ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第57話

 『マスドライバーに動きあり。』

 「やはりか。フォノンスナイパーライフルで撃つ。」

 『待て!まだヤツらだと確認したわけでは・・・。』

 「このご時世、こそこそと旧遺物なんか使うのはヤツら以外にありえん。」

 『なにかの間違いかもしれないんだぞ!』

 「間違いの一つがなんだ。今ここで逃すことの方が間違いだ!」

 『待て!撃つな!』

 

 トリガーに添えられた指に力が入り、返ってくるのはたしかな手応え。

 

 「ライトとはいえ、警備にレベリオンなんか持ち出す方が過剰防衛だ。ここで何か重要なことやっていますと、言っているようなものだ。」

 

 また1つ、いや2つキルスコアを伸ばしたことを確信するが、そのカウントは却下される。

 

 「ほう・・・。」

 

 避けた、か・・・この地平線を無理やり押し上げた、高高度による超長距離狙撃を。

 

 「新兵や馬の骨の動きではないな・・・面白い。この俺手ずから『抹殺』してやろう!」

 

 自身を制止しようとする声を断つと、狙撃アームを解除して巡行モードに切り替える。1発撃つのに3分ものチャージがかかる狙撃銃など、接近戦では物干し竿ほど役にも立たない。

 

 バーニアを吹かして、獲物を目指して空を切り裂く。目標、八卦島ロケット基地。

 

 

 

 

 『・・・傾いてる。』

 『マズい!パティ!』

 『発射シークエンス中止・・・無理!!』

 『了解、手動で調整する。』

 

 支柱を破壊され、マスドライバーの先端は傾き始める。大急ぎでシャトルは自動航行から手動に切り替える。だがみるみるうちに傾きは強まっていく。

 

 「発射まで、10・・・9・・・」

 

 『セシル!支えるよ!』

 『嘘!わかった!』

 

 突然の襲撃に呆気にとられる間もなく、壊れた支柱にライトレベリオンが潜り込む。

 

 「3・・・2・・・1・・・!」

 「行けるか・・・!」

 

 一瞬のうちに第一宇宙速度を突破したシャトルが、レールの上を駆け抜けて、空を撃ち抜く。

 

 「行ったか・・・。」

 『ネプチューン!頭下げろ!』

 「レーダーに敵性反応!」

 「やむを得んか・・・緊急潜航!2人は敵を押さえろ!」

 『了解!』

 「敵はおそらく『アーマーギア』だ、気をつけろ!」

 「アーマーギア?」

 

 ネプチューンは海中に身を隠す。同じ攻撃に狙われれば、ネプチューンは即、波の枕に抱かれることとなる。

 

 「アーマーギアってなに?」

 「レベリオン用の拡張武装、いわば鎧だ。敵はおそらく、長距離狙撃用の装備で狙っていたんだ。」

 「という事は、敵はレベリオン?」

 

 それも簡易量産型では歯牙にもかけられないであろう、最新鋭機だ。

 

 「待って、じゃあ2人は置き去り?!」

 「遊馬、それ以上言うな。」

 「けど?!そんな・・・。」

 

 相対したとして、勝ち目は絶望的だ。それは誰もがわかっている。

 

 思わず遊馬は、ゲームPODネクスを取り出して、おもむろにスイッチを入れた。

 

 「みんな!」

 「おう、おかえり。今度は何だ?」

 「実は・・・。」

 

 困った時こそ、仲間を頼る。ゲームの世界の保健室で、今まであったことを説明する。

 

 「なるほどな。だからこっちに来たと。」

 「そう、なにか方法無いかな?」

 「無いでしょ。」

 「ええ・・・。もうちょっと真剣に悩んでよ。」

 

 意外というか存外にもドライな返事をされた。

 

 「だって、そっちの話はお前の現実だろう?俺達が直接俺達なにかできるわけでもなし。」

 「そんな・・・エルザ!雄二!」

 「無理だ。」

 「何もできないわ。」

 

 藁にもすがる・・・決してこの2人は藁なんかじゃないが、だからこそ頼りたかった。

 

 「でも、2人は英雄なんでしょ?」

 「英雄なんて、後の時代が作った像に過ぎない。」

 「最終的に流されたしね、私たちは。」

 

 お茶を飲みながら、自嘲気味に遠い目で2人が言うのを、遊馬は受け入れられなかった。

 

 「でも・・・でもなんか!」

 「あのな、俺達には無理だと言っているだけで、なにも諦めろとは言ってないぞ。」

 「けど、僕は現実では無力で・・・。」

 「なら信じろよ。俺達を信じたように、お前の『仲間』を。」

 

 さすがモンド、かっこいいことをいう。だが煎餅を齧りながら言われては様にならない。

 

 「・・・わかった。」

 「ええ、私達はこうしてのんびりして待ってますから。」

 「あれ?こっちは時間経ってる?」

 「ああ、お前がいない時間が増えたな。」

 「何かの影響か・・・まあいいや。」

 

 まあいいやで済ませていい変化でもないかもしれないが、とにかく今はまあいいやで済ませていい。今はここにいるべきではない。

 

 「・・・。」

 「何かあったか?」

 「いいや、何も出来なかった。」

 

 現実の、ネプチューンの司令室に戻ってくる。数秒前と何一つ変わっていない。

 

 「敵機、まもなく八卦島に到達!」

 「対空砲、迎撃準備!艦の撤退まで時間稼ぎだ!」

 

 冷静に指示を下すクリス司令を見て、遊馬も思うところあった。それを察したのか、クリス司令は遊馬に語りかけてきた。

 

 「あの2人の事を、心配してくれているんだな。」

 「ええ・・・シェリルはもう友達ですから。」

 「そうか。なら信じよう、君の友達を、我々のエースパイロットたちを。」

 

 まるで、すべてを見守る父のように力強く、信頼のある言葉だった。

 

 「・・・本当の父さんのことはどう思う?」

 「ちょっと黙ってて。」

 「ガーン。」


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