ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第71話

 

 【QUEST CLEAR】

 

 ランクC:宇宙の大掃除

 

 『あそこまでやってランクC?』

 「オービタルリングの内側しかやってないからね。」

 『目が回りますの・・・。』

 

 地球圏全域を片づけなければA評価貰えないとすると、これは相当キツいサブクエストに違いない。ただいつでも辞めれるのが幸いだ。タイムアタックなら何もせずに即終了だ。

 

 『それで、これでどう変わるんだ?』

 「ちょっと待ってね。確認してくるから。」

 

 徐にゲームPODネクスを取り出すと、電源を切って元の世界へと帰る。まだシャワーを浴びたばかりの髪が湿っている。

 

 「さて、今度はどう変わったかな?」

 

 予想が正しければ、現実ではスペースデブリ撤去運動『地球を綺麗にしよう運動』は施工されていないはずだ。なにせ、向こうの世界でデブリはある程度撤去されているから。

 

 「なるほど・・・。」

 「キャンペ-ンが施工されなかったら、ウラヌスがカムフラージュしてるデブリが取り除かれる心配もないということだ。」

 

 「たしかにそんな名前の運動は施工『されていない』ですね。」

 「やはり、サブクエストで起こったことは過去の出来事となるのか。」

 

 この現実での2年前にあったバミューダの襲撃も、ゲームの世界ではサブクエストのうちのひとつだった。

 

 「けど、せめて一言連絡してから実践してみてほしかったですね。」 

 「ごめんなさい。」

 

 ホウレンソウは仕事の基本だ。勝手に行動するのはマズかろう。

 

 「でもまあ、おかげでウラヌスが見つかる可能性は下げられました・・・現実が書き変わった瞬間を見ていないので、確認のしようが無いのですけど。」

 「うーん、貢献できたのかな?」

 

 遊馬は『結果』の瞬間を見ていないし、他のみんなは『書き換えた』ことを知らない。この行動はなかなか難しく、むなしい。

 

 それに、結果を予測するのも少し難しいかもしれない。今回の場合はある程度目ぼしをつけていたがバミューダの時のように全く副次的な要素が表に出る可能性もある・・・。

 

 「今度からは連絡を忘れないようにしてくださいね。」

 「はーい。」

 

 ともあれ、ひとつ確認と報告をすませてゲームの世界に戻ろうとしよう。

 

 「ただいま。」

 『おかえり。』

 『どうあだった?』

 「考え通りだった。」

 

 オービタルリングのステーションに帰還しつつ、事の顛末を説明した。全員納得してくれたようだが、美鈴だけは上の空、というか放心状態で聞いていなかった。

 

 「美鈴、大丈夫?生きてる?」

 「・・・星が揺らいで見えますわ。」

 『目が回っちゃったかな?』

 「エルザが飛ばし過ぎるからでしょ。」

 『てへへ。』

 「その姿でテヘペロされても恐ろしいだけだわ。」

 

 あっそ、とエルザもカサブランカから少女の姿に戻る。

 

 「しかし、結果を予測する必要があるとはいえ、現実を改変出来るのは強みだね。うまく使えないかな。」

 「むしろ、そのせいで現実がおかしくなったのかもしれないけどね・・・。」

 「ニワトリが先か、タマゴが先か。」

 

 ゲームの世界があったから現実がおかしくなったのか、現実がおかしいからゲームの世界があるのか、どうやらこのパラドクスは思っている以上に複雑怪奇らしい。

 

 まあ、今更そんな問題を論じたところで大した意味がないが。

 

 「下手にサブクエストをこなすと現実が変わっちゃうし、メインクエストもしばらく発生してないし、だんだんこっちでやれることが少なくなってきたな。」

 

 製作者がバランスを見誤ったせいだ。例えば、等身大のキャラクターしか入れないダンジョンで、巨大な味方との戦闘を前提とした強さのボスを置かれたような・・・。

 

 「あっ、こっちで強力なロボットを作っておいて、後で現実の方で回収するってのはどうだろう?」

 「ナイスアイデア!それならこっちのヒマも潰せる。」

 「いいのかな?現実のパワーバランス壊れちゃうよ?」

 「うーん・・・まあ設計するだけならいいんじゃない?」

 「やったー!科学者の血がうずく!」

 

 トビーは特に楽しそうだ。専攻は生物学だったはずだけど。

 

 でも自分専用のロボットってちょっと憧れる。ミサイル、レーザー、ロケットパンチ。色々な武器を装備させたい。

 

 「カサブランカにはそういうの乗ってないんだよなぁ。あ、リオンフォンならあるけど。」

 「内蔵武器は非効率的だと思うのだけれど?手持ち武器があれば十分よ。」

 「最大の武器が拳のロボットは言う事が違う。」

 

 普通ロボットのマニュピレーターというのは精密機械なんだけれど、レベリオンの場合は一番硬い部分らしい。

 

 「まずカサブランカのデータから、そっくりなコピーを作ってそこに盛っていく・・・としようか。」

 「すでにやる気なんだなお前は。」

 

 設計するだけって言ったのになぁ・・・ともかくトビーが楽しそうにデータ端末をいじり始めた。

 

 「けど、材料はどうする?」

 「どこか、ありそうな場所に心当たりある?エルザ。」

 「うーん・・・火星ならあるかもしれないけど。」

 「火星か・・・。」

 

 火星にはアダムの基地もある。そこでレベリオンが作られたのだから、当然新しく作る設備もあるだろう。

 

 「じゃ、次の行先は火星ね。ラッピー、ロケット出して。」

 「らぴ!」

 「もう行くことは決定事項なのか?」

 「まあ、いずれ行くことになるのは確かだろうけど。」

 

 多少一足飛びすることも出来るのがラッピーがいることの強みである。

 

 「まあ、がんばって。僕は現実に戻るから。」

 「おう、うまくやれよ。」

 「そっちも、気を付けてね。」

 

 火星までの距離は最短でも5500万km、最接近した距離で8000万kmもという、途方もない距離だ。まあワープに等しいラッピーのキャロケットなら一瞬で着くだろうけど。

 

 またクエストが発生したらこちらに来よう。現実の方ももうすぐ軌道エレベーター行きの列車が出発する頃だ。それを見送ってから、こちらにまた戻ってくるとしよう。

 

 「あ、ちょっと待った遊馬。」

 「なに?」

 「アレだけ見とけ。」

 「アレって?」

 

 窓の外を見ると、ゆっくりと漂っている白い羽のような物体が目に入った。

 

 「レイの宇宙船か・・・。」

 「・・・あんな戦いがあったことが、もうずっと昔のようだね。」

 

 そっと目を細めると、窓越しに手を添える。白い墓標は宇宙を漂っていく。

 

 (・・・忘れない、あの悔しさも哀しみも。)

 

 今一度、遊馬はこの世界を遊び尽くすことを誓った。

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