ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第44話

 「ちょっと姉さん!」

 「遊馬、レベリオンをもっと見て見たくない?」

 「姉さん!」

 「あ、これは私の妹のアリサね。ソックリでしょ?」

 「そうですね。」

 

 遊馬たちの後ろについてきたアリサ・ランカスターは、たしかに姉のシェリルによく似ている。『目元とかお姉さんそっくりですねー。』とかってレベルじゃないぐらいよく似ている。

 

 「双子?」

 「双子ではないかな。私の一つ下だよ。」

 「きっと苦労してるんでしょう?」

 「ホントにもー、この子ったら押しが弱いんだからすぐに面倒ごとを押し付けられちゃう困ったちゃんなんだよ!」

 「ちょっとシェリルさん黙ってて。」

 

 出しゃばりな姉に、苦労人な妹といったところか。遊馬には兄弟はいないが、アリサのことを心底同情した。

 

 「そうじゃなくて姉さん。なんで彼を連れ出すんですか?」

 「いいじゃない、長い付き合いになるんだから。」

 

 長い付き合いか、そうなるかもしれない。でもちょっとシェリルは距離感が近すぎる。長く良好な関係を続けるには、程よく距離を開くことだと思う。

 

 「部屋がもらえるなら、まずは見に行ってみたいんですけど?」

 「おっ、ウチ来る?」

 「いえ、結構です。」

 「ならアリサの部屋に行こうか。」

 「姉さん?」 

 「あっ、そうかー、ごめんねアリサ部屋散らかしっぱなしだったわ。とても男の子には見せらんないぐらいに・・・。」

 「散らかしたのは姉さんでしょうが!」

 

 このまま放っておくと延々と漫才を続けてくれそうだが、遊馬はややうんざりとし始めていた。この閉鎖空間で女性の黄色い声を延々と聞き続けていると頭がおかしくなりそうだった。部屋に引きこもってたほうがマシかもしれない。

 

 「あっ、一人で歩くと迷子になるよ。」

 「そうです!迷子になられても困ります!」

 「なら、早く連れてって。」

 「怒らない怒らない、リラーックス。」

 「居住スペースはこっちです。」

 

 さて、と居住区にまでやってきて足が止まった。

 

 「空いてる部屋は・・・。」

 「ここしかないんじゃない?」

 「ここか・・・。」

 「何か問題が?」

 「空いてるんだけど・・・空いてないんだよね、ここ。」

 「・・・幽霊でもいるの?」

 

 扉を開けると、中は確かに無人だった。代わりに、部屋主の帰りを待つように家具が鎮座している。机に積まれた本や、ベッドにはぬいぐるみが置かれている。

 

 「あれ、ラッピーのぬいぐるみか。」

 「知ってるの?」

 「向こうの世界の仲間の1人ですから。」

 「へー。」

 

 よく見ればそれは白い毛玉のようなウサギのキャラクター。遊馬には見覚えのあるラッピーだった。ぬいぐるみなのだから当然動くはずもないのだが、遊馬には動いていないことの方が違和感を覚えた。何気無しに拾い上げてみると、なかなか年季が入っているのかちょっとボロいと思えた。

 

 余程大切にされてるんだろうと思いながら、ぬいぐるみを元あった場所にそっと戻す。

 

 「この部屋って、誰か使ってた?」

 「まあね。私はよく知らないんだけど。アリサは知ってたっけ?」

 「私もよく知りませんが、セシルが出入りしているのを見たことがあります。」

 「へー、そうだったんだ。」

 「・・・ってシェリルさんのほうが先輩なんじゃなかったの?」

 「ううん、一番の新入りだけど?」

 「え?でもパトリシアさんは先輩って?」

 「ああ、あれはパトリシアが勝手に言ってるだけ。」

 「なにそれ?」

 「さあ。でもかわいいじゃない?」

 

 シェリル的には妹分が1人増えているからOK!らしい。実際年下ではあるから、妹には違いないという。

 

 まあ、人の趣味にとやかく口出しするつもりもないけど。

 

 「それよりも、この部屋はちょっと使えないです。」

 「そう?でもここ以外の部屋なんてないと思うよ?セシルが出入りしてるんなら、セシルに文句言わなきゃ。」

 「それもなんか申し訳ないので、気にしなくていいですよ。」

 

 人がいないのに片づけられていない部屋と、そこに出入りするメンバー。何か事情があるのはわかりきっている。

 

 「普段小うるさいセシルに意見できるチャーンス!」

 「姉さん・・・。」

 「冗談よ。けど何があったか知らないけど、いつまでも一部屋占領してるのはいけないことじゃない?」

 「そりゃまあそうですけど・・・。」

 「それのダシにされたくないんですけど僕は?」

 

 仲良くやっていこうと言っているその傍から、火花が散りそうなことを言わないでほしい。

 

 「でも他に部屋なんてないですよ?」

 「・・・いや、もう一部屋あるね。」

 「まさか?」

 「そのまさかだよ。」

 

 連れていかれたのは、艦の下部も下部、見覚えのあるエレベーターを降りて、廊下を歩いたところ。

 

 「ここでしょ!」

 「そういえば言ってなかったけど、ここ牢って言うんですよ。」

 「姉さん、いくらなんでも失礼でしょう?」

 「えー、別にいいんじゃない?ねえ、遊馬もそう思うでしょ?」

 「グ、グムー・・・。」

 

 他に部屋が空いてない以上、『個室』はここしかない。

 

 「まあ、いいや。」

 「えっ、マジ?」

 「マジって、勧めといて何を。」

 「いや、私は御免被りたいってだけよ。こんな狭いところになんて。」

 「姉さん・・・。」

 

 自由奔放と言うか、本当に何考えてるのかわからないという点ではリーシャン以上だったかもしれない。少しでも開けかけていた心が急に音を立てて閉まり始めていた。


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