ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第48話

 さて、息抜きも済ませたところでバルアークの格納庫にやってきた。格納庫、というにはガラスの円筒が並んでおり、さながら実験場や培養施設のようにも見える。

 

 「この試験管が、レベリオンのベッドなのかな?」

 『戦闘特化のレベリオンは、人間の姿に戻れない代わりにこうしてメンテナンスマシンに入る必要があるのよ。』

 「その戦闘用レベリオンは、火星の捕虜たちと戦って、大半が死んだと・・・。どちらも元は同じ人間なのに。」 奴隷同士が戦って、片方の

 

 「この試験管の中身は、ナノマシン入りなのかな?」

 「これ俺達が被ったら、俺達もレベリオンになっちまうのか?」

 『調整用と改造用は別だから大丈夫よ。』

 「ふむ、科学者としてはじっくりと調べてみたいところだけど・・・。」

 

 ガラス管の中には割れているものもあった。底に残った液体のような、あるいはジェルのようなものをトビーは宇宙服越しに指でつついている。

 

 「でも、こんな液体で人間がレベリオンになるなんて、正直信じられませんわ。」

 「明らかに質量保存の法則を乱しているし。」

 『質量は異次元から持ってきている、らしいわ。』

 「まあなんにせよ、人類が持つにはいささか早いものだってのはわかるかな。」

 

 トビーも観察の手を止めた。

 

 「ところで、ここに来た目的ってなんなんだよ?」

 「うーん、目標としては現実世界の方でのバルアークを発見したい感じかな。一部は見つかったんだけどね。」

 「何か、目印になるものを立てておけば、現実でも見つかるんじゃない?」

 「そうか。何かビーコンとか、発信機になるかな・・・。」

 「けど、ブリッジは動かなかったようだし、他の場所から出せないものかな。」

 「これだけ広い艦なら、ブリッジ以外にも通信設備ぐらいあるだろ。」

 「例えば?」

 「・・・少なくともここではないどこか。」

 

 乗っていた連中が連中なので、余計なスペースとかは置いていないだろうけど、探せば通信機のひとつくらいある。そこを起動しておけば、現実に戻った時も信号を発してくれているという寸法だ。

 

 無論、ヘイヴンだけに通じる秘密の信号でなくてはならない。エヴァリアンに先に見つかったりしても大変だ。あるいは、エヴァリアンが既に艦を接収していたとしても、尻尾を掴む手掛かりにはなるだろう。

 

 さて、そうと決まれば移動だ。ブリッジから侵入して、一番最下層から順番に調べて回っているところだ。

 

 ここで言う最下層とは、すなわち錐状の艦の一番外側の部分だ。バルアークは一番背後の部分に五角形状に並んだブースターがあり、その上にボトルが立っているような姿をしている。

 

 表面が赤黒いということや、やや歪な形をしていることを除けば、地球人の作ったロケットと、そう大してイメージは違わないだろう。

 

 「どうやらこのあたりは、兵士たちの区画らしいね。」

 「中心へ行くほど上の階級になっていくのかな。」

 「だろうな。攻撃を受ければ一番最初に死ぬ位置だここは。」

 

 考えてみれば考える程、『艦』と言うより『棺』かもしれないと思えてくる。端っから火星から地球への片道用、一番守られている中心部、マザーブレインさえ地球に到達できれば、あとは知らんって感じなのかも。

 

 「そう考えると、その最終決戦地球侵攻作戦も、アダムが最後の望みをかけた大博打だったのかもね。」

 『かもしれないわね。ホント迷惑よ。』

 

 最も、地球に到達さえできればアダムの勝ちになるので、ただの捨て鉢作戦ではないのだけれど。

 

 『そう考えると、色々謎が残ってるわね。』

 「それこそ続編で語られるんじゃないの?」

 

 むしろそれを阻止しようとしているわけだが。さておき。中心部、上階に行けばいいものが手に入るかもしれないが、代わりになかなか時間がかかりそうだ。時間は無限に近いとはいえ、ざっくりと調べて、早く上の方に行ってしまおう。

 

 そのためには目星をつけたほうがいいだろう。さしあたって・・・ブリッジに一番近い区画とか。

 

 「マジ?ここから一旦戻るの?」

 「先に計画を立てて置けばよかったものを・・・。」

 「ゴメン、まさかこんなに広いとも思わなくって・・・。」

 

 予測を立てずに適当に散策するというのも楽しいと言えば楽しいのだが。これは遊びではなかった。途中思いっきり遊んでた記憶もあるけど。来た道を引き返すとともに、そのあたりのことも思い出していく。

 

 「兵隊たちも、元は人間だったんだよな。・・・やるせないな。」

 「何突然。」

 「あのな、言っとくが俺にだって慈愛の心とかあるんだぞ?・・・人であったものが、人として死ねないのはむごいことだと、俺は思っている。」

 

 奴隷同士が戦って、片方の奴隷が死んで、もう片方の奴隷が生き残った。そして生き残った奴隷は、新たに人類に牙を剥いた。

 

 「終わらない戦い、か。」

 「復讐も同じだと思う。報復に次ぐ報復、復讐に繋がる復讐、終わりが見えない。」

 『・・・けれど、それをあなたたちには止められる。あなたたちは、私たちの世界とは違う、『外の者』だから。』

 

 ふと、遊馬は自分の立場について考えた。結局自分のやっていることは、その復讐のどちらかに加担しているだけではないのか。『内』でも『外で』もない自分が、本当にやるべきことはなんだろうか。


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