけど。」

 「ベッドで時間を飛ばせるんだったね。夜になるとどうなるんだっけ?」 「何かサブクエストが発生するらしい。昼はメインクエスト、夜はサブクエストが展開するらしい。」

 

 ちょっと思い切った区分けだろう。だが、その分探索中に突然メインイベント進行に巻き込まれて強敵と戦う羽目になるという事態は避けられるだろう。

 

 「面白そうですわね!やってみましょうよ!」

 「こういう探索は好きだな、ボクは。」

 「よし、じゃあ全員ベッドで休もうか。」

 

 『時間を夜にしますか?→Yes No』

 

 「はい、変わったー。もう夜だよ!」

 「全然休んだ気がしないんだが。」

 

 勿論体力はしっかり回復している。が、まるで味のない食事をさせられたかのような肩透かしっぷりだ。

 

 「さて、イベントは発生してるかな?・・・ふんふん。」

 「どう?」

 「屋上と、グラウンドと、食堂にイベント発生らしい。」

 「3つもか、どれにしよう?」

 「屋上だ。」

 「バカと煙はなんとやら・・・。」

 「誰がバカだって?順番から行けばいいだろうって話だ!」

 「まあ、それでいいんじゃないかな。」

 

 特に正しい順番があるわけでもないだろう。メインクエスト進行に応じてサブクエストも増えていくなら、普通に上から順番にこなしていけばいいだろう。先のクエストを選択して、あんまり強い敵にポップされても困る。

 

 「屋上か、見晴らしはそんなによくなかったね。」

 「周囲は完全に花畑で囲まれていますからね・・・。」

 「花の色が黒でなければもう少しマシだったんだろうがな。」

 

 夜となると、なお一層不気味であろう。そもそも、夜の校舎というシチュエーション自体がもう恐ろしい。

 

 「学校って七不思議とかつきものだけど、この学校にはそういうのあるのかな?」

 「ないといいですわね。」

 「大体音楽室のベートーヴェンや理科室の人体模型や、二宮金次郎像が動き出すとか言われてるけど。」

 「なんでみんなそんなに動きたがるんだろう?」

 「普段じっとしてると肩が凝るんだろう。」

 

 死んでからもエコノミークラス症候群に悩まされるとは。

 

 「と、屋上に到着・・・カギはやっぱりかかってない。」

 「外に誰かいるか?」

 「いなさそう・・・だね。」

 

 そっと扉を開けて、外の様子を覗う。こちらを見ているのは月だけだ。

 

 「らぴぴ!」

 「ラッピー、どうした?ああ、月か・・・。」

 「満月だから結構明るいね。」

 

 月光の下で、月ウサギは踊る。その名前だけあって、月夜が好きなようだ。

 

 「ラッピーは月の光から魔法エネルギーを蓄えているんだ。」

 「へー、けど星も結構綺麗に見えるね。」

 「ああ、確かにな・・・。」

 「都会では見られないものですわね。」

 

 空想の世界でありながら、星空は本物のように見える。見覚えのある星座も、いくつか見当たる。

 

 「未来世界はどうなの、モンド?」

 「俺の世界ではこうは見えないな。多くの地域が暗雲に覆われているし。なにより誰も空を見上げることをしない。」

 「なかなかディストピアなんだね。」

 「つまらん世界だ。」

 

 そもそもタイムライダーの世界で時間跳躍の技術が発展したのは、とある狂気の科学者の実験によって時空連続体に穴が開き、様々な時間に繋がってしまった、という設定なのだ。世界の各地では天変地異が起こり、人々はドーム都市に寄り合いを作っている。デトロポリスもその一つだ。

 

 「と、そんなことよりもだ。ここに来たのはクエストのためだろう?」

 「そうだった。クエストマーカーとか無いかな?」

 「ありませんわね・・・。」

 「らっぴー♪」

 

 屋上では、ラッピーがくるくると足元を駆けたり転がったりして遊んでいるだけだった。

 

 「ラッピー、お前も遊んでないで探せよ。」

 「らぴ?」

 「らぴ。」

 「・・・って、あんた誰?」

 

 パーティメンバーは全員入り口近くに固まっている。一体ラッピーは誰の足元にいたのだ。


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