ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第2話

 一体我々はなぜ集められたのか。

 

 「そりゃお前が『会議しよう』って言うからだろ。」

 「違うそういう意味じゃない。」

 「なんでゲームのキャラクターたちが、この世界に集められたのか、でしょう?」

 

 ここは、舞台となる学校らしい建物の一角、食堂だ。

 

 ここに来るまでに、色々な部屋を探して歩いてみたが、人影は一つもなかった。この食堂も例外でなく、環境音のひとつしない。電気や水、ライフラインが通っていながら、ここは外界と遮断された、閉じた世界だと確認も出来た。

 

 「一度整理しておこう。僕たちが行けたロケーションは、①保健室、②校門、③グラウンド、④屋上、⑤各教室、⑥食堂、⑦職員室、⑧花畑、ってところだ。」

 「一部の部屋や、階には鍵がかかっていた。」

 「それらを破壊することも出来なかった。」

 「らぴ!」

 「そして、全員その風景に見覚えはないと・・・。」

 

 校門の外へ出ようにも閉まっていたし、その上を乗り越えようとしても『見えない壁』に引っ掛かった。外の世界が『描画されていない』のか、『ロードされていない』のだろう。

 

 「そもそも、俺たちがゲームの登場人物で、ここがゲームの世界だって理屈がわからないな。」

 「同感ですわ。特に前者。」

 「コイツ(ラッピー)が何かしらのキャラクターだってのはわかるけど。」

 「りぴぃ?」

 

 だが、モンドと美鈴の二人はいまいち状況を飲み込めていないらしいが、それも仕方がない。自分が空想の人物だなんて言われても、『はいそうですか』と納得できるはずもない。

 

 「何か証明できる証拠があるのか?」

 「そうだな・・・僕はゲーマーだから、2人のことはよく知ってるよ?」

 「ほーぅ、何を知ってるんだ?」

 「ムラサメ・モンド、過去が無い男。様々な時間で悪事を働く『タイムドグマ』を退治する『タイムライダー』である。」

 「それぐらいじゃ信用できないな。」

 「実は元タイムドグマの1人で、タイムライダーを壊滅させるためのスパイ。だが自身を疎んじる上司の『アグロ大尉』によって記憶を消されて、あわよくば始末されそうになっている。夜はマメ電球を点けないと寝れない。ナメクジが怖い。」

 「待った、信じようそれ以上何も言うな。」

 「ナメクジ怖いんだ。」

 「忘れろ!」

 

 ヒーローにだって嫌いなもののひとつくらいあるだろう。

 

 「で、西園寺美鈴は『お嬢様とボーイとクリスタル』の登場ヒロイン。主人公とは学園入学時に出会って、生徒会に入る。」

 「あの子のことですわね・・・。」

 「変なタイトルの略し方なんだね。」

 「そうだね。それで、実は主人公は男の子で、水晶のように透明でピュアな心の持ち主で女子高に入れたんだ。」

 「えっ!?あの子が?!まさか・・・そんな・・・。」

 「で、さらに5月の体育祭のイベントで・・・。」

 「ストップ!ストーップ!!もう聞きたくありませんわ!」

 

 顔を真っ赤にして美鈴は待ったをかける。まあ、主人公が男だと知ったら、思い出すのも恥ずかしいことに・・・。

 

 「まあ、これで理解いただけたと思う。」

 「二人とも頭抱えちゃったけど。」

 「ちょっと酷なことをしちゃったかな・・・。」

 

 真実は、時に残酷だ。

 

 「そういえば、トビーは納得してるの?」

 「ボクはまあ、人生いろいろあるから。」

 「だろうね、例えるなら・・・。」

 「おっと、言わないでいいよ。」

 「あ、うんごめん。」

 

 レッドパーカーは歴史が長い。その歴史の中で、トビーは時に失恋したり、辛い別れがあったり、あるいは死んだりもしたことがある。自分がゲームの登場人物だと知ったところで、大したダメージでもないのだろう。

 

 「ラッピーは、まあいっか。」

 「ぴ?」

 

 ラッピーはラッピーだ。それ以上でもそれ以下でもない。常にお菓子を食べることを第一に考え、そのついでに時に世界を救ったり、魔王を倒したりしちゃっている。

 

 「それで、キミは一体何者なんだい?」

 「僕は・・・ただのゲーム好きの高校生で・・・。」

 「でも、ボクたちと同じ場所にいるという事は、キミにしかない魅力があるってことだよ。」

 「そのゲーム機はどうなんだよ?」

 「これね、ゲームPODネクス。」

 

 校内を歩き回りながら、少し動かし方を探ってみたが、どうにもつかめない。

 

 「とりあえず、マップとステータスの表示は出来るようになった。」

 「どれどれ?」

 

 

 ステータス一覧(HP以外の各ステータスの最大値は20)

 

 【ムラサメ・モンド】

 HP:9999

 DEX(俊敏):3

 INT(知性):12

 STR(力):18

 

 特殊スキル『タイムライダー』:1ターンの間、敵ユニットの行動を封じる。このスキルは一度のバトル中、1回しか使えない。

 

 「体力多いな。」

 「元がアクションゲームだしね。俊敏が低い代わりに、力は強いタンクタイプか。」

 「しかも能力がめっちゃチート。」

 「戦闘の要になることは間違いない。」

 

 【レッドパーカー】

 HP:100

 DEX:15

 INT:15

 STR:12

 

 特殊スキル『早業』:武器の『装備』にかかるターンを無くす。

 

 「全体的に高スペックだね。」

 「ふっふん、まあね。」

 「スキルも使いやすいし、頼りにしてるね。」

 

 【西園寺美鈴】

 HP:16

 DEX:12+5

 INT:14+5

 STR:5

 

 特殊スキル『お嬢様』:DEXとINTが+5、戦闘時仲間が生存している時、攻撃対象にならない。

 

 「実にお嬢様らしいね。」

 「攻撃対象にならなくて、俊敏が高いならヒーラーに相応しい。」

 

 【ラッピー】

 HP:6

 DEX:20

 INT:5

 STR:7

 

 特殊スキル【月ウサギ】:自分への全てのダメージは1になる。

 

 「ダメージを絶対に1にする、か。」

 「元々そういうゲームだったし。」

 「でも変身については書いてないんだね。」

 「あくまで『このゲーム』の中での設定なんだと思う。」

 

 ステータスはこんなもんだ。

 

 「あれ、アスマのステータスは?」

 「僕のは無かった。プレイヤー側の人間だからかな。あれ、2人ともどうしたの?」

 「スキルとかステータスとか、話についていけん・・・。」

 「同感ですわ・・・。何故そんな概念が必要になるのですか。」

 「ぴぴ?」

 

 たしかに、モンドはゲームをするような性格ではないし、美鈴も世俗には疎い。ラッピーはどこ吹く風と言うところだが。

 

 「話が通じるのは、ボクだけってことか。」

 「そういうこと、ホントに頼りにしてるからね・・・。」

 「まかせておいて。ボクもそこそこゲームは好きだし。」


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