ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第59話

 『クソッ、ちょこまかと!』

 

 「はいはい、鬼さんこちら!」

 

 ガストのブースターによる加速は確かに驚異的だが、射撃に集中するあまり動きがおろそかになっている。

 

 高機動型の機体であるが故、敵の数が少ないと特性を生かしきれない。相手は機体の特性も掴めていないと見える。

 

 それが唯一の抜け目だ。機体のスペック差は、知恵と腕とチームワークで埋められる。 

 

 「そこ!」

 

 『くっ・・・当てられただと?!』

 

 シェリルが攪乱し、セシルが撃ち抜く。機体はいつものとは違いこそすれど、戦法に変わりはない。

 

 『こうなったら、ミサイル発射!』

 

 痺れを切らしたガストのパイロットは、虎の子の拡散ビーム発生ミサイルをバラまいてきた。

 

 『避けきれるかーこの弾幕をッ!!』

 

 拡散ビームと、ビームガンにレールキャノンの高密度の弾幕の余波で、残骸となったマスドライバーを完全に破壊しつくす。

 

 「ちょっち、足りなかったね。」

 

 『バカな・・・オレの最大の技だぞ!』

 

 「今ですね。」

 

 『ぐぉおおおおお!!』

 

 回り込んだセシルが撃つ。量産型とはいえ、使っているフォノンライフルのカートリッジは同じなので、武器の威力はそう変わらない。

 

 セシルは、自身の脳内にあった設計図から、敵機のジェネレーターの位置を割り出し、正確に狙い撃った。

 

 爆発、炎上してガストは墜落する。

 

 「やったか?」

 「いえ、本体を切り離したようね。まだ来るわ。」

 

 ジェネレーターのエネルギーが逆流して本体にまで伝わる前に、本体が分離するのが見えた。偶然か、はたまたそういう設計だったのか、なんにせよまだ敵は生きている。

 

 そして困ったことに、一撃で仕留めきれなかったことが響いてくる。

 

 『おのれら~このオレをとうとう本気で怒らせてしまったようだな~?』

 

 敵レベリオンにとって、ガストはむしろいい拘束具になってくれていたが、それがたった今無くなった。

 

 「一撃で倒せるんじゃなかったの?」

 「計算が狂いました。」

 

 セシルには少々見通しが甘かったらしい。けれど、まだ想定の範囲内だ。爆発に巻き込まれた以上、無傷ではいられないはず。

 

 ガストから分離したのは、カーキグリーンの機体。ビームガンは自前の物だったようで、さらに腰にも2丁マウントしていた。

 

 『死ねやぁ!』

 

 「おっと!」

 「プランはそのまま、今度は確実に倒します。」

 「了解!」

 

 戦い方は変わらない。が、今度の敵機は小回りが利く。

 

 「くっ、さっきより厄介になってる!」

 

 『生憎オレにはこっちのスタイルの方があってるんでな!そこだァ!』

 

 「おっ!?」

 

 間一髪、シェリル機の足元をビームがかすめた。即座に態勢を立て直すが、その先を読むようにビームが降り注ぐ。

 

 (けど、そこ!)

 

 『じゃなァい!』

 

 「なにっ?!隠し腕!」

 

 腰からアームが延びると、腰にマウントされていたガンも操り、セシル機のライフルを破壊する。

 

 「セシル!」

 

 『仲間の心配とは、けなげな!』

 

 「ちぃっ!」

 

 『そらそら!今度はこちらから行くぞ!』

 

 攻撃手段を失ったセシルから、シェリルへと矛先を向ける。隠し腕で器用にビームガンを操り、4丁の射撃で徐々にシェリルの逃げ場を奪っていく。

 

 「なかなか・・・テクニシャンじゃないの・・・。」

 

 『お前、女か?女の戦士など去れ!』

 

 「逃げられるなら逃げたいもんだけど、舐められっぱなしってのも気にくわない!」

 

 『なら死ね!お前はオレのスコアになれ!』

 

 「うぉっ?!」

 

 シェリルは突然バランスを崩し、その隙を突かれて肩を撃ち抜かれ

ライフルを取り落とした。

 

 「・・・地面に穴が。」

 

 撃たれたことで倒れそうになるが、これをシェリルは神業的機動でバーニアを吹かし、宙返りするようにして空中でバランスを取り戻す。冷静になって地面を見て見れば、敵のビームよって地面に穴が開いていたのがわかった。シェリルはこれに躓いたというわけだ。

 

 「シェリル!」

 

 『すっこんでいろ!』

 

 敵機はスケートのように滑りながらスピンし、4丁のビームガンを乱射する。

 

 「ちーっ!なんて潤沢な攻撃!貧乏なウチとは全然違う!」

 「それはあなたがしょっちゅう壊すからでしょう?」

 

 悲しいかな、高級機と量産型ではやはりスペックに差がありすぎる。

 

 『さあ、もう逆転の目は無いぞ。』

 

 「逆転?そもそも追い込まれてすらいないっての。」

 

 『既に現実が見えていないとは、愚かな!』

 

 勿論、シェリルだってそれがわからないほどの馬鹿ではない。しかし、空にキラリと光る星が見えた時、シェリルの口角がにんまりと上がった。

 

