ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
「遊馬ちゃん行っちゃうの?」
「はい、お世話になりました。水の常備をお忘れなく。」
「まあ止めはしないが、気ぃつけてな。」
「これ、よかったらあっためて食べてね。」
餞別にお母さんからお弁当をもらい、裏口からそっと須藤家を後にする。路地裏から一歩出た先の表通りは、やはりしんと静まり返っている。
住民は皆この異様な雰囲気を気味悪がって引きこもっているのだろう。そしてそれは正しい判断であった。霧が広がっているということはすなわちクリーチャーがうようよしているということ。こういう雰囲気のゲームもあったなと遊馬は思い出していた。
「遊馬ー。」
「凛世?」
さて、と歩き出そうとしたところで自分を呼ぶ声が聞こえて振りかえる。
「やっぱウチも手伝うわ!」
「家にいろって言ったのに。」
「ウチかて同じ体験をしたんやで?なら遊馬と一緒のことせなおかしいやん!」
「別におかしくはないと思うが。」
再三止めた、これ以上強く行っても無駄か。それどころか、勝手についてきて知らないところで襲われたりしても困る。ならば連れていく方がいいか。
「しょうがないなぁ。」
「しょうがないってなんや、手伝うゆーてるのに。」
「頼んではいないから。けど、ありがと。」
「よろしい。」
なんで偉そうなのか。ま、いつもの調子にもどったというところか。停めておいた車のところまで戻る。
「後部座席にいつの間にか潜り込んできたゾンビは潜んでない?」
「いない!」
この車もどうしたものか。サービスエリアでグランドセフトオートしてきた車だが、元の持ち主も多分死んでるだろうし文句を言われることもないだろうか。正直言ってそんなに趣味じゃないから愛着もわかないし、せいぜい壊れるまで使い潰すとしようか。
「それにしても、1日の内に2台も乗り継ぐなんて珍しいな。」
「壊すと面倒やで。」
そういえば最初に乗っていた、遊馬の家にあった車はいつ買った物だったんだろうか。ローンは?保険は?
「到着っ、と。」
「カギ開けてくるわ。」
「頼む。」
などと、くだらないことを考えているうちにつつがなく遊馬の自宅へと戻ってきた。昨日破壊した車庫もそのままだ。
「・・・やっぱ外になんか出るもんじゃないな。」
車のエンジンを切り、周囲を軽く見回すと一人ごちる。だがこれからは嫌でも引きこもり生活になりそうで胸が高鳴ってくる気分だ。
「遊馬ー!家の中無事やで!」
「わかったー、今行くー!」
それに、これからはしばらくは1人でもない。凛世と一つ屋根の下・・・特にドキドキしたりはしない。
「なんか言うた?」
「なんにも。」
「助兵衛。」
「なんも考えてないっての。」