ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
「障害物なし、進路クリアー。」
「よし、Zポイントに突入するぞ。」
「了解、波動エネルギーの流速反転。」
ヴァイスターはフォースフィールドを展開しながら次元の裂け目へと突入する。
『マニュピレーターとセンサーに異常なし・・・っと。』
もう何度もクラックをくぐってきたが、今回も特に支障もなく『世界の外側』へと到達する。
そこは宇宙と同じく空気も重力もない、ひたすらに『無』が広がっており、また異なる宇宙が細胞分裂のように生まれて浮かんでは、弾けて消えている。これが平行世界の発生と収斂らしい。
しかしすぐ後ろのゲーム世界と、目の前にある最も近い世界だけは、モザイクがかったかのように不透明で、分裂も弾けもせずに沈黙している。
イレギュラーによって誕生したゲーム世界は止まっていて正しい。だが、目の前の『現実世界』もまたポーズボタンを押したように止まってしまっている。動き出させるには、もう一度ポーズボタンを押さなければいけない。
『さて、目的の地点は。』
「波動係数を測定、11時方向、約0.2au。」
「了解。」
「トラクタービーコン、問題なく稼働中。」
『ん、よしなに。』
「お前はリラックスしすぎ。」
「リラックスしていてくれないと困るけどね。」
「大一番でヘマしないでくださいまし?」
『よいよい。』
「あー、酔ってるなこいつ。」
「宇宙酔いですの?」
「ワープ酔いかな。」
遊馬は緊張しすぎてハイになっていた。
『どうしよう、手が震えてきた。』
「今更だろ。」
「腹くくってください。」
「墜落したくなければ、手の力を抜かず、下を見ないことだよ。」
この土壇場になって狼狽えだすのは今に始まったことではないので、仲間たちも塩対応する。
「遊馬、逆に考えてみてごらん。」
『逆?』
「こんなにたくさんの『世界』がある。そのうちたった一つを救うだけだ。」
「案外、俺たちの見ていた世界もずっと狭いんだな。」
「そ、それこそポケットに収まるぐらい小さな夢のように。遊馬がいつもやっていて、すごく好きなことのようだとは思わない?」
ゲームか、そういわれてみればそうかもしれない。世界の命運だの、平和だのという話は、どこまで遊馬には遠い話だったのかもしれない。
けど、今までもそんな遠い話を、まるでなんでもないことかのようにやり遂げてきていたじゃないか。何を恐れることがあろうか。むしろ、未知のイベントが起こるんじゃないかとワクワクするべきだった。
「まもなく目的地点。」
「了解。さ、最後の大勝負といこうじゃないか。」
『ふ、ふん。またまた遊馬さんは神プレイを炸裂させてしまうのかな?』
「魅せてちょうだいな。」
『これより、最終作戦『神の親指』を発動する。』