ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第4章
第63話


 さて、ネプチューンは航行を再開し、八卦島を後にする。追手は今のところなし。いたって安全な航海だ。外の景色は変わり映えしない群青の世界だが。

 

 「では、次の我々の行動についてですが・・・。」

 

 フルメンバーではなくなったブリーフィングルームで、セシルが次なる作戦の説明を続けている。今回は遊馬も拝聴している。聞いていたところで遊馬に出来ることは無いんだけれど。

 

 「これより本艦は軌道エレベーターに向かいます。」

 「まさかのカチコミ?」

 「違います。先に打ち上げたレベリオン隊に追い付くために、人員だけは軌道エレベーターで宇宙に上がります・・・これは前の説明の時に言ったはずですが?」

 「ジョーダンだって。」

 「まったく、あなたが言うと冗談に聞こえないんですよ。」

 

 シェリルもそこまでバカではない。むしろ元空軍パイロットなんだから、頭はいい方だ。まあ5人の中では一番下なのかもしれないが。

 

 「そんなことより、はやくみんなと合流しないとな。で、私のレベリオンはどうするんだ?」

 「今回は、軌道エレベーターで『密輸』させようと思います。」

 「えっ、でも軌道エレベーターでは審査されるんじゃ?」

 「一機だけなら、なんとかなる算段です。エレベータークルーにもヘイヴンの息がかかった人間がいますので。」

 

 5機となるとごまかしがきかないが、一機だけなら・・・というわけだ。

 

 「そのためにはまず、レベリオンを格納したコンテナを擬装して、軌道エレベーター基地へ輸送する必要があります。」

 「そういえば軌道エレベーターって地球にどこにあるの?」

 「太平洋、赤道上の人工島『ラ・ムゥ』です。」

 

 ラ・ムーとは、太平洋上の伝説の大陸、ムー大陸を支配した王の名前だ。なかなかかっこいいじゃないか。

 

 「ごほん、そのラ・ムゥに至る前に沖縄の人工島『ニライカナイ』に向かいます。」

 

 ニライカナイは沖縄の伝説に登場する海底国だ。伝説、とても心惹かれる言葉。

 

 「ニライカナイには何が?」

 「ラ・ムゥへ直通の列車が。大陸からの物資輸送が行われているので、そこに紛れ込ませます。」

 「なるほど・・・。」

 

 地球上から物資を輸送するリニア鉄道と、オービタルリングで太陽光発電されたエネルギーを世界中に届けるための電力網、それらはレールの上で一致する。

 

 現在、ネプチューンは日本近海に潜伏しており、一番近いリニアの駅がニライカナイにあるから、そこから地道に軌道エレベーターへ近づくというわけだ。

 

 「それでは、本艦はニライカナイに向かいます。」

 

 のんびり沖縄観光というわけにはいかないだろうけれど、久しぶりに日本の土を踏めるのはいい。いや、人工島だから生の土はないか。

 

 それにしても、ラ・ムゥもニライカナイも海を埋め立てて新しく島を作ったのなら、環境問題にも足を突っ込んでいそうだ。

 

 「ところで、今からニライカナイに向かうってこと、敵には察知されてないんです?」

 「可能性としては十分にありえます。けど、襲撃を仕掛けてくる可能性は低いです。」

 「どうして?」

 「オービタルリング関連施設は、永世中立。そんなところで騒ぎを起こすのは、いかにヘイヴンと言えど御法度ですから。」

 

 それだけに、2年間に謎のテロ組織バミューダが、衛星砲を占拠したのは衝撃だったのだ。そのバミューダについても、今なお謎が多い・・・実際のところは、クリス司令の言うようにエヴァリアンによる茶番劇だったというのが有力か。

 

 「なるほど・・・。」

 「それでも、最悪の事態を想定して、更なる策を講じておきますが。」

 「心配ないって、セシルの立てた作戦なら、襲撃が来るのも計算の内だから!」

 「なんか褒められれてるような貶されているような・・・。」

 

 直接魚を捕まえるよりも、魚の逃げる先を予測して網を張っていた方が効率がいいというわけだ。非常に合理的でセシルらしいと思う。セシルのことまだよく知らないけど。

 

 「なら、セシルも一緒に遊ぼうよ。お互いを知るために。」

 「私はまだ仕事が残っていますので。」

 「そう言わずに、ポーカーでもしよう。」

 「けど、ハートのクイーンが足りてないんでしょう?」

 「ああ、あれならベッドの下に落ちてた。」

 

 あの後、部屋中を探してみたら普通に見つかりました。

 

 「けど、なんであんなところに落ちてたんだろ?」

 「あなたがあの日派手に暴れたから・・・おっと。」

 「あの日?」

 「さぁてね。そだ、今度は遊馬も一緒にやる?セシル?」

 「丁重にお断りするわ。それじゃあ。」

 

 暴れたって、シェリルも負けが込む時があるんだな。たしかにセシルはゲームにも強そうだ。ぜひ勝負したいところだったけど、その気じゃないらしいしまた今度だ。

 

 「じゃ、今日のところは私ともう一戦!」

 「望むところだ!今度こそ勝ってやる!」

 

 しかし、セシルとはもっと仲良くしたい。あんなにグッズを持っていてラッピー好きでないはずがないし。何かきっかけがあればいいのだけれど・・・。


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