ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
『遊馬-!来たでー!』
もう夜になるというのに、お客人は近所迷惑も顧みずに随分大きな声を張り上げてくる。
「入って、どうぞ。」
「邪魔すんでー。」
玄関を開けて迎え入れた相手はやはり女性だった。ショートヘアにメガネをかけて、半そでにショートパンツがまぶしい。
「おい、なんでそこでお決まりを返さへんのや?」
「お決まり?」
「『邪魔するんやったら帰ってや』って、いつもやってるやろ。」
「知らないそんなの。」
「あんたが好きやから付きおうてやっとるのに。」
まあ、確かにそういう言い回しは好きだけど。ともあれ、客間に通してお茶をお出しする。
「で、誰でしたっけ?」
「はぁ?」
「あなたのお名前なんですか。What's your name?」
「なに抜かしとんねん、しまいにゃしばくで。」
「マジなんだよ・・・。」
遊馬の記憶にこのような女性の覚えはない。歳は多分同年代なんだろうけど。
「しまいにゃしばくで?」
「まあ・・・信じてくれないんだろうけど、記憶がないんだよ。」
まあ、安牌な言い訳だろう。実際この世界の記憶を遊馬はないわけだし。それでも信じてもらえないだろうとは思っているが、『異世界から来た』と言うよりもずっとマシだ。
「ホンマに?」
「しばかんといて。マジだから。」
「・・・まさかマジでこうなるなんて・・・。」
「んん?」
「なんでもない。頭は大丈夫?」
「・・・正直自信がなくなってきた。」
「ちゃう、痛いところとかない?」
「ないです。」
なんだか引っ掛かるものいいだが、信じてくれたらしい。悪魔の証明のように、無いものの証明は難儀することだろうと予想していたのだが。
「・・・これやったら上手いことすれば・・・いやでも記憶が無いっていうのはなぁ・・・。」
「あのー。」
「ん?なんなん?」
「そろそろ名前教えてくれます?」
「あ、あー、名前な。凛世、『
凛世、再三確認するがやっぱり記憶にはない。少なくとも高校のクラスメイトとかではなかった・・・はず。
「凛世さんとはどこで知り合ったの?どういう関係だったの?」
「うっ、せやな・・・ウチと遊馬は同じゼミで知り合ったんや。」
「ゼミ?」
「大学のゼミや。一緒に研究しとったんや。」
「大学?どこの?」
「城南大や。」
どこの大学だ。というか、大学生なのか僕。無事に高校は卒業できたんだな。
「どう、なんか思い出した?」
「・・・わからない。」
さて、どう受け答えしたものか。お茶に口をつけるが、味わっているような余裕がない。茶の淹れ方は間違っていないはずだったが。
「うーん・・・。」
けれど、それは凛世も同じなのか、カップの中身を覗き込んだまま呻っている。
「緑茶の方がよかったですか?」
「いや!せやのうて・・・ホンマに記憶無いんかなって思って。」
「んー・・・そう言ってるけど。」
「いやー、普段の遊馬やったらこない高い茶葉使わんよなって思ってな。そこまで計算しとるんやったら大したもんやで。」
「ああ、なるほど。」
お菓子も高そうな箱に入っている引き出物を適当に選んで持ってきていた。それが、どうも『違った』らしい。それが『記憶が無い』という証言に少しの信憑性を与えるのだから塞翁が馬と言ったところ。
(このまま上手い具合に話が転がればいいんだけど。)