ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
「それで助かるん?」
「わからん、けどやってみる価値はある!」
「ホンマか?」
「ホンマや。」
嘘である。いいとこイタチの最後っ屁程度、雀の涙のような反抗に過ぎない。が、おかげで凛世は正気を取り戻した。狂ったまま死んだ方がマシだったと後悔させるかもしれないが、こうもうるさくされてはかなわんし。
もう少しでトンネルを抜ける。躊躇している暇もない。凛世がサンルーフを開けると、猛烈な風が入ってくる。
「えっと、これを擦ればええんやったな・・・。」
「合図したら後ろに投げて。」
「う、うん・・・。」
やることは単純、発炎筒を投げつけて目くらましさせる。クリーチャーと同じ性質があるとすれば、動く相手や音に反応しているはずだ。スタングレネードでもあればもっとよかっただろうが、贅沢も言ってられない。
「な、なあ遊馬?」
「何?」
「失敗しても・・・何に言わへん?」
「言わへん言わへん。」
やけにしおらしくなった凛世をなだめると、いよいよその時が近づいてくる。
「準備はいいか!」
「おう!」
「3・・・2・・・1・・・!」
「それっ!」
精一杯凛世は腕を振るってサンルーフから発炎筒を投げつける。
結論から言ってしまうと、発炎筒はなの効果も見せなかった。怪獣の目どころか、縦に大きく避けた口の中へシュートインしてしまった。
「アカーン!」
「気にするな。こういう時のプランBだ。」
一応、クリーチャーが水に弱かったことを鑑みて、スプリンクラーが発炎筒で誤作動することを期待していたのだが。こんな小さな炎では作動しなかったらしい。
「プランBって?」
「シートベルト締めてしっかり掴まっておくこと!」
プランBもごく単純。カーブでヤツを振り落とすことだ。勿論遊馬にはそんな高度なドラテクは無い。つまり、こっちも失敗すること前提のようなプランだった。
「覚悟決めろよぉ!」
「おーっす!」
オレンジの世界から、白く明るい世界へと出た。霧で何も見えないが、緩やかなカーブに沿ったガードレールが見えた。
「・・・っ!!やっぱ無理ぃ!!」
「おまちょっ!!」
ガリガリとガードレールにこすりながら、緩やかな弧を描く。その間にあっという間に怪獣に追い付かれる。
「来た来た来たきた!」
「ハンドルを右に!!」
大口が迫ってくるのでハンドルを切った。切りすぎて奇跡的に後ろを向きながら躱してしまったが、もうこうなったら破れかぶれだ。
「トンネルに戻る!」
「戻ってどうすんねん?!」
「非常口だ!」
高速道路のトンネル内にある、やけに目立つセーフゾーンと非常口。まさかあそこにまでこの巨体は入ってこれないだろう。上り坂の道を再び上がる。
「くっ、パワー、スピードが上がらん!」
ここにきてようやく怪獣の全身が見えた。クリーチャーの犬のような体形というよりは、ワニのような這った姿勢をしている。これならたしかにまいトンネルの中にも潜り込めるだろう。
だが、長い体というのは振り返るのにも手間取るはず。少々スピードが落ちたものの、距離を稼ぐことはできた。
「見えた!非常口!」
「よし!・・・ってブレーキが利かない!」
こういう時はギアチェンジしたりサイドブレーキを使ったりすればいいが、ペーパードライバーどころか無免許な遊馬にはそんな判断も出来るはずもなく、一切減速せずに非常口近くの退避エリアに突っ込んだ。
「わぁああああああ!!」
しかし、2人は無事だった。シートベルトとエアバッグが、己の命を守ってくれたのだ。
「うぅ・・・遊馬、ほら逃げよ!」
「そうか、そうだな・・・。」
なにはともあれ、いい位置で止まってくれた。脱出口の扉はすぐそこにある。車から這い出て、もう数歩歩けば安全地帯だ。
「来た、来たで!」
「くっ・・・むっ、この臭いは?」
こちらが止まったことで、怪獣はこちらを見失ったようだが、じきにこちらを見つけることだろう。
それよりも気になったのが、鼻を突く臭い。どうやら壊れた車からガソリンが漏れているらしい。
「そうだ、凛世ライターまだ持ってる?」
「えっ、あるけど?」
「貸して!」
借りたところでもう返せないが、そんなことは関係ない。
「ガスは残ってないけど、引火ならしてくれるハズ!」
「なにすんの?」
「火ぃつけるの!先に行ってて!」
カチャカチャと火打石を削って火花を散らす。引火して巻き込まれるのは怖いが、それ以上の死だすぐそこまで迫っている。
「あー!発炎筒をこっちに使えばよかった!」
そうこうしているうちに遊馬の眼前が突如明るくなった。上手く火の手があがり、爆炎とも呼ぶべき勢いで今まで乗っていた車を包み込む。
「あちゃちゃちゃちゃ!!」
トンネル内で火災が発生した。となれば、当然防火装置が作動する。スプリンクラーである。
「ひぃ・・・ひぃ・・・けどすごい勢いだ・・・。」
遊馬の服の袖が燃えたが、それをかき消すほどの水が噴出する。まるで夕立のような勢いの水勢が、怪獣の体を溶かしていく。
「はぁ・・・やった・・・。」
ともかく、再び難を乗り切った。気のせいではなく重たくなった体を引きづりながら、凛世の後を追って扉をくぐる。