ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
【THE EMD】
終わった・・・これでこのゲームはクリアだ。
「ふぅ・・・。」
しかし、僕の気は晴れない。エンディングに納得がいかないからとか、ゲームのボリュームについてとやかく言いたいわけではない。ゲームPODの電源を落としてごちる。
「これは・・・リアルの世界なの?」
暗くなった画面に、自分の顔が移り込み、そこに触れてみる。毎朝洗面所で見ている自分の顔と、なにひとつ違いはない。
では周りを見て見るとどうだろう。よくわからないスイッチと、レバーと画面で埋め尽くされた、カサブランカのコックピットだ。これは・・・リアルでは見たことが無い。
わからない、これがリアルなのかゲームなのか。そのどちらだとしても、何故自分はここにいるのか。
この世界の、教室で目覚める直前の記憶は・・・。
「思い出せない・・・。」
何故あの場所にいたのか。何故、その状況を自然と受け入れられていたのか。
「夢でも見てるのかな・・・今。」
目が覚めたら午前2時ぐらいで、見慣れた天井を見上げているのだろうか。なんか、そんな気がしてきた。
『YUME DEHA NAI』
そうであったならどれだけよかったか。僕の意識をこの世界に引き戻す音のない声が飛来する。
ゲームPODに視線を移すと、またも謎のメッセージが表示されていた。
「夢ではない?」
『SOU KOKOHA GENJITSU TOSHITE ARU』
『WATASHI HA KOKONI IRU』
「誰なの?」
『WATASHI HA ELSA』
「エルザ?」
直近聞いた中で、その名前の人物には一人しか思い当たらない。
エルザ、つまりこのカサブランカそのもの・・・。
『ANATA GA GAME WO CLEAR SHITA OKAGE DE KONO SEKAI TO TSUNAGATTA』
「繋がった?」
『DARK LILLY NO MONOGATARI NI TSUNAGATTA』
「カサブランカをクリアしたから、その続編に・・・ってことか。」
『SOU』
以前、ここで見たメッセージも、エルザからのものだったのか。
「じゃあ、ダークリリィをクリアするにはどうすればいい?」
『DARK LILLY HA CLEAR SURUKOTO GA DEKINAI』
「クリアできない?」
『DARK LILLY HA MIKANSEI NO GAME』
『DARK LILLY WO KANSEI SASETE HOSHII』
「完成?」
僕はゲーマーであって、クリエイターではないんだけど・・・。でも、それが目的なんだな。
「どうすれば完成させられる?」
『BUTAI TO CAST HA SOROTTEIRU』
「キャストと舞台。」
『ATO HA SHINARIO GA HITSUYOU』
「そしてシナリオか。」
舞台が整い、役者がそろえば、キャラクターたちが勝手に動いてシナリオも出来上がっていく、と言うが。随分とアバウトな方法だ。
『DAGA MONDAI GA ARU』
「問題?そもそも問題だらけだろうに。」
『KONO SEKAI NI CAST IGAI NO NINNGEN GA MAGIREKONDA』
「キャスト以外の人間?
つまり、僕たちのうちの誰かが、ダークリリィとは関係なくこの世界にやってきた、ということ?
