ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
遊馬の手から伝わる熱がほのかに凛世の手を温め、凛世もしっかりと一歩一歩を踏みしめていられている。
「遊馬ってさ・・・。」
「なに?」
「なんていうか、優しいよね。」
「優しいは長所ではなくフレーバーだよ。」
一方遊馬の方はというと、すっかりカメラに気を取られていた。小さいながらも秘められたポテンシャルは、新しいおもちゃを手に入れた子供の用に遊馬の心をときめかせていた。すぐ隣のガールフレンドを忘れて没頭してしまう程度には。
広角レンズで広範囲を映せ、赤外線モードで暗闇の中もよく見える。マイクロカメラというにはあまりにも便利だ。惜しむらくは、それを映す対象が少なすぎる、あまりにも周囲が殺風景で何もなさすぎるという事だ。
「ゲームなら夜間モードで暗闇の先を見通せたりするんだけどなー。」
「まだ昼にもなってへん・・・お?」
「ん?」
「あれ、なんやろ。」
凛世の声に反応して遊馬も顔を上げると、斜め45度上空に白い光の点のようなものが並んで見えた。
「上の高速道路かな?」
「なんか、人工物が見えるってだけで安心するなぁ。」
「なんとなくわかる。」
神は「光あれ」と言われた。生命とは光失くして生きられない。時間的には昼前だというのに薄暗く鬱蒼としたこの世界は、人間が住むには黒と緑が多すぎた。
「あそこまでなんとかして行けへんかな?」
「登るの?」
「登らへん。」
どうやら山の斜面を切り崩した道路はここまでで、ここから先には陸の橋、本線橋が続いているようだ。となると、橋を支える柱の周囲には人工物があるはず。誰か人がいるかもしれないし、この霧の世界を抜けられる手段があるかもしれない。
「河だ・・・。」
「河やね。」
本線橋の真下は、大きな河で寸断されていた。下流なり上流なりを目指せば、渡る橋の一本も見つかることだろう。
「んー・・・あっ、あっちの方のアレ。」
「アレ?おお、橋あんじゃん。」
霧の向こうにうっすらと人工の建造物が見える。そして人工物が見えるということは、いよいよ人家も近いということだ。
まさに光明が見えた、というところで油断をすると足元をすくわれる。
「なんやこれ。」
「橋じゃなかった。」
まあ、たしかに河の向こうへと繋がる道はあった。ただ、それは人が通るためのものではなかった。
「パイプか・・・。」
「ライフラインかな?」
水道かガスか電気か、ともかくこれはライフラインを通すためのパイプの橋だった。パイプラインにキャットウォークこそあれど、生憎人や車が通るための橋は見当たらない。
これがちょっと困ったことで、人が通るための道が無いということは、すなわち人の往来が無いという事。つまり、この先に多分人家はない。
「まあ、それでも施設ぐらいはあるかもしれへんやん。高速道路に戻るための道もあるかもしれへんし。」
「前向きに考えるんだね。」
「そうでもせなやってられへん。」
とにかく、水色のペンキに塗られたパイプラインを渡っていく。一瞬見えた希望をとりあげられるというのは、絶望を与えられるよりもよっぽどたちが悪い。