ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第230話

 ガタンガタンと大きな音を立てながら凛世は走り、その後をクリーチャーは追っている。そのクリーチャーの足の速いこと、あっという間に凛世に追い付く。

 

 「いやぁあああああ!!!」

 「凛世!くそっ!」

 

 捕えた凛世にもあの舌を突き付けるつもりか。同じく走って追い付いた遊馬は、錆びて外れかかった手すりをもぎ取ると、クリーチャーの背を殴りつける。

 

 「このっ!このぉっ!!」

 

 まるでゴムのタイヤを叩いているかのような弾力の感触だけが返ってくる。これが伝説の剣ならきっと一撃で屠っていたことだろうが、こんな頼りない鉄パイプでは倒し切ることは無理だ。

 

 (イベント戦闘なら河に落として終わるところだけど・・・。)

 

 水落ちは戦闘回避のセオリーというもの。おそらくこのクリーチャーは物理攻撃で倒すことも難しいタイプ。銃があっても効くかどうかわからない。

 

 「ととっ!?うおっ!」

 

 突然、遊馬は足になにかが巻き付くと、それに引っ張られて転倒する。見ればあの蛇のような尻尾に掴まれている。

 

 「くそっ、離せ!ぐあっ!」

 

 振り返ったクリーチャーは、遊馬の足に舌を突き立てた。刺された痛みと、また何かを吸い取られるかのような感覚に身を焼かれる。

 

 「このっ!この!」

 

 鉄パイプで顔を叩くとようやく舌を離した。

 

 「遊馬・・・!」

 「凛世・・・、ゆっくり逃げろ。」

 「え?」

 「こいつ、大きな音か、動くものに反応してる。」

 

 大きな瞳を持っている以上、全く目が利かないわけではないだろう。だが最初に遭遇したとき、ゆっくりと動く遊馬には反応していなかった。

 

 事実、また走って逃げようとしていた凛世の方にクリーチャーの意識は移ろいでいた。

 

 「ゆっくりだ、クマと遭遇した時のように目線を外さずにゆっくりと後ずされ。」

 「う、うん・・・。」

 

 遊馬は鉄パイプでまだ抵抗するが、クリーチャーは尻尾を離さない。それどころか、抵抗すればするほど足への締め付けは強くなる。だが、そうしている間に、凛世の姿は徐々に霧の中へと消えていく。

 

 その様子をじっと見ているのか、探っているのか、クリーチャーは動かない。やはりゆっくりとした動きをされると『見えない』のか。

 

 しびれを切らしたのか、クリーチャーは遊馬を尻尾で掴んだまま、金網の道の上を引きづる。このままではザラザラとした地面でもみじおろしにされてしまうと、遊馬はそれは嫌だと手すりの足元に掴まって抵抗する。

 

 ひどく邪魔くさそうにクリーチャーは振り返るが、それでも遊馬を置いて走りだそうとはしない。二兎を追う者は一兎をも得ずという諺は知らないようだが、それが遊馬には助かった。

 

 (上手く逃げろよ凛世・・・。)

 

 静かで、過酷な我慢比べの始まりだった。

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