ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
「最終決戦のフィールドが、まさかこことはね。」
遊馬たちの降り立ったこの花畑には見覚えがある。スタート地点の学園の、すぐそばにある花園だ、あそこに咲いていたのは黒いユリのような花だったが。あそこは一見すると黒い花以外には何もないように思えるが、実際に探しても何もなかった。せいぜい、レイの宇宙船のミステリーサークルがあったくらいか。
「ここの花は白いけど、いったい何なんだろうね。」
「ユリの仲間だとは思いますが、見たことのない品種ですわね。」
『この花はね。』
花の一本をまじまじと見ていた一行の背中から声が飛んでくる。ややノイズのかかった電子音声のような、くぐもった声だが聞き覚えがあった。
「おわっ、エルザいたの。」
「そりゃ雄二がいたんだからエルザもいるんだろうけど。」
黒装束の雄二とは打って変わった、純白のドレスを纏ったエルザがそこにいた。
『この花はね、私たちが火星で作った品種の花なの。』
「それって、エルザたちが地球に持ち帰りたかったっていう。」
『そう。けどそれは赤い花だった。』
「黒でも白でもなく?」」
「赤・・・鉄の色、火星の色か。」
火星の赤は鉄錆の赤、つまりは血の色である。昔の人は、その赤さから血の星、戦争の星と連想したそうだ。
『火星の大地をこの花でいっぱいにして、それを地球でも育てたい。それが夢だった。』
「検疫とかで引っかからなきゃいいけど。」
「無粋。」
「ゴメン。」
しかし、咲いたのは黒い復讐の花だった。エルザたちの夢は叶わぬまま、カサブランカは終わりを迎えた。
「それがどうして、今は白い花になったんだ?」
「黒い花が復讐心の表れなら、白い花は?」
「純粋、無垢。それに祝福ですわね。」
あるいは、復讐心から解放された、まっさらな状態とも言えるのかもしれない。
『あんなに私たちの心につっかえていた復讐心が、今はもう何も感じられないほどすっきりしているわ。』
エルザの表情は先ほどの雄二とは違い晴れ晴れとしていたが、その瞳の奥には哀しみのようなものが見えた。
「お前も、雄二と同じ新しい世界を望むのか?」
『私は・・・正直、雄二と一緒に生きられるのならどこでもいいわ。』
「なら僕らが戦う必要なくない?」
『あなたたちは望まないの?新しい世界、自分にとって都合のいい場所を。』
「いらないかな。」
「俺はどこでもいい。」
「今いるここがいいですわ。」
「らぴ!」
遊馬以外はあっけらかんに即答した。遊馬も少しだけ逡巡すると言った。
「あの現実よりは、ずっといいかな。強くてもニューゲームしたいとも思わないし。」
『そう・・・予想通りの答えね。』
エルザは少し肩をすくめて呆れたように返した。