ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第272話

 『ん、生体センサーに反応アリ』

 「え、どこから?上?下?」

 『・・・囲まれてる!』

 

 センサーが真っ赤に染まり、危険を告げる。反射的に遊馬はペダルを踏みこんで機体を上昇させる。

 

 果たしてその判断は正しかった。獰猛な牙の這えた大顎が、さっきまでダークリリィのいた場所を覆いつくすようにかぶりついてきたのだから。

 

 「で、でかい!」

 『たしかにデカいが』

 『単純な大きさだけではそこまで驚かんなぁ』

 「あんたら一体何と戦ってきたの・・・。」

 

 ともかく、大顎から逃れるように上昇を続ける。霧は地上付近を停滞しているため、そのうち視界も開けてくることだろう。

 

 『奴はおそらく、霧そのものが一個の生命体なんだろう』

 「それはなんとなくわかってた。けど、このタイミングで?」

 『本体と接続が切れて焦ったんだろう、というかこちらの意図には全然気づいていなかったようにも思える』

 

 つまり、霧の中から現れていたのも、霧が実体を持って具現化していたからに過ぎないということだ。

 

 今まで一切の苦労を見せずに快進撃が続けられていたのが、ここにきて一瞬のうちに状況を覆されたのだったらそれは驚くだろう。

 

 『そこまで知能があるようには見えないけど』

 「とにかく、今はどうすればいい?」

 『霧から抜けろ、まずはそれからだ』

 

 霧の中にいるということは、敵の体内にいるのも同じ。じっくりとなぶり消化されるのを待つだけになる。一寸法師だって鬼の体内からスタートするだから。

 

 「っとぉ、もう充分かな。」

 

 月明りと星の瞬きだけが光源の世界にまで戻ってくる。振り返れば白い霧が水面のように漂っているが、うねりながら徐々に形を変えようとしていっているのが見えた。

 

 「で、どうやって倒す?」

 『こうなると水をかけるだけじゃ根本的な解決になりそうにない』

 『とりあえず撃つか』

 「実弾が効くの?」

 『メーザーだ』

 

 メーザー、つまりはマイクロ波とは水分子を発振させて熱に変える性質がある。水分を多く含んだ生物にはもちろん効く。

 

 『性質が霧に近いということは、性質が水に近いということだ』

 「そうか!」

 

 コンソールの画面から武器を選択する。パラボラアンテナのようなものがついたメーザーキャノンがダークリリィの手の中に出現する。

 

 「喰らいやがれ!」

 

 パラボラから発せられる青白い光が当たった霧が、爆発して文字通り霧散していく。

 

 「効いてる、のかな?」

 『ゲームならわかりやすくエフェクトが出るんだけどなぁ』

 『生体反応は弱まってる』

 

 ならば効いているという事だ。再び危機を感じたらしい霧は形を持ち、怪物の口と首を現した。

 

 「ようやくわかりやすいボス戦になってきたな!」

 『調子に乗るなよ』


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