ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第222話

 「うっ・・・あっ・・・。」

 

 敵だ。相対的な立場上の敵とか、気に入らないやつとかそういう意味ではない、生物的な敵性生物だ。敵は尻尾を上に立てながら、じりじりと距離を詰めるようににじり寄ってくる。

 

 武器、何か武器はないか。以前の銃じゃなくて、棒っきれでも傘でもなんでもいい。とにかく身を守る手段が欲しい。

 

 (なにもない・・・。)

 

 ない、終了。そもそも、ここはゲームの世界ではないはずだろう?なぜ敵がいる?

 

 というか、またホラー展開なのか?ホラーゲームはもう勘弁だっていうのに。頼れる武器のゲームPODもないんじゃ、もう逃げるしかない。

 

 それに、こんな姿の敵を遊馬は知らない。ひょっとしたら遊馬の知らないゲームがあるのかもしれないが、だとしても対抗手段も逃走手段も知らない。

 

 (いや、こういうタイプのクリーチャーが出るなら、必ず倒すことも出来るはず・・・。)

 

 初期装備では難しい場合が多いが、アクションゲームなら最悪攻撃を回避し続けてノーダメでも行けることも出来なくはない。初見ではまず無理だろうが。

 

 だがそのとっかかりが、遊馬にわずかな冷静さを取り戻させた。いつも通り、自分の実力を発揮してみよう。

 

 それにしても、この敵の動きは非常に緩慢・・・というか鈍い。それにこちらの様子を窺っているにしては、距離を窺ったり、回り込んだりするようなことをしてこない。舐められているのか、何かしらのルールに則っているのか。

 

 (こんな時、トビーやモンドならどうするか・・・。)

 

 ジリッ・・・とゆっくりと一歩下がる。敵は動きを見せない。

 

 次に大きく横に幅跳びしてみる。すると敵は牙を剥いて走って跳びかかってくる。

 

 「ほぁっ!!」

 

 跳びかかってきた瞬間、遊馬も大きく横に跳んで躱せた(・・・)。かなり大ぶりな攻撃、というか単純な攻撃と言える。この程度なら体力の続く限りは避け続けられるかもしれない。

 

 (いけるか?)

 

 キョロキョロと頭を振る敵の脇腹を蹴り上げる。が、返ってくるのは重たい手応え、まるで効いた様子を見せずに再び襲い掛かってきた。

 

 「ぐぁっ!」

 

 獰猛な牙が生えた口からは腐臭や煙臭とも違うような、今まで嗅いだこともない悪臭が漂う。さらにその奥からは、返しのような鋭い突起のついた舌が伸びる。

 

 「うがぁああああ!!」

 

 とっさに身を翻したものの、肩に舌が突き刺さる。返しによって抜けることがない舌によって、敵の口へと手繰り寄せられていく。

 

 「遊馬?」

 「り、凛世・・・。」

 

 遊馬の叫び声を聞きつけたのか、凛世が視界の端にやってきていた。

 

 「きっ・・・キャァアアアアアアアア!!!」

 

 その叫び声に反応した敵は振り返る。その隙を遊馬は見逃さない。

 

 「このっ!おぉっ!!」

 

 舌は一般的に生物にとって急所でもある。神経や血管が集中しており、ここを傷つけられることは大量失血を意味する。先端の方は堅そうであったが、伸び縮みする奥の部分は比較的柔らかいはずだと踏んで、遊馬は手に取った石で切りつける。

 

 それは功を奏したのか、舌を引っ込めて敵は飛び退くと霧の向こうへと消えていった・・・。

 

 「はぁ・・・はぁ・・・。」

 

 戦闘は終了した。遊馬は勝ったとは言えない。

 

 「音に・・・反応するのか?」

 

 だが負けて命を落とさなかったのは収穫だったろう。

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