ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
「凛世、歩ける?」
「ちょっとは歩けるけど・・・。」
選択肢は二つ。ここで助けを待つか、助けを求めて移動するか。山中とはいえここは高速道路のすぐ真下の崖だ、人通りはそれなりにあるはずだ。誰かが見つけてくれるかもしれない。
それに、遊馬たちの車は『何か』にぶつかってこうなった。となると破片や傷で異変に気付いてくれる可能性も高い。
「少しここで待ってよか。」
「そうだね、下手に移動するのは遭難の元だし・・・。」
刹那、轟音と共に鉄塊が飛来し、2人の目の前に着陸した。
「ここは危険そうだから離れようか。」
「せ、せやな・・・危険、っぽいし・・・。」
鉄塊、どう控えめに見ても自動車は爆発炎上し、冷えた空気を熱風が吹き飛ばす。
息つく間もなく、もう一台車が降ってくると、同じように爆発炎上した。
その様子を振り返ることもなく確認すると、遊馬と凛世は道なき道を進んでいくこととした。心なしか速足で。
「なあ、この状況はいったいなんなん?」
「わからない。」
なぜこうなったのか、何が起こっているのか。すべては霧の中にしかない。その霧をかいくぐるように歩みを進めるしかない。
「痛っ・・・。」
「大丈夫?」
「もうちょいゆっくり歩いてよ。」
「ごめん、ちょっと休むか。」
座り込んだ凛世の隣に遊馬は膝をつく。
「さっき落ちてきたの、車だったよね。」
「せやな。」
「一体、上で何が起こって・・・そもそも僕らも何が起こったのか。」
「知らへん。」
凛世は俯いたまま素っ気なく答える。山の中で陽があまり差してこないせいか妙にひんやりとしており、それが体力と精気を奪っていくように思えた。
「なぁ、やっぱりさっきの場所で待ってへん?あれだけのさわぎやったらきっと気づいてくれるかもしれんし。」
「でも、あそこは危険だよ。また降ってくるかもしれないし。」
「2回、いや3回もあったらもう来うへんて、ホラ行こ。」
2度あることは3度あるとも言うが。というよりも、遊馬の懸念事項はただ単に危険だからではない。車が降ってきたということは、当然それに『乗っていたもの』も一緒に落ちてきていて、しかもそれは燃え上がって、まだそこにいるということで・・・。
速足でその場から逃げるように駆け出す凛世を、遊馬は慌てて追いかける。
「はぁっ・・・はぁっ・・・。」
「ちょっと、凛世待った!」
「もう、もうイヤや・・・。」
足をもつれされながら駆ける凛世にすぐ追い付くと、その肩を掴む。
「大丈夫、大丈夫だから。」
「全然大丈夫とちゃうやん!こんなボロボロで、誰もおらんのに!」
凛世は不満を喚き散らし、遊馬も黙って聞くしかできない。こんな状況では誰でも参ってしまう、現に遊馬も少しやつれているように思えてきた。なんで・・・どうして・・・と漏らすしかできない凛世を、ただじっと見つめていた。
そのうち、ぐすっと涙を堪えるようにぐずる凛世を抱き寄せる。
「大丈夫?」
「・・・うん。」
「やっぱり、あそこで待っていようか。助け、来るかもしれないし。」
「うん・・・。」
凛世の手を引いて、道なき道を辿っていく。にわかに、赤々と燃える炎の気配を目と肌で感じるようになってくる。
「燃えてる・・・。」
無残な姿となった自動車が横たわって火の手を上げている。その熱を感じられる程度の、危険ではない距離に凛世は腰を下ろした。
「ちょっと、様子見てくる。」
「うん、遊馬、気をつけてな。」
「うん。」
『アレ』があるだろうな、と思いつつも邪な好奇心が勝ってしまった。運転席があったであろうところが見える位置に回り込もうとした遊馬に、不快な臭いが寄ってくる。
「ん?」
ふと、その火の手のそばに動くようなものが見えた気がした。まさか、まだ誰か生きているのか?心臓がドクンと拍動を強め、震える足を動かさせる。
「あれ・・・なん・・・。」
なんだ?と声が出かかったところで喉がひきつった。
「・・・はっ。」
『それ』は、四つ足の獣のような姿をしていた。尻尾のように蠢く触手が腰辺りから生え、犬のようにも猛禽類のようにも見える頭がついている。
『それ』は黒く焦げた肉の塊に頭を突っ込み、貪っているようだったが、生きた人間を血の色の眼に捉えると、低くうなり声をあげた。
『新鮮な肉を見つけた』と。