ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第193話

 『May I have your attention ,please?』

 

 (らぴ!らぴ!)

 「ん・・・また寝てたのか?」

 

 もぞもぞとカバンの中で動くラッピーに揺り起これた遊馬の耳に入ってきたのは、アテンションプリーズの音声アナウンス。目を擦って辺りを見渡せば、乗客たちがいそいそと下車の準備をしていることろだった。

 

 「・・・戻って、きたのか?」

 

 服装も強化服と酸素マスクではなく、メガネにシャツのクソダサナードスタイルに戻っていた。

 

 手荷物を確認すると、隣の車両へと足を動かしてまた目を見張る。そこには血みどろの世界などなく、まるで何もなかったかのように人々はふるまっている。

 

 いや、実際なにもなかったのだろう、『現実』には。ゲームの世界に行っていた・・・というよりも現実にゲームが浸食していたのを知っていたのは遊馬だけ。

 

 「みんな。」

 『おう遊馬。そっちはうまくいったのか?』

 「うん、現実世界に戻ってこれたみたい・・・今、列車に戻ってきた。」

 『ならよかったね。』

 「よかぁない、アシュリーがいない。」

 

 ゲームPODの画面越しに仲間たちの顔が見えて少し安心したのもつかの間、顔の見えない仲間に思いをはせる。

 

 『いない?』

 「この列車のどこかにいるのかもしれないけど、今はいない!」

 『・・・アシュリーはゲームの登場人物だからいないんじゃ?』

 「でも、そっちにもいないんでしょ?」

 『・・・そうだな。』

 

 ゲームがクリアされたことで、現実とゲーム世界の融合が止まったのはわかる。

 

 『だから、アシュリーもいなくなった。』

 「そんな・・・。」

 『こうならないと、遊馬は考えなかったの?』

 「考えたさ・・・考えたけどアシュリーは最後・・・。」

 

 最後・・・最後にアシュリーはなんと願ったんだろうか?

 

 「これでよかった、って言ってたけど・・・。」

 『アシュリーには、自分の危険性がわかってたんじゃないかな。』

 

 実際、デッドソイルの世界とつながると、現実世界がヤバい。それは遊馬も身に染みて知っていたし、そうならないために戦ってきていた。

 

 『結局、アシュリーをあの世界から救い出す方法はわからなかった。』

 「けど、アシュリーは『救ってくれた』って言ってた。きっとまだ別な可能性があるんじゃ?」

 

 と、手荷物や所持アイテムを探る。

 

 「そっち、なんか増えてない?」

 『んー・・・いや、特になにも、誰も持ってないかも。』

 「そっちの世界でまた別なサブクエが増えてたりとかは・・・しない。」

 『ついでにダークリリィはしっかり壊れたままだよ。』

 「ウーン・・・。」

 

 ダークリリィが壊れているということは、たしかにあの戦いは本当だったということ。

 

 とりあえずもう少し現実世界を探してみようと思う。先に先にと降車すると、空調の効いていた車内とはまた違う空気がお出迎え。太平洋の真ん中に位置する人工島、ラ・ムゥへと足を踏み出したのだった。

 

 そんな実感もそこそこに、ホームの端から降りてくる乗客たちを見張る。

 

 「いない・・・。」

 

 数分待って、乗客が降りつくして途切れたところで遊馬はため息を吐く。見落としたのか、それともまだ出てきていないのか。

 

 「あっ、あれは・・・。」

 

 もう少し待とうか、もう行こうか、少し考えていたところで視界に入り込んできたのは、金髪の少女だった。

 

 「アシュリー?」

 

 遊馬は慌てて駆け寄った。だがすぐにその足取りは小さくなる。

 

 その少女を追うようにして、一組の夫婦が出てくる。きっとあの女の子の両親だろう。それだけでもう理解した。やっぱりアシュリーはこの世界にはいないんだろう、と。

 

 かつて向こうの世界でこの駅に到達したときに、休憩のために立ち寄ったのと同じ待合にてしばし座り込む。

 

 「らぴ・・・。」

 「ラッピーにはわかる?アシュリーは何を願ってたのか?」

 「らぴ。」

 「そっか・・・。」

 

 リュックから出てきたラッピーに語り掛けるが、ラッピーはふるふると身を震わせるだけで答えてはくれない。

 

 「アシュリー・・・どこ行っちゃったんだよ・・・。」

 「らぴ・・・らぴらぴ!」

 「わかってる、進まなきゃいけないよね。」

 

 ここでこうして立ち止まっている暇はない。宇宙でシェリルとセシルの2人と合流する手はずの途中だった。ものすごい回り道をしていた。

 

 ものすごく、ものすごく遠大で今となってはすべてが無駄だったと言っていいぐらいの、寄り道をしていただけだったのだ。

 

 そんな寄り道をしてなんの成果もないことに、ゲーマーとして怒るべきなんだろうか。どちらかというと無気力感が大きかった。

 

 「どうせなら、宇宙で解放してくれたらよかったのになぁ。」

 「らぴ?」

 「なんか疲れたんだよ。」

 

 今からもう一回軌道エレベーターに乗って宇宙に行くのは二度手間と思える。それにダークリリィに乗ってたほうが早く着くだろうし。

 

 などとくだらないことを考えながら、ラッピーを抱きしめて顔を伏せる。

 

 「・・・新しいゲーム。」

 「らぴ?」

 「クリアしたんなら新しいゲーム、というか『続編』が出来てるはずなんだよね?」

 『ん?そうだったね。』

 

 ふっと思いついた考えを、遊馬はスマホに入力してネット検索にかける。

 

 「『デッドソイル 外伝 ワクキュリア』・・・っと。」

 

 出た。出ちゃった。

 

 「『デッドソイル:アナザートリート』・・・だと?!」

 『なにそれ。』

 「アシュリーが主人公になって、己の抗体で無双するジェネリックホラー作品。」

 

 ワクキュリアは、そのアシュリーがボス戦で変身するいわば戦闘モードのことを言う。

 

 『と、とにかくアシュリーは元気にやっているんですね!』

 「もうすぐ発売だってさ。」

 

 一体開発者はどんな気持ちでこのソフトを作っていたのかは定かではない。けど、これが遊馬たちのやってきた結果に間違いない。

 

 「またアシュリーには会える。」

 「らぴ!」

 

 この旅が終わったら買いに行こう。ゲームを起動すればきっと会える。

 

 「さ、行こうか!」

 「らぴぴ!」

 

 と、気が付いた時周りの視線が自分に集まっていることに遊馬は気が付いた。ぬいぐるみにはなしかける怪しい恰好の男なんぞいれば、そりゃそうだ。

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