ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第46話

 「さて、気を取り直して・・・。」

 

 ガムテープで補強された天井と、部屋の隅に積まれたラッピーグッズを尻目に、遊馬はゲームPODネクスを起動する。

 

 「ただいま!」

 「おかえり!」

 

 海に浮かぶ艦から、宇宙空間に浮かぶドラム缶に帰ってきた。どちらも」狭い閉鎖空間であるという事に変わりはないが、不思議とこちらの方が居心地がいい。

 

 『まずは、あの艦に向かおうか!』

 「おう!」

 「らぴ!」

 

 結構距離があるように見えるが、カサブランカの推力で引っ張ってもらえればすぐだ。

 

 宇宙に浮かぶ血の色をした戦艦、バルアーク。RPGの続編に出てくる、前作のラストダンジョン跡というのは決まって重要なアイテムが眠っているものだ。探索のし甲斐がある。

 

 特に何の支障もなく接艦できた。宇宙服を着こんだ遊馬、トビー、モンド、そしてラッピーとカサブランカに乗った美鈴が一様に壁を破壊されたブリッジに潜り込む。

 

 「ボロボロだな・・・。」

 『これは、あの時のままね・・・。』

 

 最奥部たるブリッジに鎮座していた主の姿はない。だが、まるでつい先ほどまで戦闘が行われていたかのような騒々しさの痕跡がここにはまだあった。

 

 『結局、雄二は、いえ私たちは、あの瞬間に縛られ続けているのかしら・・・。』

 「ねえ、エルザには復讐心とかないの?」

 

 ゲームPODのランプは赤く点滅しており、クラックが付近にあることを示している。その源を探っていたところで、トビーがふと疑問を口にした。

 

 「こんな時に聞く話か?」

 「気になったもんはしょうがないじゃん。だって、ユウジの復讐心がダークリリィを作ったのなら、エルザにもそれがあってもおかしくないんじゃない?この先どんな危険が待ってるかわからないよ?」

 「それはまあそうだが。」

 『そうね・・・抱いてないと言えば嘘になる、かな。』

 

 あの時自分が立っていたであろう場所にもう一度佇むカサブランカは、自身の心情をつらつらと綴った。

 

 『雄二が思っていたこと、私もわかってたつもり。何に復讐したいのかもね。』

 

 『まず火星で私たちを襲い、家族を奪ったアダム。でも、こいつらには私たち自身の手で引導を渡したわ。まさにこの場所で。』

 

 『次に、私たちを利用した防衛軍の人間かしら。私たちは命懸けで戦ったのに、ヤツらはのうのうと生きているなんて、ズルいわよね?』

 

 『あとは・・・最初に地球に帰ってきた時に、私たちを排斥しようとした市民かしら。誰のおかげで助かったのか、いまいちわかってないようだったし。そんなところね。』

 

 ふぅん・・・とトビーは聞いていた。モンドも思うところあるのか、何も言わずに聞いている。

 

 『けど、私はそんなヤツらに復讐しても何の意味もないって思ったかな。なんとなくだけど。』

 「そのなんとなくって?」

 『うーん・・・それ以上に、疲れてたからかしら。戦いが終わったら、どこか人の手のとどかない場所でゆっくりと余生を過ごしたかった・・・。」

 

 けれど、地球人類のエゴがそれを許そうとしなかった。その結果が、最後のトールハンマー発射に繋がった。

 

 「けど、そのせいでアスマの現実にエヴァリアンがいるのなら、その考え方自体は間違ってないと思うよ。」

 『そう?』

 「結局悪とされるのは、心で思ったことを実行に移すやつなんだよ。エルザは『何もしない』ことを選んだのなら、それは正解だと思うよ。」

 

 「じゃあ逆に、何を潜在的に望んでたと思う?」

 「いくらなんでもそれはデリカシーなさすぎじゃない?」 

 『そうね・・・一つだけ望むことがあるとすれば・・・。』

 

 機械の指を折り曲げながら、カサブランカは、エルザはつぶやいた。

 

 『子供をこの手に抱きたかったかしら。』

 

 「子供?」

 『私も雄二も、本当なら普通の人間として、普通な人生を過ごせたはずだったな、って。』

 

 子供という例えは、その最たる象徴であろう。次代に繋ぐという、生物としての原理。

 

 「・・・それって、エヴァリアンも同じなんじゃないのか?」

 「復讐心が?」

 「それもそうだが、次代を遺すという考えがだ。・・・復讐は遺伝子がそうさせるんじゃない。ミームだ。自分たちの中に生まれた、あるいは、アダムから受け継いだ悪意というミームが。」

 

 人間が他の動物と異なる点は、ジーンではなくミームも残せるという点にある、らしい。動物の中にも『文化』があるやつもいるようだし、正確には違うのかもしれない。まあそれはいいとして。

 

 つまりは子孫を残せないレベリオンは、子孫に代わる自分たちが生きた証を遺そうとしているのではないか。

 

 だが、結局のところそういう志も、有象無象の人間たちが甘い汁をすする糧にされてしまうことが往々にしてある。それこそが、遊馬の現実の世界の歪みなんだろう。

 

 「じゃあ、向こうの雄二さんは、エヴァリアンにいるんですの?」

 「どうしてそうなる?いや、うーん、その可能性も十二分にあるな。」

 「それでユウジのミームを継いだのが、イングリッドってワケ?」

 「だんだん繋がってきた感あるね、ウン。」

 

 閑話休題。

 

 「つまり、エルザの願いは子供が欲しいってことか。」

 「実に女の子らしいというか。」

 『なによー、私だって永遠の17歳よ?』

 

 17歳の母というのは、それはそれで危なっかしいものを感じる。

 

 「本質は同じなのかもしれないな、雄二の妄執とも。」

 『かもね、やっぱり私たち、息ピッタリだったわ。』

 

 さ、口を動かすのやめて、手を動かすのに戻ろう。

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