ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第39話

 地下、日の光挿し込まぬ闇の世界。そんな地の底の世界を、備え付けられた照明が一本の線に見えるほどの速度で列車が突っ切っている。

 

 その背後に追いすがるのは、3列並列している線路をすべて占領する巨大なタイヤのような物体。

 

 「お前の言う通り敵が来たぞ、喜べよ。」

 「あんまり嬉しくないかな。」

 

 その敵は本来のノロマなイメージとは打って変わって、現実のリニアモーターカーのおよそ2倍の速度の時速1000㎞のこの列車にに追いすがってきている。

 

 「ヒィイイッ!?虫!?」

 「虫はすかんな。」

 「あれは・・・カタツムリメカの『エレスカルゴン』か。」

 

 電磁力によって爆走する、金属の装甲を光らせるカタツムリの姿をしたロボットだ。

 

 「今度はなんのゲームの敵なんだよ?」

 「シューティングゲームの『ブンボーグ・ウォーズ!!』のボスキャラだ。」

 

 『ブンボーグ・ウォーズ!!』、戦闘機ペンシル号で悪のイレイサー軍団と戦う、子供たちの戦争である・・・が、目の間の敵はおもちゃではなく明確な兵器だ。

 

 「しかしなんだって、こんなところで襲われるのか。」

 「言ったでしょ、お約束だって。」

 「まあ、心当たりがないと言えば嘘になるかな。」

 「確かに。」

 「らぴ!」

 「おっ、ラッピーはやる気のようだね。」

 「よし、いってこいラッピー!」

 

 シューティング面と言えばラッピーにも心得がある。宇宙食を食べると、アストロノーツのバーニアを吹かせて突貫する。

 

 エレスカルゴンは触覚からマグネットビームを放ってくる。トンネル内は狭いものの、ラッピーが紙一重で躱すには他愛もない。

 

 ラッピーがまごついているその間にも、エレスカルゴンは迫ってくる。追い付かれたらアウトってわけだろう。

 

 「ボクたちも見てるだけってわけにはいかないよね!」

 「エルザ、変身できる?」

 「出来るよ~。ちょっとここは狭いけど、格闘するにはちょうどいいかも。」

 「よし、じゃあ美鈴はカサブランカでアタックを!」

 「虫はニガテですが・・・わかりました!」

 

 エルザはペンダントをとると、高く掲げて叫んだ。

 

 「『リバイバル』!」

 

 するとペンダントから光が溢れ出してエルザの体を包んでいき、エルザを鋼鉄の機士・カサブランカへと変える。

 

 『よし!乗って!』

 

 開いたハッチに颯爽と美鈴が乗り込むと、すぐさまメカが明滅して、バトルモードが起動する。

 

 『行くよ!』

 「いきます!」

 「行ってこい!」

 

 そして勢いよく飛び出すと、線路の上に乱暴に着地する。

 

 『ブレードホイール、展開。美鈴ちゃん、スケートはできる?』

 「フィギュアを少々嗜んでいますわ!」

 『結構!走るわよ!』

 

 カサブランカの踵が変形して、ホイールになるとレールの上を滑るように走り出す。

 

 「って、次はどうすれば?」

 『キツ~イ一発を喰らわせてあげるの!』

 「はい!」

 

 エレスカルゴンのビームを、スピードスケートのように左右に振れながら躱し、急接近する。

 

 『それっ!アチョー!』

 「あ、あちょー!」

 

 ぶつかるギリギリのところで機体を上下反転させると、見事なサマーソルトキックをぶちかました。

 

 「ヒュー!やるー!」

 

 そのままカサブランカは天井に着地すると、壁を滑り降りてエレスカルゴンの前方を走る。

 

 思わぬ攻撃を受けたエレスカルゴンは、体をメタルの殻に引っ込め、N・Sマグネットによる電磁バリアを張って防御を固めた。

 