 「来た!ここでプランBだ!」

 「プランB?聞いてませんよ!」

 「言ったでしょ!機体のチェンジだ!」

 「・・・!なるほど!」

 

 シェリルが閃いて、セシルは察した。理解が追い付かないのは敵だけだ。シェリルは上空へと飛んでいく。

 

 『何をするつもりかわからんが、隙だらけだ!』

 

 「そうはさせない!」

 

 『バカが!武器も持たずに!』

 

 「レベリオンの戦いは、格闘戦にある!」

 

 無謀にも武器を持たぬ手で敵機に殴り掛かっていた。とても頭の回る戦い方には見えないが、密着してしまえばビームガンは役に立たないし、隠し腕による攻撃は行えない。

 

 『この・・・調子に乗るなよ!』

 

 意外にも敵機も両手のビームガンを迷いなく捨て、セシルの拳を抑える。が、セシルもなんら臆することなく、腕を掴みなおして投げ捨てる。

 

 『おのれェ!もう許さんぞ!』

 

 「それはちょっと遅かったわね。」

 

 『ぬ?』

 

 見れば、上に向かっていたシェリル機が、まっすぐとセシルと敵のいる方向へと落ちてきている。

 

 『ハッ、奇襲攻撃のつもりか、舐めているのか!』

 

 隠し腕のビームガンのいい的、あっという間に狙い撃ちにされてしまい、ライトレベリオンは空中分解する。

 

 『ハッハー!あっけないな!』

 

 「・・・どうかな?」

 

 『ハッ?!』

 

 確かにライトレベリオンは撃墜された。それだというのに、セシルはいたって冷静だった。いや、1%は『してやったり』という嘲笑があったと訂正しておこう。

 

 少し前・・・空の上ではシェリルが、光る星目指して飛翔していた。

 

 「あったあった!ナイス角度だパトリシア!」

 

 近くで見れば、やはりそれは見覚えのある機体だった。群青のカラーリングに星型マーキングを施した自分の愛機だ。

 

 シェリルは攻撃を受けた瞬間、自分の機体をオート操縦で下ろしてもらうようにメッセージを送っておいたのだった。

 

 しかし、のんびりと着陸して乗り換えていては、セシルの身がもたない。

 

 「さて、と・・・やるの久々だし、ちょっち緊張するな。」

 

 まず降下している愛機と乗機が向かい合うように、向きと速度を調整する。次に、決して離れにように手と手を重ねる。バランスを維持しながら、重力と上昇速度が拮抗する点を目指して2機は上昇する。

 

 「ハッチオープン、ううっ、寒っ!」

 

 そして、冷たい風を顔に浴びながら、両機のハッチを空ける。

 

 「・・・来た!今!」

 

 ゼロGの境目、速度と慣性が働かない瞬間、ライトレベリオンのコックピットを蹴って、愛機のハッチの中へと飛び込む。

 

 「っぷっはぁ!緊張したぁ!」

 

 まさに天にも昇るような感覚だったが、今こうして手にはレバーの感触が返ってくる。よく知る機体のクセが、安心感を与えてくれた。

 

 「今までありがとう、さぁ・・・もう一仕事お願い!」

 

 今まで乗っていたライトレベリオンは、地上の目標めがけて落ちていく。

 

 「いたな!」

 

 こちらに気づいた敵は撃ってくるが、その狙いはシェリルではなく、無人となったライトレベリオン。

 

 「セシル!」

 「ええ、今!」

 

 『なんだと?!』

 

 敵もこちらの狙いにようやく気付いたが、こちらの方が一歩も二歩も早い。

 

 「チェストォオオオオオオオオ!」

 

 『ぐぉおおおおおおおお!!』

 

 レベリオンの基本は格闘、それを体現するだけの表現力を乗せたパンチを、セシルの抑えた敵に打ち込む。

 

 『まだ・・・まだだぁああああああああ!!』

 

 鈍い音を立てながら転がった敵だったが、特殊鋼カーヴニウムで出来た機体はまだ動ける。隠し腕が片方もげたが、最後の攻勢を仕掛けてくる。

 

 「まだ殴られたいか、愚かな!」

 「悪役みたいなセリフね。」

 

 シェリルもまた、バーニアを吹かして追いかけ、格闘戦を行う。

 

 『貴様らぁあああああ!!殺されろぉおおおおお!!』

 

 理性を爆発させた敵は、無我夢中で拳を振り回してくる。それらを難なく制するシェリルと、一進一退の攻防を繰り広げる。

 

 『喰らえぁあああああああ!!』

 

 踏み込んできた敵の攻撃を一歩引くことで躱す。それを待っていたと、ビームガンの銃口を合わせる。

 

 だがその一歩は、シェリルたちの二歩には届かない。

 

 『なんっ・・・・だとっ・・・?!』

 

 撃破された敵の目に映っていたのは、ライフルを構えたセシル機の姿だった。

 

 「・・・終わった?」

 「ええ、終わり。援軍が来る前に帰投しましょう。」

 

 おそらく敵機パイロットは死んではいないだろう、けど無暗に命を奪う必要もないと判断した。

 

 「遊馬も見ててくれたかな?私の超ファインプレー!」 

 「潜航してるから見てないと思うわ。」

 「えー、がんばって損した・・・。」


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