ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
「雄二・・・。」
「やっぱり、あれがユウジなんだね。」
彼とは以前も同じ場所で会った。碌に会話する暇もなく戦いとなったが、今度はどうなるだろうか。
「・・・やんのか。」
「モンド、ステイ。」
真っ先にモンドは銃を抜くが、制止される。
「戦いに来たわけではない。ただ見届けに来た。」
「見届けに?」
『雄二・・・あなたはもう・・・。』
「いいんだ。どうせ俺にはもう無理なんだ。」
「おい、そっちだけで話を進めてるんじゃねーぞ。わかるように説明しろ。」
「・・・。」
『雄二、彼らはきっと大丈夫よ。』
「そうか、ならいい。」
剣呑な空気が流れていたが、どうやら戦闘にならずに済みそうだという流れに、モンドも警戒態勢を解いた。
「まず話さねばならない、この世界の成り立ちを。」
また説明台詞か、と遊馬はちょっと思った。
「昔、俺達の物語があった。」
世界を救った英雄は死んだのか、はたまた生きているのか、わからないままという、悲劇的な結末を迎えた。それでもその世界は救われたのだった。
「『観客たち』のある者は英雄たちは生きていると言ったが、またある者は英雄たちは死んだと主張した。」
「なるほど、シュレディンガーの猫状態になったってことか。」
「なにそれ、どういうこと?」
「続編が作られるまで、彼らが生きているのか死んでいるのかわからない状態ってこと。だからシュレディンガーの猫。」
言われて見れば雄二の黒い恰好はクロネコっぽいかもしれない。
「そんなところへ、『神様』がチャンスをくれた。神の子と、選ばれし者の選択によって、物語の『続き』が綴られると。」
「ちょっと待った、どういう意味?」
ちょいと難しい『外国語』を喋ってくれちゃってるおかげで、理解するのにうまく呑み込めない。
『えっとつまりね、あなたたちが頑張ってくれたら、私たちの『カサブランカ』の続編が作られるってことなの。』
「ああ・・・なるほど?」
即座にエルザが『日本語』に翻訳してくれた。
「しかし、続編?」
「カサブランカは完結したんでしょう?」
『ええ、けれど物語の『続き』を熱望する声はあるの。遊馬くんのいる現実の世界にね。』
「物語の中の人物が、どうしてそんなことを知っている?」
「『この世界』に来る前に、『神様』に聞かされたからだ。」
「その『神様』って?」
『脚本家、片桐和馬。』
「父さんが?」
『そう、『カサブランカ』の脚本家であるあなたのお父さんが、続編を書いてくれるというの。」
なるほど、登場人物たちからすれば、作家は神様だろう。運命を紙の上で転がすことが出来る者など、神にも等しい。カミだけに。カミだけに。
「二回も言わんでいい。」
「じゃあ、神の子というのはアスマのこと?」
「そして選ばれた者たちというのは、私たちのこと・・・。」
「選ばれしものたちには、試練が課せられ・・・。」
『雄二、ややこしくなる言い方はもういいわ。』
「えっ?」
サングラス越しの雄二の顔は、ちょっと不服そうに歪んだ。
「お前たちがクエストやバトルをこなして、最終的にこのゲームをクリアすれば、晴れて続編の『ダークリリィ』が完成する、というシナリオのはずだった。」
「はずだった?」
「残念ながら、トラブルが発生してしまった。」
『ここは、ゲームプレイヤーとキャラクターたち以外は介入できない『閉じた世界』のはずだった。けれど、次元の裂け目、あなたたちの言うところのクラックが発生したことで、穴が開いてしまった。』
「そこから、本来のキャストではない者たちが入ってきた。この世界のルールに従わない者が。」
考えるまでもなくバミューダのことだ。そして散々に暴れまわった。
「結果、遊馬の世界とこの世界との天秤が崩れて、『カサブランカ』の要素が遊馬の世界に流れ込んできた。」
「だから現実ではあんなことになっていたのか。でも、あれって『続編』なのかな?」
「むしろ、脚本家の手を離れたって感じじゃない?だって、アスマのお父さんも巻き込まれてるんでしょ?」
「そっか・・・しかしなんで父さんはそんなことを・・・。」
まったくとんでもないことをしてくれた。と言うか、なんでそんなことが出来たのか。
「とにかく、このままでは完全に『カサブランカ』の世界は遊馬の現実と融合してしまう。今わかっている阻止する方法は一つ、クラックを閉じることだけだ。」
「それをやってほしいってか。」
「最初から勝手な話だとはわかっている。だが頼む、このままでは何もかもが壊れてしまう。」
初めて、雄二は頭を下げた。その姿を見て、モンドも喉を出かけた言葉を飲み込む。
訳はわかった。わけがわからない状況には違いないけど、わかった。
しかも、こっちの世界で起こした行動が、現実世界にも影響を及ぼす・・・。そしてふと気が付いた。
あれ?この状況下で僕ってかなりレアな存在なんじゃないか?どちらの世界にも干渉出来て、いわば現実を好きに変えられる。何をすればどう現実に影響が出るかの法則性はつかめていないけど・・・しかも片方の世界に行っている間は、もう片方の世界の時間も止まっている。
いや、だから現実では拘束されているのか?いやむしろヘイヴンは僕を利用するために拉致したのか?それはエヴァリアンも同じかもしれないが。
手のひらに収まるゲームPODネクスが、この時ばかりはひどく重く感じられた。。