 「引きこもられたぞ!どうすればいい!?」

 「空中を浮いているマグネットを破壊するんだ!」

 「なら・・・ここは俺に任せろ!」

 「トビーは、列車の操縦をお願い!」

 「OK!」

 

 ラッピーも意図を理解したのか、飛び回りながらマグネットに攻撃をしかけ、モンドもレーザーキャノンで狙撃する。

 

 そうしてマグネットを破壊しきると、バリアが解除される。怒ったエレスカルゴンは、列車に向けてビームを発射してくる。

 

 『えー、本日はトビー鉄道をご利用いただき、誠にありがとうございます。まもなく路線変更します、手すりにおつかまりください。』

 

 「へ?うぉおおっ!」

 

 運転席でトビーがレバーを倒すと、隣のレールに乗り換える。遊馬は座席に身を打ち付けられる。

 

 「いてて・・・、とにかく今だよ!」

 『よっしゃー!ホワチャー!』

 「ほ、ほわちゃー!」

 

 今度はローリングソバットでエレスカルゴンを蹴りつける。

 

 「よーし、この調子だ!」

 

 調子づいてきたところも束の間、エレスカルゴンはさらにスピードを上げて追いかけてくる。その勢いに、カサブランカもラッピーも跳ね飛ばされる。

 

 「どうする!追い付かれるぞ!」

 「この列車を切り離してぶつけるってのは?」

 「面白そうだな!」

 

 遊馬とモンドが車両を一つさかのぼると、連結部分をレ-ザーカッターで焼き切る。

 

 「いいか?」

 「いいよ!」

 「「せーのっ!!」」

 

 合図と共に、切り離した車両を蹴り押すと、火花を散らしながらエレスカルゴンにクリーンヒットする。

 

 「やった!」

 

 『毎度ご乗車ありがとうございます。まもなく本列車はトンネルを抜けます。』

 

 ずわっ!と景色が変わり、一面の青。海の上を、天を貫く塔めがけて走っている。

 

 「あれが、軌道エレベーターか。」

 「地上から見ると圧巻!」

 

 雲を貫き、果てが見えない巨大建造物は、まるで絵のように見えた。

 

 などと、感動している場合じゃない。ぶつかってきた後部列車をスクラップにしながら、エレスカルゴンは追い上げてくる。その殻にはヒビが入っている。

 

 「あと一息のようだな。」

 「やっちゃえカサブランカ!」

 『よーし!パイルバンカーだ!』

 「ラッピー、モンド、敵の足を止めるんだ!」

 「よし!」

 「らぴ!」

 

 二人の射撃が同時にエレスカルゴンの脚部を焼き、少し動きが鈍くなった。

 

 『美鈴ちゃん、いい?ぶつけると同時にこのレバーを押し込んで!』

 「はい!」

 

 カサブランカは腕に杭を装備し、そこへバチバチと電流が流れ込む。

 

 『いっけぇえええ!今だっ!!』

 「ちぇすとー!!」

 

 カサブランカの拳が、殻のヒビに突き立てられる。それと同時に、杭がフレミングの左手の法則に沿って打ち込まれる。

 

 「とまった?」

 『爆発するわよ!離れて離れて!』

 

 殻の内部ではスパークが起こり、発生した熱によってパーツが融解、臨界に達する。ものの数秒で爆発四散した。

 

 打ち込まれた杭から放たれる電流によって、内部だけ破壊する『パイルクラッシュ』、カサブランカの数少ない必殺技である。

 

 『えー、本日はトビー鉄道をご利用いただき、誠にありがとうございます。まもなく終点、軌道エレベーターです。お降りの際はカサなど忘れ物のないよう・・・。』

 「もういいっての。」

 

 海上を突っ切って、軌道エレベーター地下のステーションへと無事に到着する。

 

 「ステージクリア、かな?」

 「まだまだ、ここから宙に上がるまでが遠足よ。」

 

 目の前には、地上と天空をつなぐチューブ。今度はどんな冒険が待っているのか。


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