「それは誰?」
『SORE HA WAKARANAI』
「・・・使えないなぁ。」
『WATASHI HA PILOT GA INAKEREBA UGOKENAI』
『DAKARA ANATA NI TAYORU SHIKA NAI』
僕にしか出来ない事、か。実に主人公らしいセリフだ。
『JA SOYUKOTODE』
「って、まだ話は終わってない!」
『KOREIJOU HA MURI』
『TSUKARETA』
疲れたって、ロボットが疲れるものなのかよ。プッツンとゲームPODに表示されていたウインドウが閉じられる。
けど、こういうところがまさにエルザっぽいというか。信憑性が高くなってきたということか。
「あっ、おかえり。ゲームはどうなった?」
「・・・ただいま。クリアできたよ。」
しかし、おかげでまた謎が増えてしまった。一体この中の誰がダークリリィに関係のあるキャラクターで、誰がそうでないのか。そして、なぜそうでない者が集められたのか。
「へー、じゃあどういう結末になったのか聞かせて。」
「うん、それもそうなんだけど・・・。」
「なんだ、歯切れが悪いな。」
エルザと話したことを、伝えるべきか・・・とりあえず保留にしておこう。混乱させるだけの結果になりかねない。
「さて、どこから話そうかな。」
「火星基地への奇襲攻撃の話は聞きましたわ。そこからどうなったんですの?」
「じゃあ、順番に・・・。」
まず、火星基地を奪還して、捕虜のレベリオンを戦力に加えることが出来た。けど、それと同時にアダムの本拠地、『バルアーク』が活動し、地球への直接攻撃を開始する雄二とカサブランカは、バルアークを追って最後の戦いに向かう。
アダムの目的は肉体を取り戻すことだった。アダムはかつて古代の火星において、人類と同じような肉体を持っていたが、宇宙線と気候変動によって滅びの危機を迎えた。そこで、一握りの人間の意思と精神をナノマシンに閉じ込めて、来るべき復活の時にまで封印した。
「一握りだけ?」
「そう、当時の火星人の中でも上層に位置する知識人や、貴族だけ。それもとびっきり選民思想の強い連中ばかりが生き残った。それが、現代に甦ったアダムの性質そのままになった。」
一方、封印からあぶれた者たちは、最後の望みをかけて、自らの肉体を改造し、火星の兄弟星である地球を目指した。1人、また1人と数を減らしながら、最終的に地球に降り立ったのは1人だけ。それこそが、『最初のレベリオン』であり、旧約聖書に謳われる『アダム』である。
「聖書の話を持ち出してきたか。」
「アニメが放送されていた当時は、珍しかったみたいだけどね。」
放送当時はちょうどノストラダムスの大予言も近かったこともあり、終末思想的な作風もウケたという。
「で、だ。現代のアダムは『アダムによって地球人類は作られた。ならば、地球人類はアダムによって統べられることこそ道理』とのたまって、地球への侵攻を始めたわけだったんだ。」
「自分の種族を見捨てるような連中が言えたセリフじゃないね。」
カサブランカとバルアークの戦闘は熾烈を極めた。バルアークにはアダムのナノマシンが満載されており、その地球到達はすなわち全人類のレベリオン化、火星人による支配の完成に他ならない。その身勝手な野望を打ち砕くため、カサブランカ、雄二とエルザは命を捨てる覚悟を決める。
「命を捨てる?」
「レベリオンには、最終兵器が備わっていたんだ。」
『宇宙を震わせる歌』とも呼ばれる波動兵器『リオンフォン』。レベリオンには標準装備されているが、カサブランカはその改造の途中で奪取されたために搭載されていなかったが、最終局面において最後の手段として自爆同然に使用。バルアークの頭脳部分を破壊する。
さらに、地球からの援護射撃によって撃ち抜かれ、バルアークは宇宙の塵と化した。カサブランカを道連れにして・・・。
「あれ?道連れに?」
「雄二とエルザはどうなったんですの?」
「んー・・・助かったらしいんだけど、正直僕も納得してない。」
一体どうゆう理屈で助かったのか、ツッコミどころしか感じない。
「でも、続編があるっていうことは生きてたってことなんでしょう?」
「そのはず。そして、その続編を完成させることが僕たちの役割らしい。」
「完成?その情報はどこから?」
「クリアしたらわかった。」
嘘はついていない。
「まあ、とにかく最終目標はわかったということで、僕はちょっと休ませてもらうね。さすがに疲れた。」
「だろうね、今はゆっくり休みなよ。レイもまだ目覚めてないし。」
自分のベッドに寝転がる。が、しばらくしてもう一度ゲームPODを起動する。そこにはカサブランカのラストシーン、どこか知らない場所で二人っきりで暮らす雄二とエルザの姿だけが映されている。
アニメ放映時には、なにかしらの描写が挟まっていたのかもしれないけれど、やはりどこか納得いかないところがある。
なぜ、この二人はこんなに幸せそうな顔が出来るのか。
しばし眺めたのち、ゲームを終了して目を閉じる。