ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
「この道、大丈夫なんかな?」
「2人合わせても100kgは越えないだろうし、大丈夫だとは思うけど。」
足場の金網から覗ける下の河は、結構な急流で深さも見えない。落ちたら即死、とまではいかなくとも間違いなく溺れることになるだろう。
それが一歩一歩踏み出すごとに、ギシギシと音を立てて不安を無駄に煽る。まあ、滑りそうなパイプの上を綱渡りさせられるよりはいいだろう。
ペンキがはがれて錆の浮いた手すりに触れると、赤いものが指に着く。
(赤・・・鉄の色。)
ふと、遊馬は自分の左肩に触れ、そこにあるはずの傷のことを思い出した。絆創膏を貼っただけの小さな点だが。
河の中央にまで来たところで、少し広い足場に出た。緊張しっぱなしというのも体に悪いので、ここいらで一休みすることとした。
「遊馬、ケガ大丈夫なん?」
「血も出ないし、今は痛くもないよ。」
「あの怪物も出てこぉへんし。」
油断はできないが安心はしている。ふと、今まで歩いてきた道の方を見てみるが、あのクリーチャーの姿は影も形もない。
少し、考えを整理しよう。そもそも今遊馬の周りでは何が起こっているのか?
「ねえ凛世、さっき言ったこと覚えてる?」
「どれ?」
「えーっと、僕は実は記憶喪失じゃなくて、並行世界から来たって話。」
「ああ、そんなん言うてたな・・・。」
そう、遊馬の意識・・・この場合、魂なんだろうか。それだけがこの世界の遊馬に憑依?あるいは入れ替わってしまっている。しかも、伝家の宝刀で虎の子のゲームPODネクスも手元には無い。
その原因は、仲間たちと行った『半抜きバグ』のにあると考えられる。・・・一体なにをどうやったのかはわからないが、とにかく実行されて今こうなっている。
さて、こっちの世界の遊馬も色々と問題を抱えているが、そのこととこの奇怪な霧の現象はおそらく関係ない。これも半抜きバグのせいで、どこかの世界と繋がってしまったのだろう。とんでもないことをしてくれたものだ。やはりもっと強く止めるべきだったか・・・。
「遊馬、頭大丈夫なん?」
「血は出てないしタンコブも出来てないよ。」
健全な物言いではないが、これが健常な者の反応というものだろう。でも信じてほしい、こんな状況は普通じゃないが、現実に起こっていると。
「なんなんそれ・・・じゃあ全部遊馬のせいなん?」
「そうとも言えるし、そうとも言えない。」
これからどうすればいいかもわからない。この霧が一体どこまで広がっているのかも、見当つかない。
「ただ、この状況をどうにかできるとしたら、それは僕にしかできないと思う。」
まるでヒーローのようなことを言っている。自分の言葉に酔うつもりはないが、すこし眩暈がしてきた気がする。
「実態はマッチポンプやん。」
「まあそうなんだけど・・・。」
そしてヒーローには敵がつきものだ。
金網の足場に、断続的な振動が加わっていることに気が付いた。
「まさか!?」
「来たん?!」
遊馬は凛世を背後に庇うようにバッと立ち上がり、後ろの道に目を凝らす。霧の向こうから、あのクリーチャーがやってくるに違いない。
じんわりと汗を背中にかくが、まだ敵の姿は見えないまま、やがて振動が止まる。
「どこだ・・・?」
キャットウォークからじゃない、パイプの上か?それとも金網の下か?視線をぐるぐると動かす。
「アカン・・・ウチもう・・・。」
「凛世?!走るの!」
「逃げる!」
ダンダンダン、と金網を蹴って凛世が向こう岸の方へと走り出した。
それを待っていたかのように、遊馬の脇をすり抜けるようにあの四つ足のクリーチャーが現れた。
「キャァアアアアアアアア!!!」
「凛世!」
前に立っていた自分をスルーし、その牙が凛世に襲い掛かる。一瞬遅れて遊馬も追いかける。