ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
モニターが完全に死んだのでは、外の様子を見ることも出来ない。おそらく、敵はのこのこと這い出てくるのを待っていることだろう。
「どうする?」
『白兵戦だな。』
「無理言うなし。」
しかしダークリリィはうんともすんとも動かない以上、戦うとすれば生身でしかない。が、誰がどう見ても無謀としか言いようがないのもまた火を見るよりも明らかだ。アリが恐竜に勝てるものか。
『さんざんゲームの中では生身で巨大な怪物を倒してきてるのに今更?』
「それはゲームだからだよ。」
アクションゲームのラスボス級なバエルと、ホラーゲームの巻き込まれ系主人公ポジションな遊馬とでは、いわばゲームのルールが違う。勝ちたければ、こちらも違うルールの『ゲーム』をぶつけるしかないだろう。
『違うルール・・・そういえば最初のころはRPGっぽいルールで戦ってたねボクたち。』
『そういえばそうでしたわね。バミューダが現れたあたりからおかしくなりましたけど。』
『バミューダに世界もルールも破壊されたからね。』
そういえばそうだったな。あれはあれで大変だったけど、仲間全員に見せ場があってよかったと思う。
「そうだな、これがアクションゲームじゃなくて、RPGだったらワンチャン・・・。」
『あるのか?』
「みんなで一緒に戦ってた頃は楽しかったなって。」
全員がそれぞれ特徴ある能力で戦って・・・みんなで力を合わせれば、きっとどんな相手にでも勝てる気がする。バミューダには負けたけど。
「・・・そうか、本当に破壊したのはラッピーなんじゃないか?」
「らぴ?」
『なんでそうなる?』
「RPGじゃない、別のゲーム・・・シューティングでもアクションでもいいけど、その概念を持ち込んだのはラッピーのムテキだった。ラッピーがルールを塗り替えたことで、世界の根幹のようなルールも破壊された、とか。」
『ラッピーはどう思う?』
「らぴ・・・?」
まあ真相は今となってはわからないし、あの場ではああするしか方法が無かった。
「やはり、そういうことか・・・うむぅ・・いやしかし。」
『アスマ、アスマ。』
「なにトビー?」
『そろそろ現実逃避するのやめない?』
そうである。今こうして無駄話をしている間にも、バエルはなにかしていることだろう。
とはいえ、直接的に干渉できないトビーたちとは、本当にこうして話すことしかできない。
『それはわかってるよ、だから、一緒に考えよう?』
『すでに遊馬さんとは一蓮托生なんですから、水臭いですわ。』
「うーん・・・マトモに戦って勝てる相手じゃないよもう。」
『マトモに戦わなければいいじゃないのか?さっき言ったように、違うルールをぶつけるとか。』
「そんな簡単に言ってくれるけど。」
違うルール、すなわち違うゲームで戦う。今までダークリリィでは、アクションゲームとして戦っていたわけだ。それをこれから別ゲーに切り替えて戦う・・・いや、そもそもそんな事可能なのか?
『ゲームPODならどんなゲームも出来るんでしょ?』
「出来るといいな。」
ガチャガチャと機械をいじってゲームPODネクスを取り外す。
取り外したはいいがどうしたものか。何が出来るか。こうして意味もなく取り外してなんになるのか。無駄行動というのは行き詰ったゲームではよくやることだが。
多分、ゲームの世界を構成するファクターである以上、このゲームPODを使えば世界のルールも書き換えることが可能なんだろう。だがその方法がわからない。考えられる方法としては、ゲームソフトを入れ替えるとかそんなんなんだろうけど。
「とりあえず、ダークリリィのソフトを差し替えてみようかな?」
と、背面のソフトに視線を移したところで遊馬の指が止まった。
「・・・。」
『どうした遊馬?』
「アシュリーとやりたいこと・・・。」
『ん?』
「僕が、アシュリーのお兄ちゃんとしてやりたいこと・・・それって・・・。」
遊馬の目の前に、二つの選択肢が現れた。ひとつはこのままソフトをダークリリィのものに入れ替えること。もうひとつは・・・。
「アシュリー?」
「ん・・・なに?」
「らぴ?」
『何やってるのアスマ?』
「『ゲームシェア』。」
ゲームPODネクスを、アシュリーに渡すこと。そしてそれを選んだ。
「いいの?」
「うん、アシュリーもラッピーが好きなら、きっと気に入ると思う。難しいけど。」
「うん、がんばるよ!」
今はそれどころじゃない?暗い中でゲームをすると目に悪い?けど、遊馬はその選択肢を選んだ。
アシュリーの手にそっと自身の手を重ねて、呪文を唱えるように囁く。
「僕がアシュリーに出来ること、僕がやりたかったこと、それは『アシュリーと一緒にゲームをする』こと。」
ソフトも本体も一本しかない、けどそれを『シェア』すれば、一緒に遊ぶことも出来る。
それはまるで、本当の兄妹のように・・・。
「うっ!?」
「揺れる!」
「らぴっらぴっ!」
と、そんな兄妹の仲を引き裂くように、ダークリリィが揺さぶられる。
「・・・アシュリー、ここにいて。僕は行かなければならない。」
「・・・私も行く!」
「アシュリー?アシュリーには無理だよ。」
「私も、私も戦う!もう守られてるばかりじゃない、私も・・・仲間だから!」
暗闇の中で、アシュリーの瞳は星々のように煌めいていた。
『・・・言えたじゃない。』
「えっ?」
『アシュリーも、ワガママが言えたじゃない。』
「ワガママ、だった?私?」
『ううん、ちゃんとアシュリーにも『我』があったじゃないってこと。』
揺れはなおも続くが、今はそれどころではない。もっと重要なことが進んだ。
「アシュリーは、戦いたい?」
「うん、でもやり方わかんない・・・。」
『そんなアシュリー私からアドバイス!戦う時は、『スイッチ』を入れればいいんだよ!』
「スイッチ?」
「そのための掛け声は・・・。」
コックピットが徐々にこじ開けられていき、光が漏れ始める。
「本当にできる?」
「うん!ラッピーと一緒なら!」
「らぴ!」
「そうか、じゃあ言うことなし!行こう!一緒に!」
引き裂かれた装甲の裂け目から、バエルが顔を覗かせる。
『フシュルルルルルル?!』
だがそこには、バエルの想像していた、絶望の世界などではなかった。
「叫べアシュリー!」
「『リバイバル』!」
「らぴらぴっ!らっぴぃ!!」
希望の光が、バエルの顔を焼いていく。