ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
『これは・・・!』
『負けた・・・のね。』
消え入りそうなエルザの言葉とともに、カサブランカは機能停止する。
『バカな、あっけなさすぎる!』
「壊れる瞬間というのは、あっけないもんだよ。」
何が起こったのか理解が追いつかない雄二のもとにラッピーが舞い降り、トビーが語り掛ける。
今ここに戦いは終わった。恐ろしいまでにあっけなく、余韻もないほどに一瞬のうちに。
「言っとくけど、もう一回ってのはナシね。」
「納得いくか!」
「気持ちはわかる。」
怒り肩で今にもとびかかってきそうな雄二だったが、トビーは御されてカサブランカから降りるように促されるまま雄二はそれに従う。
傷ついたカサブランカはエルザの姿に戻り、同じく機能が停止したヴァイスロンから遊馬も降りてくる。
「さて、雄二とエルザは負けたんだから、今回は諦めてもらうってことでいいかな?」
「諦められるか!」
「ダメですー。」
「どうどう雄二。負けちゃったのは確かなんだから。」
「あんなのズルだ!」
「そりゃ『|チート〈ズル〉』だからね。それぐらいしないと勝てないとも思ってた。」
二度と使うこともないだろうと思っていたラッピーのムテキモードを抜かせたのはさすがカサブランカとしか言いようがない。雄二の頭の上で一仕事こなしたラッピーは誇らしげにしているが。
「まあなんだ、理不尽のない世界という願いもわからんでもない。」
「誰でも理不尽は避けたいですものね。
武器を仕舞ったモンドと美鈴が次々に声をかけてくる。これで全員がそろったことになる。
「けど、人間にはそんな理不尽とも戦っていける力があるということも知っているはずだ。俺たちや、お前たちもそうだったように。」
「雄二さんたちの願いは、そういうものも奪い取ることではないでしょうか?」
神は、人間に耐えられる試練のみ与えん。そして人は一人では生きられない。力を合わせられれば、どんな苦難をも乗り越えていけるのだ。力を合わせられるなら。
「きっとこの先、フィクションじゃない現実の世界にも大きな厄災が降りかかるかもしれない。けど、それから人間を救っていいのは、同じ人間だけなんだ。神様の力で解決じゃダメなんだよ。」
左手を右手で押さえるトビーが沈痛な面持ちで言うのを、雄二は黙って聞いていた。
「ヒーローには誰もがなることが出来て、どこにでもいる。けど一人だけではヒーローにはなれない。」
「そう、いつかは巣から羽ばたかなければならない。」
「自分の殻に引きこもりのままじゃ、羽ばたく方法もわからなくなりますわ。」
「なんか変な話の流れになってきたな。」
ガシッと遊馬の両腕が屈強な腕に掴まれて引きずられる。
「というわけで、こいつを連行するかわりに今回はお前の願いは諦めてくれ。」
「ちょっ、は?」
もがく遊馬だったが、不思議と力が入らない。
「アスマ、ボクたちと最後のゲームをしよう。」
「最後?なんで?」
「今やっぱり思った。お前は現実の世界で生きなければならない。」
「なんで?!ここにはなんでもあるのに!」
「いいえ、ここには『なんにもない』んですの。それだけでなく、何もかも『失くしていく』んです。」
美鈴は遊馬の持つゲームPODネクスを手に取る。タイムリミットは10秒を切っていた。
「は、謀ったな!」
「遊馬さん、きっと同じこと続けていくのって途中で飽きてしまうと思いますわ。」
「その中でもお前はゲームだけは好きであり続けていたな。」
「だから僕たちのことはキライになっても、これからもゲームのことだけはキライにならないでやってあげてね。」
カウントゼロ、新しい世界が始まる。
「神様がいるなら、私は願いますわ!遊馬さんに未来を!」
「できればハードモードで。」
光の幕が降りてくる。遊馬の視界を白く塗りつぶしていく。
「じゃ、またな。」
「また。」
「サヨナラとは言わないよ。」
「お前ら・・・!」
遊馬の意識も、こことは違うどこかへと引っ張られていく。