ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
「お前は、新しい世界に何を望む?」
言葉短くモンドが問う。その手は武器を握りたそうに懐に突っ込んでいる。
「理不尽を憎まずにいられる世界。」
怒気を籠めて低く静かに力強く雄二は言い放った。復讐鬼の仮面は表情を崩さないが、その下には激情が浮かんでいることは容易に想像できる。
「理不尽だと?」
「力を持つ誰かの悪意によって、自由も平和も愛も奪われてきた。そんな理不尽のない世界だ。」
火星をアダムが襲わなければ、エルザはカサブランカに改造されることもなかったし、地球人の身勝手な考えがなければ戦争に利用させられることもなかった。
「さらに言えば
「気持ちはわかる、がそれは・・・どうなんだ?」
「カサブランカという世界を創ったのは、脚本家だけではないはずだけど。」
「命を与えてくれたということは感謝している。だが、こんな苦しい現実を押し付けてきたのもクリエイターなんだよ!」
冷たい仮面から出てくる言葉は熱を帯びてきている。だが、雄二のその怒りを誰もが理解し、共感していた。
「お前たちもそうだろう?お前たちの浴びてきた悲しみも屈辱もすべて、『与えられた』ものなんだぞ?」
「けど・・・俺たちはそれを乗り越えられてきた。」
「誰もがお前たちのように強くはない。」
ここにいるのはみな力を持った『主人公』たちだ。しかし描写されていないところで、名前もないモブも大勢犠牲になった。
「神だのクリエイターだの、自分の都合で振り回されるのはもうたくさんだ。だから、俺たちは誰にも手出しされない世界を創る。」
「・・・自分たちの望む世界を創造する、それって結局アイツの思うつぼなんじゃ?」
「かもしれんな。」
片桐和馬は、遊馬に新しい世界を創らせることこそが最終目的だった。
「それってもしかして、『自分の子供』ならどれでもよかったんじゃないかな。」
「そうか、自分の『作品たち』もまた子供としてカウントされるってか。」
「僕は作品のひとつなんだな。」
「気を悪くしたなら謝るよ。」
「気にしてない。」
良くも悪くも、自分の作品を我が子と呼んでいることは芸術家気質と言えるかもしれない。が、肝心の血のつながった息子への対応を見るに、その愛が真実かどうかは疑問が残る。
「ま、とにかく折れるつもりはないんだね。」
「そうだ。むしろお前たちはなぜ、自分たちの望む世界を創ろうとしない?」
「そんなの決まってるじゃん。」
「アイツの手のひらの上で踊らされるのが気に食わないからですわ!」
「それだけ?」
「現実改変、そんなものなくたって人は生きていける。理不尽だって越えていけると信じている。」
「そうか、この話は平行線のまま交わりそうにないな。」
それに時間もない。時計を確認すれば、もうタイムリミットまで10分を切ろうとしている。
「なら、あとは戦うしかない。」
「ここで?」
「ここを荒らすわけにはいかない。カーテンコールを受けるまで、舞台の上から演じ続けなければいけない。」
雄二は、スクリーンの中に入っていく。
「行こう。」
「・・・けど本当に、戦うしかないんですの?」
「時間がないってことまで含めてヤツの計算ずくだったんだ。もう起動は止められない。というか、止めたらもっとひどいことが起こる。」
現実世界の『滅び』は必定だと言っていい。そのことは雄二たちも望むところではない。
「それに、世界を創り変えても、あの二人は救われない。あの二人だって仲間なんだから。」
「救えるのはボクらしかいないんじゃないかな?」
「仲間も世界も救う、実に主人公らしいじゃねえか。」
「そうですわね。」
「らぴ!」
遊馬たちはひるまない。今までどんな敵にも勝ってきた。それで今度は仲間と戦うんだ、なおさら背中を見せられない。
「行くぞ!」
「おう!」
一層気合の入った遊馬を先頭にスクリーンへと飛び込んでいく。