ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
さて。
「探すとはいっても、どこを探したもんかな。」
時間は昼に戻って、廊下を歩きながら散策すると、適当な教室をいくつか荒らしまわってから、また食堂でたむろしてマズいラーメンにコショウをかけている。
「問題はこの世界だけじゃないんでしょ?」
「うん、僕のいた『現実』がカサブランカに浸食されてるらしい。」
あれが夢じゃないんだとしたら。
「現在進行形でレベリオンが開発されていると・・・しかも、そこには名前が違うミスズまでいる。」
「うん、美鈴がいるのは気になるけど、アダムを退けて、レベリオンの開発が続いてるってところを考えると、それがカサブランカの『続編』なんじゃないかな。」
それがエルザと、天野川雄二の願いである。それを叶えるために僕たちは集められた・・・それは十二分にわかった。
「ところがクラックによって世界が繋がるイレギュラーが起きた。そのせいで遊馬の現実にカサブランカの世界も融合してしまったんじゃないかな。」
スープに浮かぶ油の膜を、箸でつついて一つの大きな塊にしていきながら、トビーは自分の考えを述べる。
彼らは『生きている』存在で、やはり『ゲームの中のキャラクター』という認識は捨てたほうがいいようだ。どうしてもその考えが頭から抜けないが。
「世界の融合か。提唱はされていたが、実際に観測されたことはないな。」
融合した後の世界の住人は、その世界が当たり前だとして誰も気に留めないことだろう。じゃあ何故遊馬はそれを知覚できたのか。
「おそらく、アスマが『プレイヤー』だからじゃないかな。」
「どういう意味ですの?」
「ゲームの画面の外にいる、観測者たる第三者ってこと。」
「なるほど。」
果たしてこの一言でどれだけ理解できたのか。
「プレイヤーがゲームからはじき出されるのは、ゲームオーバーになった時。」
「つまり、負けたら現実に引き戻されるんだな。」
確かに負けたタイミングだった。
「現実もなんだか危険な目に遭ったからな、出来れば戻りたくない。」
「強盗に遭ったんだっけ?」
「強盗と言うか、特殊部隊、みたいな?」
「お前の親父さん一体何やったんだよ。」
「普通の作家のはずだと思ってたんだけど・・・。」
そして最後にはロボット・・・あれもレベリオンだろうか、それが乱入してきたり。
「ところで、アイドルっていうからにはミスズは歌とか上手いの?」
「子供の頃から合唱団には入っていましたわ。」
「なら歌は大丈夫そうだな。」
「ダンスは?」
「バレエをやっていましたわ。」
「さすがお嬢様。」
実際すごい人気なようだったし。
「とはいえ、全部机上の空論なんだけどね。」
「確かめてみる?」
「どうやって?」
「わざと全滅して・・・。」
「却下。」
「そうでなくとも、遊馬さんが『ゲームをやめる』と思えば、現実に戻れるのでは?」
「そんな簡単に・・・。」
「出来たわ。」
『おかえり!』
「やべっ。」
『ちょっと待って!』
即座にゲームPODネクスの電源を入れる。
「あー・・・びっくりした。こっちの世界ではどうなってた?」
「なんだ突然。」
「まあ、戻ることは出来るんだってわかっただけで儲けものか。」
戻ったところで謎のレベリオンに追い込まれてる状態なので、詰みなのは変わらないが。
「何か知っているようではあったけど。」
カサブランカについて調べたくなったときは、現実に戻るのもいいだろう。
さて、作戦会議はこれぐらいにして、捜索を再開しようか。
「さて、どこを探したもんかな。」
「それでしたら、一度花畑を歩いてみません?」
「花畑?」
「あそこはあまり探索していませんし、何か見つかるかもしれませんわ。」
「そうだな・・・。」
そういえば、カサブランカの原作には花畑のようなものはなかったと思うのだけれど、一体何故花畑があるのか。そりゃあ、タイトルが『ダークリリィ』なのだから、クロユリがキーであってもおかしくはないのだけれど。
「ま、いっか。行ってみよう。」
それも歩いてみればわかるかもしれない。