ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
一体我々はなぜ集められたのか。
「そりゃお前が『会議しよう』って言うからだろ。」
「違うそういう意味じゃない。」
「なんでゲームのキャラクターたちが、この世界に集められたのか、でしょう?」
ここは、舞台となる学校らしい建物の一角、食堂だ。
ここに来るまでに、色々な部屋を探して歩いてみたが、人影は一つもなかった。この食堂も例外でなく、環境音のひとつしない。電気や水、ライフラインが通っていながら、ここは外界と遮断された、閉じた世界だと確認も出来た。
「一度整理しておこう。僕たちが行けたロケーションは、①保健室、②校門、③グラウンド、④屋上、⑤各教室、⑥食堂、⑦職員室、⑧花畑、ってところだ。」
「一部の部屋や、階には鍵がかかっていた。」
「それらを破壊することも出来なかった。」
「らぴ!」
「そして、全員その風景に見覚えはないと・・・。」
校門の外へ出ようにも閉まっていたし、その上を乗り越えようとしても『見えない壁』に引っ掛かった。外の世界が『描画されていない』のか、『ロードされていない』のだろう。
「そもそも、俺たちがゲームの登場人物で、ここがゲームの世界だって理屈がわからないな。」
「同感ですわ。特に前者。」
「
「りぴぃ?」
だが、モンドと美鈴の二人はいまいち状況を飲み込めていないらしいが、それも仕方がない。自分が空想の人物だなんて言われても、『はいそうですか』と納得できるはずもない。
「何か証明できる証拠があるのか?」
「そうだな・・・僕はゲーマーだから、2人のことはよく知ってるよ?」
「ほーぅ、何を知ってるんだ?」
「ムラサメ・モンド、過去が無い男。様々な時間で悪事を働く『タイムドグマ』を退治する『タイムライダー』である。」
「それぐらいじゃ信用できないな。」
「実は元タイムドグマの1人で、タイムライダーを壊滅させるためのスパイ。だが自身を疎んじる上司の『アグロ大尉』によって記憶を消されて、あわよくば始末されそうになっている。夜はマメ電球を点けないと寝れない。ナメクジが怖い。」
「待った、信じようそれ以上何も言うな。」
「ナメクジ怖いんだ。」
「忘れろ!」
ヒーローにだって嫌いなもののひとつくらいあるだろう。
「で、西園寺美鈴は『お嬢様とボーイとクリスタル』の登場ヒロイン。主人公とは学園入学時に出会って、生徒会に入る。」
「あの子のことですわね・・・。」
「変なタイトルの略し方なんだね。」
「そうだね。それで、実は主人公は男の子で、水晶のように透明でピュアな心の持ち主で女子高に入れたんだ。」
「えっ!?あの子が?!まさか・・・そんな・・・。」
「で、さらに5月の体育祭のイベントで・・・。」
「ストップ!ストーップ!!もう聞きたくありませんわ!」
顔を真っ赤にして美鈴は待ったをかける。まあ、主人公が男だと知ったら、思い出すのも恥ずかしいことに・・・。
「まあ、これで理解いただけたと思う。」
「二人とも頭抱えちゃったけど。」
「ちょっと酷なことをしちゃったかな・・・。」
真実は、時に残酷だ。
「そういえば、トビーは納得してるの?」
「ボクはまあ、人生いろいろあるから。」
「だろうね、例えるなら・・・。」
「おっと、言わないでいいよ。」
「あ、うんごめん。」
レッドパーカーは歴史が長い。その歴史の中で、トビーは時に失恋したり、辛い別れがあったり、あるいは死んだりもしたことがある。自分がゲームの登場人物だと知ったところで、大したダメージでもないのだろう。
「ラッピーは、まあいっか。」
「ぴ?」
ラッピーはラッピーだ。それ以上でもそれ以下でもない。常にお菓子を食べることを第一に考え、そのついでに時に世界を救ったり、魔王を倒したりしちゃっている。
「それで、キミは一体何者なんだい?」
「僕は・・・ただのゲーム好きの高校生で・・・。」
「でも、ボクたちと同じ場所にいるという事は、キミにしかない魅力があるってことだよ。」
「そのゲーム機はどうなんだよ?」
「これね、ゲームPODネクス。」
校内を歩き回りながら、少し動かし方を探ってみたが、どうにもつかめない。
「とりあえず、マップとステータスの表示は出来るようになった。」
「どれどれ?」
ステータス一覧(HP以外の各ステータスの最大値は20)
【ムラサメ・モンド】
HP:9999
DEX(俊敏):3
INT(知性):12
STR(力):18
特殊スキル『タイムライダー』:1ターンの間、敵ユニットの行動を封じる。このスキルは一度のバトル中、1回しか使えない。
「体力多いな。」
「元がアクションゲームだしね。俊敏が低い代わりに、力は強いタンクタイプか。」
「しかも能力がめっちゃチート。」
「戦闘の要になることは間違いない。」
【レッドパーカー】
HP:100
DEX:15
INT:15
STR:12
特殊スキル『早業』:武器の『装備』にかかるターンを無くす。
「全体的に高スペックだね。」
「ふっふん、まあね。」
「スキルも使いやすいし、頼りにしてるね。」
【西園寺美鈴】
HP:16
DEX:12+5
INT:14+5
STR:5
特殊スキル『お嬢様』:DEXとINTが+5、戦闘時仲間が生存している時、攻撃対象にならない。
「実にお嬢様らしいね。」
「攻撃対象にならなくて、俊敏が高いならヒーラーに相応しい。」
【ラッピー】
HP:6
DEX:20
INT:5
STR:7
特殊スキル【月ウサギ】:自分への全てのダメージは1になる。
「ダメージを絶対に1にする、か。」
「元々そういうゲームだったし。」
「でも変身については書いてないんだね。」
「あくまで『このゲーム』の中での設定なんだと思う。」
ステータスはこんなもんだ。
「あれ、アスマのステータスは?」
「僕のは無かった。プレイヤー側の人間だからかな。あれ、2人ともどうしたの?」
「スキルとかステータスとか、話についていけん・・・。」
「同感ですわ・・・。何故そんな概念が必要になるのですか。」
「ぴぴ?」
たしかに、モンドはゲームをするような性格ではないし、美鈴も世俗には疎い。ラッピーはどこ吹く風と言うところだが。
「話が通じるのは、ボクだけってことか。」
「そういうこと、ホントに頼りにしてるからね・・・。」
「まかせておいて。ボクもそこそこゲームは好きだし。」