ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
キーンコーンカーンコーン・・・
「おや?チャイム?」
「授業の時間かな?」
無人の校舎にチャイムが鳴り響く。トビーの言うように授業の開始・・・というわけでもないだろう。
「何かイベントが進行したのかな?」
「マップには何が?」
「うーん・・・あっ、グラウンドに星がついてる。」
「行けってことか。」
いわゆる『どこ行くんだゲー』にあるような、行先に迷子になる要素もなさそうだ。
「その前に、アイテムを探していきませんこと?」
「そうだね、もしイベント戦闘だったら、戦力が低すぎるし。」
「俺の戦闘力を舐めていないか?」
「でも、キミ俊敏がたったの3しかなかったじゃないか。」
「これだと、ほぼ確実に最後の手番になるね。」
「ぐぬっ・・・。」
体力は確かに多いが、タンクになるには前に出てもらわなければ困る。行軍とは一番足の遅い者に合わせることを言う。
「これじゃあ、モンドに壁役になってもらうには、全員が1ターン『なにもしない』を選択して、敵のターンを凌いだうえで、それでやっとモンドに前に出てもらわなくちゃならない。」
2番目にHPの高いトビーでも100しかない。どの敵から、どの程度ダメージを受けるのかはまだわからないが、基本的にシミュレーションゲームで敵にターンを渡すのは危険だ。確実にイニシアチブを握るには、壁役の存在が不可欠だ。
「足が遅いのって、致命的なんだね。困ったことがないからわかんなかったや。」
「レッドパーカーはワイヤーでビルを渡るから、スピードが段違いだからね。」
「ですから、先に動けるわたくしやラッピーがアイテムを使えれば、戦力増強になると思うのですわ。」
「さすが知性19、なんて冷静で的確な判断力なんだ。」
「俊敏アップのアイテムがあるかもしれないし、決して悪い話じゃないと思うよ?」
「そういうことなら、早く行こうぜ。」
ようやっとモンドも納得したようだ。
「さて、そうと決まれば家探しだ!まずはこの食堂にある使えそうなものを集めてみよう。」
「使えそうなもの・・・。」
「回復アイテムなら食べ物系とか。」
「ハンバーガーあるといいな、マスタードたっぷりの。」
「それもうマスタードだけでいいんじゃないかな。」
「目つぶしにもなるしな。」
「そんなもったいない!」
しばらくして。
「集まったのはこんなもんか。」
・カロリーブレッド×5
・醤油
・塩
・ソース
・コショウ
・おいしい水×3
・キャラメル×1
・フライパン×1
「とりあえず調味料一式は元の場所に戻してこようか。」
「コショウは目つぶしに便利なんだけどね。」
「どっちだお前。もったいないって言ったり。」
実際レッドパーカーの投擲武器の中には『コショウ』がある。少量のダメージと目くらまし効果があるので、使おうと思えば終盤でも使える。
「カロリーブレッドね。なにこれ?」
「うーん、どのゲームにも出てこないアイテムだ。食べるとHPを少量回復するってさ。一人一個ずつと、前衛2人がもう一個持っていよう。」
「キャラメルは?」
「らぴ!」
「キャラメルは1回復。けど、ラッピーが食べると『ハンマー』が使えるようになるよ。」
「じゃあ、ラッピーに持たせましょう。」
ようやくラッピーが戦力になった。ハンマーは威力が高くて、ギミック攻略にも使う有用な能力だ。
「・・・お菓子って、使い捨てだよね。戦闘につき一回しか効果が出ないのかな?」
「えっと、原作では基本的に能力は捨てるまで保持してるんだけど。」
「じゃ、今のうちに使っておこうぜ。」
「でもダメージを受けると確率で落としちゃうんだよ。使いどころは見極めないと。」
「らっぴぃ!」
「もう食べちゃいましたわ。」
「もう!」
ラッピーは嬉々として格子模様のハンマーを掲げている。まあ、楽しそうならいいか。
「で、このフライパンっていうのは?」
「うーん・・・ボクの趣味ではないかな。」
「お嬢持っとけよ。」
「わたくし、箸より重い物は持たない主義ですの。」
「盾ぐらいにはなるだろうし、『装備』しておいたら?」
しぶしぶ美鈴はフライパンを『装備』した。女の子にはフライパンが似合う。
「では移動するぞ。」
「おー!」