ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第43話

 しばらく沈黙の回廊を歩き、最奥部の司令室へと到着する。

 

 「指令!お連れしました!」

 「ご苦労。」

 

 昨日と同じように遊馬は席に通される。今日のこの場にはクリス司令官と、父・和馬との他にも3人の女性がいる。

 

 「まず紹介しよう。我らヘイヴンが誇るレベリオン部隊のパイロットたちだ。」

 

 1人目は青いウィッグを挿したメガネのクールな女性。2人目は黒い長髪が、幽霊のように顔を覆い隠している。そして3人目は灰色の瞳に栗色の髪、シェリルによく似ている。

 

 「リーダーのセシルだ。」

 「・・・リーシャン・・・です。」

 「アリサ・ランカスターです。」

 

 それぞれ順番に名乗ってくれた。セシルということはフランス系?、でリーシャンは中国系だろう。思った通りアリサはシェリルと姉妹のようだ。ここにパトリシアとシェリルを咥えた5人が、ヘイヴンのパイロット。パイロットと言うかイロモノ集団と言うか・・・。

 

 「ちなみに遊馬のことを拘束しておこうって言ったのはセシルね。」

 「姉さん?」

 「だが誰も反対しなかった。」

 「・・・孤立無援。」

 「ひでぇ。」

 

 リーダーというだけあってセシルは冷厳らしい。制服もピッシリと着ているし、ネクタイもしっかり締めている。リーシャンは何を考えているのかよくわからないが、言葉の追撃が飛んでくる。

 

 「そのことに関して、本当に申し訳ないと思っている。だが、君の安全を守るための事だと思ってほしい。」

 「その割に飢え死にしそうだったんですけど。」

 「人間、1日食事を抜いたくらいじゃ死なない。」

 「そりゃそうかもしれないけど、出来ればそういう文明の中で生きていたい。」

 「それで、今後の方針について話す前に、聞かせてほしい。今度はどんなことがゲームの中ではあった?」

 

 と、真剣なまなざしが向けられる。

 

 さて、何を話したものかと思案する。問題なのは、こちらとあちらで認識に齟齬があるということ。正直この辺を説明するのも面倒くさい。事情を知っているであろう父さんは腕を組んで何も言わない。

 

 今は自分の有用性をアピールするのもいいだろう。とりあえず得られた情報を正直に話すとしよう。こっちの世界でも雄二が生きてる可能性があるという事も衝撃的な事実だろう。

 

 そしてバルアークが今もどこかに残っている可能性があるということも伝えることにした。アダムの生き残りであるエヴァリアンとしては喉から手が出るほど欲するものだろう。あるいは、既に確保されている可能性もある。

 

 「まさか・・・本当に?」

 「信じられないでしょうけど、それは確かに見ました。これから内部を捜索するというところで一旦戻ってきたのですけど。」

 「では、やはりあれは・・・。」

 「うむ、間違いないのだろう。」

 

 遊馬の意見を聞いた途端、にわかに慌ただしくなった。

 

 「あの、何か?」

 「うむ、実はつい今しがた、海底であるものを発見したのだ。」

 「まさか?」

 「そう、そのまさか。」

 

 スクリーンにパッと映されたのは、見覚えのある赤黒い物体。十数年もの間海底に放置された結果、フジツボや海藻が張り付いているようだが、それでも材質そのものは朽ちている様子はない。

 

 「消滅させられたと思われていた、バルアークの一部分だ。」

 

 カサブランカと、トールハンマーの攻撃によって破壊され、分離したバルアークの一部が地球に落ちたものだろう。

 

 「実はこのバルアークの遺物は、偶然発見させられたものなのだ。それもまるで今までそこになかったものが『突然出現』したかのようにね。」

 「突然?」

 「突然目の前に現れた、としか言いようがないように見つかった。やはり、君と、そのゲーム機には現実を変える力があるのだろうか・・・。」

 「それでもにわかには信じ難いことに変わりはありませんが。」

 「私は信じるよ。」

 

 クリス司令は指を組んでモニターを見つめる。その眼には光が灯って見えた。

 

 「これからなにを?」

 「勿論、調査する。何か情報が手に入るかもしれない。」

 

 エヴァリアンと比べて戦力の乏しいヘイヴンには、こういった掘り出し物はありがたい。文字通り沈んだ海賊船からお宝さがしが始まる。

 

 「よし、では調査に向かう。メンバーは私、リーシャン、パトリシアの3人で行く。」

 「・・・了解。」

 「了解です!それでは行ってまいります!」

 「うむ、くれぐれも気を付けてな。」

 

 3人が指令室から出ていくのを見送ると、クリス司令は遊馬に視線を戻す。とてもご満悦なようだ。

 

 「さて、何が見つかるかは彼女たちの頑張り次第として、よくやってくれたね遊馬くん。」

 「鍵のついてない個室を用意していただければもっと頑張れますよ。」

 「ハハハ、もとよりそのつもりだよ。ルームサービスもつけよう。欲しい物があれば取り寄せる、VIP待遇としよう。」

 「外に出すつもりもなさそうですね。」

 

 いい大人が、年頃の子供に引きこもりを推奨するとは。

 

 「司令!それじゃあ私艦内の案内を続けますね!」

 「う、うおっ・・・。」

 「姉さん!案内ってどこへ?」

 「色々!」 

 

 答えも聞かずに腕を掴んだシェリルによって、遊馬は指令室の外へと連れ出された。


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