ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

249 / 307
第243話

 「それで助かるん?」

 「わからん、けどやってみる価値はある!」

 「ホンマか?」

 「ホンマや。」

 

 嘘である。いいとこイタチの最後っ屁程度、雀の涙のような反抗に過ぎない。が、おかげで凛世は正気を取り戻した。狂ったまま死んだ方がマシだったと後悔させるかもしれないが、こうもうるさくされてはかなわんし。

 

 もう少しでトンネルを抜ける。躊躇している暇もない。凛世がサンルーフを開けると、猛烈な風が入ってくる。

 

 「えっと、これを擦ればええんやったな・・・。」

 「合図したら後ろに投げて。」

 「う、うん・・・。」

 

 やることは単純、発炎筒を投げつけて目くらましさせる。クリーチャーと同じ性質があるとすれば、動く相手や音に反応しているはずだ。スタングレネードでもあればもっとよかっただろうが、贅沢も言ってられない。

 

 「な、なあ遊馬?」

 「何?」

 「失敗しても・・・何に言わへん?」

 「言わへん言わへん。」

 

 やけにしおらしくなった凛世をなだめると、いよいよその時が近づいてくる。

 

 「準備はいいか!」

 「おう!」

 「3・・・2・・・1・・・!」

 「それっ!」

 

 精一杯凛世は腕を振るってサンルーフから発炎筒を投げつける。

 

 結論から言ってしまうと、発炎筒はなの効果も見せなかった。怪獣の目どころか、縦に大きく避けた口の中へシュートインしてしまった。

 

 「アカーン!」

 「気にするな。こういう時のプランBだ。」

 

 一応、クリーチャーが水に弱かったことを鑑みて、スプリンクラーが発炎筒で誤作動することを期待していたのだが。こんな小さな炎では作動しなかったらしい。

 

 「プランBって?」

 「シートベルト締めてしっかり掴まっておくこと!」

 

 プランBもごく単純。カーブでヤツを振り落とすことだ。勿論遊馬にはそんな高度なドラテクは無い。つまり、こっちも失敗すること前提のようなプランだった。

 

 「覚悟決めろよぉ!」

 「おーっす!」

 

 オレンジの世界から、白く明るい世界へと出た。霧で何も見えないが、緩やかなカーブに沿ったガードレールが見えた。

 

 「・・・っ!!やっぱ無理ぃ!!」

 「おまちょっ!!」

 

 ガリガリとガードレールにこすりながら、緩やかな弧を描く。その間にあっという間に怪獣に追い付かれる。

 

 「来た来た来たきた!」

 「ハンドルを右に!!」

 

 大口が迫ってくるのでハンドルを切った。切りすぎて奇跡的に後ろを向きながら躱してしまったが、もうこうなったら破れかぶれだ。

 

 「トンネルに戻る!」

 「戻ってどうすんねん?!」

 「非常口だ!」

 

 高速道路のトンネル内にある、やけに目立つセーフゾーンと非常口。まさかあそこにまでこの巨体は入ってこれないだろう。上り坂の道を再び上がる。

 

 「くっ、パワー、スピードが上がらん!」

 

 ここにきてようやく怪獣の全身が見えた。クリーチャーの犬のような体形というよりは、ワニのような這った姿勢をしている。これならたしかにまいトンネルの中にも潜り込めるだろう。

 

 だが、長い体というのは振り返るのにも手間取るはず。少々スピードが落ちたものの、距離を稼ぐことはできた。

 

 「見えた!非常口!」

 「よし!・・・ってブレーキが利かない!」

 

 こういう時はギアチェンジしたりサイドブレーキを使ったりすればいいが、ペーパードライバーどころか無免許な遊馬にはそんな判断も出来るはずもなく、一切減速せずに非常口近くの退避エリアに突っ込んだ。

 

 「わぁああああああ!!」

 

 しかし、2人は無事だった。シートベルトとエアバッグが、己の命を守ってくれたのだ。

 

 「うぅ・・・遊馬、ほら逃げよ!」

 「そうか、そうだな・・・。」

 

 なにはともあれ、いい位置で止まってくれた。脱出口の扉はすぐそこにある。車から這い出て、もう数歩歩けば安全地帯だ。

 

 「来た、来たで!」

 「くっ・・・むっ、この臭いは?」

 

 こちらが止まったことで、怪獣はこちらを見失ったようだが、じきにこちらを見つけることだろう。

 

 それよりも気になったのが、鼻を突く臭い。どうやら壊れた車からガソリンが漏れているらしい。

 

 「そうだ、凛世ライターまだ持ってる?」

 「えっ、あるけど?」

 「貸して!」

 

 借りたところでもう返せないが、そんなことは関係ない。

 

 「ガスは残ってないけど、引火ならしてくれるハズ!」

 「なにすんの?」

 「火ぃつけるの!先に行ってて!」

 

 カチャカチャと火打石を削って火花を散らす。引火して巻き込まれるのは怖いが、それ以上の死だすぐそこまで迫っている。

 

 「あー!発炎筒をこっちに使えばよかった!」

 

 そうこうしているうちに遊馬の眼前が突如明るくなった。上手く火の手があがり、爆炎とも呼ぶべき勢いで今まで乗っていた車を包み込む。

 

 「あちゃちゃちゃちゃ!!」

 

 トンネル内で火災が発生した。となれば、当然防火装置が作動する。スプリンクラーである。

 

 「ひぃ・・・ひぃ・・・けどすごい勢いだ・・・。」

 

 遊馬の服の袖が燃えたが、それをかき消すほどの水が噴出する。まるで夕立のような勢いの水勢が、怪獣の体を溶かしていく。

 

 「はぁ・・・やった・・・。」

 

 ともかく、再び難を乗り切った。気のせいではなく重たくなった体を引きづりながら、凛世の後を追って扉をくぐる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。