ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
このままどうなるのか。そんな形が無く漠然としながらも確かな不安が、この霧の中にはあった。
『今、霧の向こうから避難してきた人が保護されました』
この事態から逃げ出す者がいた。いたって正常な反応と言えた。
『現在、行方不明者、連絡の取れなくなっている人は300人を越えており・・・』
おそらくは犠牲になった者がいた。これからまだ増えるかもしれない。
『この未曽有の事態に、政府は在日米軍への協力を・・・』
この事態をなんとかしようとする者がいた。だが答えは見えない。
誰もが『今』に怯え、未来を見いだせないままでいた。
「よしゃー、ボス撃破ー!」
「お疲れ。」
そしてここに我関せずとゲームを楽しむ者たちがいた。
「いやー・・・まさかダメージを反射されるとは思わへんかったわ。」
「まあ、今のは初見殺しだったね。」
「あやうくしょっぱなから全滅するところやったで。」
《リカバリーも上手くなったね》
《もう終盤だし》
凛世はレベル8のダンジョンをクリアした。ここまで様々な苦難、艱難辛苦があったが、それらを凛世は1人でクリアしてきていた。
「遊馬のいうアドバイスはあんまアテにでけへんし。」
「そこまで言う?」
「ちょろちょろしてて逆にキモチワルイわ。」
《さすがリンちゃん》
《歪みねえな》
ゲームの中のリンも、現実でプレイしている凛世も成長したように見える。背が伸びたとかではなく、精神的に大きくなった。
「体重は増えたかもしれんが。」
「殴るで。」
「殴ってから言うな。」
ともかく、次の次がいよいよラストダンジョンとなるのだが、次のマップは一筋縄ではいかない。
ダンジョンから一歩出たときリンの視界が暗くなっていき、気が付いたときには見知らぬマップが広がっていた。
「え、なんなんこのマップ。」
「ここからしばらくは一人で歩くんだよ。」
「マジ?回復役もおらんやん。」
今、リンはゲームの中で地球最強の存在になったと言っていい。そんなリンの相手は、リンの精神そのものだった。リンは自分自身の内面世界へと入り込む。
そこには様々な倒してきた敵たち、共に戦ってきた仲間たちが『思い出』となって存在している。
『あのときは おれがわるかったと おもうよ・・・』
『あんたに あえて よかったよ』
『おれは あんたを ゆるせない』
『リン は わたしのこと すき?』
『こういうのを せけんでは しかたがないこと っていうんだろうな』
このメッセージそのものは、ゲームの進行にはなんら関係がない。ただのテキストでしかない。
「こんなんおったなぁ。」
ゲームを始めた当初ならばスルーしていただろうこのNPCとの会話を、ただただ凛世は隅々まで、一人ひとり聞いて回っていた。
そして戦闘パート。仲間に助けられていたリンだったが、今は1人ぼっち。しかし覚えた様々な超能力やスキルを使う事で、なんら苦労することは無い。
そして、第一のダンジョン・最初の街を模した最深部において、『それ』と相対する。
『リン に ゆくてをふさがれた!』
リンの原点、拭え得ぬトラウマ、幼少のころの原風景である。
「おっしゃ、ぶっ飛ばしたるわ・・・ってああああああああ!!またかい!」
「まあ、そうなるわな。」
リンは必殺の技を放ったが、容易く無効化されてダメージが反射される。そしてリンの反撃、『正体不明』の攻撃でライフを大きく削られてしまう。慌てて回復アイテムを使って立ちなおす。
「どうすんのこれ?」
「自分で考えて。僕のアドバイスは役に立たないそうだから。」
「ちょっ、謝るから!」
《いや、ここは自力で解いてほしいかな》
《リンちゃんは気付けるかな》
「気づく?なにを?」
しばらく凛世はガードをしたり状態異常技を試みてみるが、結果は芳しくない。
「うーん?」
「・・・。」
「すごいヒント出したそうな顔してんな。」
「うん、すごい言いたい。」
「言ってええねんで?」
「ダメ。」
正直、遊馬もここで少し詰んだのでじっくりと凛世には考えてほしい。
「なんかアイテムを使うとか?」
《おっ》
アイテム欄の一番上、最初期に手に入れていたアイテム。『ほしのかけら』があった。
「これやろ!」
リンはほしのかけらをリンにかざした!しかし、なにもおこらなかった。
「おしい、非常に惜しい。」
「えー・・・。」
遊馬のニヤニヤが高まってきた。
「うーん・・・あっ!」
ほしのかけらを選んだ凛世は、リン以外にも使える対象がいることに気が付いた。
『リンは ほしのかけらを リンのかげに なげつけた!』
ほしのかけらから放たれた光が、過去のリンから伸びた影を照らす。表示されているアイコンに隠されているのが真の敵というトリックだ。
『リンのあくむ がしょうたいをあらわした!』
リンの悪夢、あの頃のトラウマや戦ってきた敵たちが背景を流れていく。まるで世界そのものと戦っているかのような状況だ。
「よーし!倒したる!」
ここまで来ればもう簡単だ。悪夢という決して決まった形のないものが、今そこにある。だが形があるということは殴れるということなのだ。