ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第273話

 まるで海の中から首長竜が顔を出しているかのように、霧の中から怪物が首を伸ばしている。月光と相まってなかなかいい雰囲気を醸し出している。

 

 「メーザーで焼いてやる!」

 

 いくらデカい顔をしていようが、今の遊馬にはちっとも怖くない。パラボラから発されたメーザーで、あっけなく首は爆発四散する。

 

 しかしどうだろう爆裂した傷口からジュクジュクと再生が始まると、またたくまに首が元通りどころか4つに増えたのだ。

 

 「ならば、一頭一頭ぷちぷちと潰して・・・。」

 『そんなことやってる時間があるのか?』

 「あっそうだゲームPODの電池が・・・。」

 

 チラッとコンソールに埋め込まれたゲームPODネクスを見やると、電池残量が目に見えて減っていた。まだ2時間はもつはずだったのに。

 

 「メーザーを使ったせい?」

 『本体のバッテリーが劣化していたのかもしれない』

 『あと半分ってところか』

 

 押せ押せだったはずなのに急に追い込まれた気分だ。バッテリーはもって1時間というところか。それまでにこいつをなんとかして、帰還しなければならない。それには一匹一匹這い出てきたところを潰しているなんてチンタラした真似は出来ない。

 

 「ソッコーでカタをつけないと、どうすればいい?」

 『そもそも霧を倒すなんて、難しい話だな』

 『映画ではどうやって解決したんだよそもそも』

 「なんかいつの間にか終わってたって感じで、具体的にどうやってたのかはわかんない。」

 『作者もそこまで考えてなかったんだろうな』

 

 そもそも霧というのは、寒さによって空気中の水分が結露したようなもの。日の光が差し込んで温かくなれば自然と消えていくはずなのだ。

 

 『もっと根本的に、核を撃ち抜くようにしないと・・・』

 『中心部をか』

 「おっと!」

 

 そうこう作戦会議している間にも怪物は攻撃してくる。それぞれの口が舌を伸ばして突き刺してこようとするが、そんな直線的な攻撃にあたるダークリリィではない。するするとその隙間を舞うように潜り抜ける。

 

 「固結びにして引っこ抜いてやろうか。」

 『引っこ抜く・・・そうだ、トラクタービームで引っこ抜くか』

 「面白そうだな!乗った!」

 

 つまりはクラックを閉じた時の応用だ。次元すら歪めて引っ張れるトラクタービームならば、首を引っこ抜くなんてことも容易い。

 

 『グレネードランチャーの3号弾の膠着弾を使ってやるんだ』

 「固めて・・・引っこ抜く!」

 

 複雑な機械の操作は何もいらない。コンソールに命令を下せば機械の設定は自動でやってくれるし、あとはトリガーを引くだけでいい。

 

 「うわっ、思ったよりも首が長い!」

 『そのまま宇宙まで運んでやれ』

 「よーし!」

 

 ずるり、とトラクタービームに引っ張られた首が、後から後から継ぎ足されるように伸びていくが伸びる。あたかも蛇の尾を掴んで藪から引っ張り出しているようだ。

 

 「おっ、霧が地上から全部吸い尽くされたようだぞ。」

 『首だけ切り離せば全体は助かったものを』

 『遊馬、やっちまえ』

 

 そのまま天に昇る竜のように、夜空を突っ切って飛ぶ。目指すは真空の世界、宇宙。

 

 「一体どんな世界からやってきたのか知らないけど、この世界を選んだのは間違いだったな。」

 『ちょっと僕らは、ダークリリィは強くなりすぎたようだね』 

 

 北欧神話に登場するヨルムンガンドとでも形容すればいいか、それほどにまで巨大になった霧の怪物は、地上を離れること500kmで放り投げられる。

 

 そしてダークリリィの構えるメーザーキャノンの照準に収まった直後、宇宙を漂う塵よりも細かく粉砕されたのだった。


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