ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
カバンを肩にかけ、遊馬は部屋を出ると凛世の元に戻る。
「さーて、行こうか。」
「おーう、運転任せたで。」
「うんてん?」
既に準備完了していた凛世の言葉に、数秒思考が止まった。
「なに、車運転するの?僕、免許持ってたっけ?こう見えて運転したことないんだけど。」
「なにゆーてんねん、いつもそれで大学行ってたやろ?このブルジョワめ。」
「うそだぁ。」
大学生の身分でマイカー持ってるのかよ。そりゃあ目もつけられるわな。
「なんや運転の仕方まで忘れてもうたんか?あ、でも実は記憶喪失ちゃうんやたっけ?」
「記憶喪失じゃないけど、前の世界ではまだ17だったから免許取ってないんだよ。」
「後から設定を生やさんといてや。ほらほら、乗った乗った。」
玄関に置いてあった車のキーを投げ渡される。そんなこと言われても出来ないものは出来ない・・・。
「じゃあどうすんねん。大学まで他に脚無いで?」
「電車とかあるでしょ?」
「電車代の方が高くつくねんって、定期切れてるし。時間もかかるし。」
昨日遊馬は凛世のことをアッシーと呼んだけど、正しい意味でのアッシーくんは遊馬の方だったようだ。
しょうがない。全然しょうがなくはないけど遊馬も腹をくくった。
「何してんの?」
「ネットで車の説明書を探してる。説明書はよく読む方だから。」
「・・・自分で言うといてなんやけど、なんか不安になってきたわ。」
「もう下ろさないぞ。」
「まだ乗ってもいないのに酔ってきたわ。」
ペダルの右がアクセルで左がブレーキ、ハンドルを回せばそっちに向く。それはわかった。後は細かいスイッチやレバーの使い方、交通ルール。
「自動運転があればこんな苦労はしなくていいんだろうけどな。」
「もうええん?」
「だいたいわかった。」
「そこは完璧にわかってほしいんやけど・・・まあええわ。」
「文句があるなら自分で運転して。」
「ウチ免許持ってへんし。」
遊馬が自分の財布の中を探ってみれば、確かにそこに運転免許はあった。顔写真は随分シケた表情してやがる。陽キャのリア充には見えない。
「よし、行こうか。シートベルトはOK?小便は済ませた?神様にお祈りは?部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする心の準備はOK?」
「部屋の隅て、今から外行くんやで。」
「そういう定型文なの。」
ミラーの角度と椅子の高さを何度も調整する。どうにもお尻の収まりが悪く、不安感がぬぐえない。
「よし行くぞ!ゴー!」
「ギアがニュートラルなってるで。」
「おっ、しまった。」
ブォオオオオオオオン!と鉄の獣がうなりを上げる。
勢いよくアクセルを踏み込んだ遊馬はいきなり出鼻を挫かれた気分でレバーを切り替える。
「おぅうううううう!?」
直後、遊馬と凛世は前につんのめると、後方に衝撃を受ける。
「アクセル放せアホ!!」
「おっ?ほっほっほぉ?」
幸いな事に大したキズやヘコミが付かずに済んだ。
「はぁ・・・ちょっと後悔してきたでウチ。」
「今からでもやめとく?」
「うー、うー、でもまだ電車代もったいないっていうのが勝ってるわ。」
「ほいじゃ再発進。」
今度はそろ~りと慎重に発車した。