ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第64話

 『ニライカナイ』、15年前に沖縄に造られた人工島で、日本、中国、東南アジア等と海上リニアレールで繋がっており、オービタルリングからのエネルギーを中継する役割を持っている。

 

 ところで、本来のニライカナイとは、遥か東の海の彼方にあるとされ豊穣や生命の源の異界だという。異界、今まさに現実と異界の狭間に立っている遊馬には、なにやら関係がありそうな場所だ。

 

 まあそんなことよりも、遊馬の関心は沖縄の名物グルメにある。ミミガーやテビチなんか、豚肉料理が豊富なようで、肉料理好きの遊馬には目が無い。ニライカナイの旅行パンフレットを眺めながら、脳内でその味を想像する。

 

 なにせ、そのニライカナイ現地にまで目と鼻の先の距離にいるというのに、全く手が出せない状況にいるのだから。

 

 「ああ・・・食べてみたいなソーキそば。」

 

 ヘイヴンの活動はとにかく秘密、秘密の、トップシークレット。おいそれとネプチューンの外に出ることも出来ない。当然、のんびりと観光なんてもっての他。

 

 ニライカナイへの密輸および密航には、慎重にじっくりと事を成すために少々の時間をかけることとなった。具体的には2日ほど。まるで釣りのように気を長く持つ必要がある。

 

 「釣り?釣りがしたいの?」

 「釣りはやったことないかな・・・釣りでもなんでも、外に出たいってことなの。」

 

 いくら引きこもり気質だったとはいえ、いつまでもカンヅメとあっては精神に異常を来しそうだ。特に、一人で楽しめるゲームがないから。

 

 「ゲーム・・・ゲームがしたい・・・。」

 「たまにはブラックジャックでもやる?」

 「そういうんじゃない、デジタルなゲームがやりたい。」

 

 親指をグニグニとさせて、すっかりゲーム中毒の禁断症状があらわれている。

 

 その欲求を解消するためにはソフトがない、ハードもない。いや、ハードならあるにはある、ゲームPODネクスが。だがソフトが無ければ結局どうしようもない。

 

 「どこかにソフトが落ちていないか。」

 「それはいくらなんでもないでしょ。」

 「・・・多分ありますよ。」

 「あるの?!」

 

 一番そういう冗談に乗りそうになかったセシルが口を開いた。

 

 「どこに?」

 「ラッピーグッズの山のどこかに。」

 「よーし!」

 

 最後まで聞かずに遊馬は走り出した。

 

 「あるの?」

 「あります。」

 「あった!」

 

 自室の隅にまだ積まれているラッピーグッズの山・・・いい加減片づけることを考えたほうがいいだろうけど、その中から一つの箱、ブリキ缶を手に取り開けてみる。

 

 そこには縦長で、上半分に画面のついた手に収まるサイズの機械があった。

 

 「旧・ゲームPODか。これまた古い・・・。」

 

 遊馬の持つゲームPODネクスよりも旧型のゲームPODよりも、さらに一つ古い『初代』ゲームPODだ。

 

 横長のネクスとは形も違うが、この初代ゲームPODは画面がまだ白黒なのだ。しかしその分バッテリーの持ちが良く、同世代で他者のカラー機種を差し置いて当時は一世を風靡したという。

 

 そのゲームPODの背面に、一本のソフトが挿さっている。

 

 「初代ラッピーか。いいね。」

 

 白黒のゲームPODのゲームソフトの中で決定版と言っていい。『月ウサギのラッピー』の一作目、まだお菓子を食べて能力を発揮できないなど、現在のラッピーの常識からは大きく外れているあ、それを補って余りあるほどの魅力のある至極の一本。やや難易度が辛口なのが玉に瑕だが。

 

 「これ、やっていいかな?」

 「ええ、どうぞ。私はやりませんから。」

 「ふーん、ところでさ、なんでセシルは好きでもないラッピーのグッズを集めてるんだ?」

 「私が好きだったわけじゃないわ。マ・・・お母さんが好きだったの。」

 「ふーん、ママか。」

 「お母さんよ。」

 

 せっかくだからこのゲームPODでプレイしようかと思ったが、残念ながら電池が入っていなかった。けれど、電池を入れれば普通に動くだろう。

 

 「そのお母さんは?」

 「・・・もう亡くなったわ。17年前に。」

 「17年前っていうと・・・。」

 「ええ、先のアダム戦争の時に戦死したの。」

 

 ゲームPODネクスのカサブランカのソフトを抜いて、代わりにラッピーのソフトを挿す。

 

 「そっか・・・。」

 「ええ、そうよ。」

 「このデータ3消していい?」

 「遊馬・・・今はシリアスなシーンだと思うのだけれど?」

 「なに?なんのこと?それよりこのデータ1は誰の?」

 「データ1はお母さんの。」

 「2は?1%しか進んでないけど。」

 「2は・・・・たしか私がやろうとしてたの。」

 「なんでこんな序盤で辞めたの?」

 「当時の私には難しすぎて、投げたのよ。」

 「ふーん・・・。」

 

 たしかに、さっき言ったように初代はちょっと辛口だ。だが、それも続編では変身能力が追加されて攻略の幅が広がったり、アクションも見直されている。途中で辞めちゃったのはちょっともったいないかも。

 

 「なら、今度家に帰った時にいくつか簡単なの選んで持ってくるけど、それやってみない?」

 「いいわ、すっかり苦手意識ができちゃったし。」

 

 と、拒絶されてしまった。ラッピーはシリーズ全体で見ても決して難しいゲームではないので、苦手意識を持たれるというのはちょっと悔しい感じがする。

 

 「なに?遊馬ったらセシルに気があるの?釣った魚(わたし)

には餌やらないの?」

 「釣りはもういい。」

 

 とりあえず、セシルにもゲームに関心を持ってほしかった、ということにしておこう。さあ、久しぶりのゲームだ、腕が鳴る。

 

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