ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
ガレージの奥に置かれていた自転車が潰されてから、数十分後。
「うん、もう馴れてきたな。」
「ホンマに大丈夫なんか。」
「そう思うなら運転代わる?」
「やめとくわ。パクられるのは遊馬やし。」
どうやら体は運転の仕方を覚えていたらしく、凛世教官の熱心な指導もあって遊馬は運転のカンを取り戻していた。朝早いこともあって、道も空いていたことも幸いした。
「ここ右やね。」
「はいはーい。道わかるんだね。」
「毎日送っててもらってたからな。高速にも乗るで。」
「高速か・・・そんなに遠いのか。」
どうやら大学はド田舎、もとい自然豊かな場所にあるらしい。ハイウェイで野を越え山を越える必要がある。
「毎日毎日、こんな長道を行くなんてやんなっちゃうね。」
「3回生までは電車とバス使っとったんやけどな。4回になって急に車乗るようなったから便乗させてもらっとったんや。」
「ふーん。でも自分で運転してたらゲームできないしなぁ。」
「遊馬ほんまゲーム好きやな。ウチもやけど。」
無人のETCを通り抜け、高速道路に入る。不気味なほどに他に車の姿は見えない。
「ジャンルは?」
「乙女ゲー。」
「そうか。となると『プリズムロンド』とか?」
「そうそう、『プリロン』好きやで。」
「あれは男性人気も高いしな。」
「アニメもやってたしな。」
「アニメやってたの?」
「やってたよ。」
元の遊馬が17歳で、今が酒が飲める年齢だから、そのラグの間でアニメ化もしていたのだろう。
「アニメの出来はどうだったの?」
「よかったで、ダンスシーンもCGがしっかりしてたし。あれでファンが急に増えたって感じや。」
「元から原作好きだった身としては?」
「にわかが増えたなぁ、って感じや。」
果たしてアニメから入った勢が。どれだけが激ムズな原作をプレイしたのか。基本がリズムゲーなのに、背景で流れるムービーの出来が良くてそっちの方にも目を奪われがちになるというのに。
「ああ、リズムゲー要素が無い移植版が出てん。」
「それ見方によっては劣化じゃない?・・・なんか霧が出てきたな。」
「だからムービーが妙に浮いてんねん。」
ゲームの話に華が咲いてきたが、車の外には霧がかかってきていた。遊馬は前照灯をつけ、速度を落とす。
「やれやれ・・・でも夏に霧がかかるなんてな。」
「このへん、いつも日差しがええはずなんやけどな。」
「天気はどうなってる?」
「どうやろ。」
隣で凛世がスマホを取り出して気象情報を探しはじめるのをチラリと見て、遊馬も運転に集中する。
「ん?」
「どしたん?」
「いや・・・気のせいかな。」
一瞬、視界の端に影のようなものが映った・・・ように見えた。まもなく車はトンネルに入り、上り坂になってアクセルを強める。
「おっかしいな。この辺晴れになってるで。」
「一時的な物なのかな。」
「こんなん初めてやで。」
水滴がワイパーに弾かれ、風にあおられて消えていく。その様子を視界の端に収めつつ、視線はしっかり前を向く。
「あっ!?」
「なにっ?!」
そう、しっかりと前を見ていたはずだった。だというのに、トンネルを抜けた先にいた『何か』に気付けなかった。