ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
鏡の中の自分を見たら、アイデンティティの危機だ。ゲシュタルト崩壊というやつだろう。
「いや、え?なんで僕がいるの?というか、僕なの?」
『僕は僕だよ。それは僕がよく知っている。・・・そうだよね?』
『俺に聞くな』
とにかく遊馬には不可解で不愉快だった。仲間たちの輪の中の、自分がいるべき場所に自分じゃない存在がいる。
「君は・・・言い方悪いけど僕の偽物?」
『いや、そんなこと言われてもな・・・』
『まあまあアスマ、長く生きてればもう一人の自分と出会うこともまああることだよ。』
「そんな状況トビーぐらいにしかありえないよ。」
『まあね、経験はある。だから先輩として落ち着けって言いたいんだ』
剣呑とした空気になってきたのを、トビーは取り持った。トビーの原作からして、こういうことには慣れっこなんだろう。
『でだ、とりあえずそっちでは何があったか教えてくれないかな?』
「うん、こっちは大変だった。」
それからまず遊馬は、自分の周囲で起こっている状況をひとつずつ説明をし始めた。
霧のこと、怪物のこと、そして半抜きバグをした瞬間から意識が途切れて今の世界にいるということ。
「と、言うわけなんだけど。」
『そっちではガールフレンドなんかできたのか』
『でも半抜きバグって・・・』
『大分前の事ですわね』
「大分って、どれぐらい?」
『・・・半年?』
「半年?」
『とにかくいっぱい。』
ゲーム世界では時間の概念があやふやだったので、半年というのがどれぐらい前のことなのか定かではない。が、間違いなく遊馬が経験した『一週間程度』とは相いれない時間の流れ方をしているのだろう。
「じゃ、じゃあそっちの半年は何やってたの?」
『んまあ、色々かな?』
「月は?」
『月はもう行った。大変だった』
「じゃあ、家にあったゲームトロフィーは?」
『今トロフィーを使って話をしてる。というか、トロフィーを使っていろんなゲームの世界を楽しんできた』
「なにそれ、面白そう。」
まるで浦島太郎にでもなったかのような気分だった。あたかも遊馬は世界や仲間たちから『取り残された』ような状態じゃないか。
『簡単に言うと、このトロフィーは世界を渡るゲートのような役割になっていたんだ。』
「こっちも、トロフィーでやってたゲームをクリアした途端につながった・・・。」
『つまりは、そういうことなんだろう』
理屈じゃなくて直感でそういうものだとはわかる。
「じゃあ、そっちにいる僕は一体誰なの?僕は、誰なの?」
『並行世界の同一人物・・・そっちの世界のアスマなんだろうねキミは』
「でもこの記憶は本物だろう?トビーやモンドたちと一緒に冒険をした記憶だってある!」
『多分だけど、半抜きバグで
「記憶、だけ・・・?」
『逆に聞くけどよ、お前はあの瞬間の記憶あるのかよ?』
「・・・ない。」
確かに、『半抜きバグをした』という記憶はあるけど、その瞬間に何をしたのか、具体的な記憶はない。
『正解を言うけど、こっちは『何も起こらなかった』。失敗したのかと思って今の今まで存在を忘れてたぐらいだ』
『けど、実際は成功していた。知らないところで、僕の記憶だけが飛び散って、並行世界の僕に『上書き』された・・・ってこと?』
さぁっと血の気が引いていく思いだった。つきつけられた真実を拒むどころか、むしろ合点がいった。世界が変わってしまったのではなく、遊馬の記憶だけがはじき出されたのだ。