ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
「うっ・・・あっ・・・。」
敵だ。相対的な立場上の敵とか、気に入らないやつとかそういう意味ではない、生物的な敵性生物だ。敵は尻尾を上に立てながら、じりじりと距離を詰めるようににじり寄ってくる。
武器、何か武器はないか。以前の銃じゃなくて、棒っきれでも傘でもなんでもいい。とにかく身を守る手段が欲しい。
(なにもない・・・。)
ない、終了。そもそも、ここはゲームの世界ではないはずだろう?なぜ敵がいる?
というか、またホラー展開なのか?ホラーゲームはもう勘弁だっていうのに。頼れる武器のゲームPODもないんじゃ、もう逃げるしかない。
それに、こんな姿の敵を遊馬は知らない。ひょっとしたら遊馬の知らないゲームがあるのかもしれないが、だとしても対抗手段も逃走手段も知らない。
(いや、こういうタイプのクリーチャーが出るなら、必ず倒すことも出来るはず・・・。)
初期装備では難しい場合が多いが、アクションゲームなら最悪攻撃を回避し続けてノーダメでも行けることも出来なくはない。初見ではまず無理だろうが。
だがそのとっかかりが、遊馬にわずかな冷静さを取り戻させた。いつも通り、自分の実力を発揮してみよう。
それにしても、この敵の動きは非常に緩慢・・・というか鈍い。それにこちらの様子を窺っているにしては、距離を窺ったり、回り込んだりするようなことをしてこない。舐められているのか、何かしらのルールに則っているのか。
(こんな時、トビーやモンドならどうするか・・・。)
ジリッ・・・とゆっくりと一歩下がる。敵は動きを見せない。
次に大きく横に幅跳びしてみる。すると敵は牙を剥いて走って跳びかかってくる。
「ほぁっ!!」
跳びかかってきた瞬間、遊馬も大きく横に跳んで
(いけるか?)
キョロキョロと頭を振る敵の脇腹を蹴り上げる。が、返ってくるのは重たい手応え、まるで効いた様子を見せずに再び襲い掛かってきた。
「ぐぁっ!」
獰猛な牙が生えた口からは腐臭や煙臭とも違うような、今まで嗅いだこともない悪臭が漂う。さらにその奥からは、返しのような鋭い突起のついた舌が伸びる。
「うがぁああああ!!」
とっさに身を翻したものの、肩に舌が突き刺さる。返しによって抜けることがない舌によって、敵の口へと手繰り寄せられていく。
「遊馬?」
「り、凛世・・・。」
遊馬の叫び声を聞きつけたのか、凛世が視界の端にやってきていた。
「きっ・・・キャァアアアアアアアア!!!」
その叫び声に反応した敵は振り返る。その隙を遊馬は見逃さない。
「このっ!おぉっ!!」
舌は一般的に生物にとって急所でもある。神経や血管が集中しており、ここを傷つけられることは大量失血を意味する。先端の方は堅そうであったが、伸び縮みする奥の部分は比較的柔らかいはずだと踏んで、遊馬は手に取った石で切りつける。
それは功を奏したのか、舌を引っ込めて敵は飛び退くと霧の向こうへと消えていった・・・。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
戦闘は終了した。遊馬は勝ったとは言えない。
「音に・・・反応するのか?」
だが負けて命を落とさなかったのは収穫だったろう。