ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
「劇場についたぞ。」
無人も無人、オービタルの中には敵の姿もない。ラストランに敵が出てこられて、うっかり全滅してフリーズしたりしたら目も当てられないが。
もっとも、死ぬべきではないところで殺すのはプレイヤーもゲームマスターもしらけてしまうというもの。そういう無粋なことをしてくる人物に心当たりがあることは推して知るべし。
「中にはダークリリィでは入れそうにないな。」
「ここでいったんお別れだね。」
ゲームPODネクスを手に取りながらふーんと少し感傷に浸ったところで、遊馬は何か嫌な予感がしてきていた。ボス戦を前にして武器弾薬を補充するときの感覚にも似ていた。今回は逆に武装解除させられているわけだが。
「いやいや、壊すだけでいいんだから中に入る必要がどこにある?」
「何をいまさら。」
「むしろお前こそこういう時『中もちゃんと見ていこうよ』とかいうもんだと思ったがな。ゲーマーの癖かなんかで。」
「あー今確信した。中入ったら十中八九イベントが起こるよ。」
「逆に聞くけどアスマはイベントスルーしてクリアしたい?」
「したくない。」
「じゃあ入ろうか。」
どうやらここも分岐点らしい。中に入ってイベントをこなせばトゥルーエンド、『なんだっていい、ゲームを終わらせるチャンスだ!』とぶっ壊せばバッドにはならないにしろビターエンドどまりといったところか。
この期に及んで相対する『敵』の存在に見当がつかないが、まあいいだろう。
しかして、劇場内には誰かいた。
「雄二?」
そこには、別れる前のあの雄二の姿・・・黒衣を纏った復讐鬼があった。
「テメェ、死んだはずじゃ。」
「死んださ、20年前に。」
「あの光の中から、よく助かったね。」
「助かっていない。俺もエルザも、『また』死んだ。」
雄二とエルザ・カサブランカは、現実世界で窮地に陥ったダークリリィと彼らの娘・イングリッドを救うために、宇宙の塵のひとつとなったはずだった。
「じゃあキミは幽霊?」
「現実を呪い、憑りつき続けているという点では幽霊とさして変わらない。」
「OK、『また』なんだね。」
トビーは早々に理解した様子で天を仰ぐ。ここには照明の消えた暗い天井と、白い百合の咲き誇る風景だけを映写し続けるスクリーンしかないが。
「まさか、雄二たちも最後の現実改変に乗るつもりなの?」
「お前たちが、『向こう側』の特異点を破壊したことで、『こちら側』にその権利が移った。そのおかげで、俺たちもまた再召喚された。」