ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
『全パーツ確認、オールチェック。』
『レベリオンの積み替え、完了しました。』
シェリルのレベリオンを中に入れたコンテナを、海面でタンカーに載せ替え、このままニライカナイへ向かうことになる。
軌道エレベーターおよびその関連施設へ兵器を持ち込むこと、それはタブー中のタブーとされる。そのために一旦機体を解体して、宇宙で組みなおす。多少手間であるが、安全には気を使わなければならない。
「しかし、こんなに手間になるなら最初からシェリルの機体だけ置いていけばよかったんじゃない?」
「宇宙では確実に戦闘が予想されます。最大戦力を置いていくのは、パイロットの身も考えると避けたいところですから。」
「へー、シェリルってそんなに強かったのか。」
「私は強いよ?」
ふふん、と誇らしげに鼻を鳴らしているシェリルである。その恰好はヘイヴンの制服ではなく、ラフな私服である。私服でいるのはセシルも同じであるが、正確を反映するかのようにピシッと着こなしている。
実際シェリルは強いのだろう。それは以前の戦いの様子を見たことで遊馬にもわかっている。
「調子に乗らないの、私たちはチームワークあってこその強さなのだから。」
「はいはい、わかっておりますとも。」
思いっきりスタンドプレーが好きそうな性格をしているがその実、シェリルはチームワークや作戦の重要性を正しく理解している。
その作戦を立て、シェリルにも納得させているセシルの手腕も見事なものだ。同時にシェリルのアドリブにも対応してみせ、最後には最初のプラン通りにシェリルが攪乱してセシルがトドメを刺した、というわけだ。
「つまり、シェリルの手綱を握ってるセシルの方がすごい?」
「そういうこと。」
「いっつもネコのくせに。」
「ネコ?」
「いたたっ、冗談!」
セシルは恐ろしい無表情でシェリルの頬を抓った。一体なにがそんなに怒らせたのか。
「遊馬君はまだ17才だったろう?あと1年待ちたまえ。」
「はぁ?」
遊馬の疑問を見透かしたかのようにクリス司令が語りかけてくる、が今度はセシルが無言で尻に蹴りを入れた。
「バカなこと言っていないで、私たちも外に出ますよ。」
「おう、行こう。」
司令室を出て、甲板へ。これからシェリルたちは、一般市民として軌道エレベーターに向かうのだ。
「それじゃあ、行ってきます!」
「うむ、ふたりとも気をつけてな。」
レベリオンを運送するための手段として、とある海運会社のタンカーの運航ルートに浮上し、載せてもらう。レベリオンの解体、コンテナへの積み込み、そしてタンカーの運航、この準備のために2日かけたというわけだ。
「じゃ、遊馬。帰ってきたらヨロシク♡」
「何回も言われなくてもわかってるよ、気を付けてね。」
名残惜しくもなく、後ろ髪を引かれるでもなく、2人を乗せたタンカーはネプチューンを離れていく。遊馬はそれが見えなくなるまで甲板から見送った。
「あの2人なら大丈夫だ。」
「司令。」
「我々の仕事は主に待つことだ。例えば、こうして彼女たちが行って帰ってくるまでに補給をすませたりだとかな。」
「それはつまり、手伝えとおっしゃりたい?」
「レベリオンの実戦訓練だと思って、付き合ってくれないかい?」
「まあ、いいですけど・・・。」
「助かる、人手はどれだけあっても足りないくらいだからな。」
格納庫に残されているセシルの乗っていたライトレベリオンに、遊馬は乗り込みしばらく待つと、次のタンカーがやってきた。同じようにネプチューンの傍らに停泊すると、荷物を卸していく。
『いいかい、このコンテナを持ち上げて運んでくれ。』
「了解、えーっと・・・ゆっくりと手を近づければ自動で掴んでくれると。』
コンテナの縁の取っ手部分に、ゆっくりとライトレベリオンの手を近づけると、センサーが反応して握ってくれる。ここまではシミュレーション通りだ。
「あとは持ち上げてと・・・。」
『壁や柱ににぶつけないように気を付けて!』
「うっ、了解。」
バランスを考えると少し持ち上げる必要があり、そうなるとコンテナの影になって前が見えないが、代わりに足回りに備えられているサブカメラを立ち上げる。
「よっ・・・と・・・。」
「ご苦労さん、次も頼む。」
「正直コンテナを運ぶだけならフォークリフトとかの方がいいと思う。」
「そこが配備のネックなんだよ。今回はたまたま一台余った機体があるからいいが、普段はもっと大変なんだよ?」
「司令官が作業着着てるってだけで察せられる。」
ゆっくりと慎重に、遊馬は物資の入ったコンテナを一つ、二つと運び込んでいき、逆に空っぽのコンテナをタンカーに戻していく。
『オーライ!オーライ!よし!サンキュー!これで最後だ!』
「どうも!」
なんだかんだで、特に問題もなくこなすことが出来た。
「ご苦労様、遊馬君。」
「疲れた・・・。」
「うむ、またやってもらうかもしれないから、覚悟していてくれ。」
「へーい・・・。」
甲板に吹き抜ける海風が、汗に濡れた体に染み渡る。普段使わないような神経や筋肉が心地よい悲鳴を上げている。
「ありがとうな!」
「助かったよ!」
だがそれ以上に、道行く人に感謝の声を掛けられて嬉しかった。普段一人でゲームをしているだけでは得られないような充実感を遊馬は感じ取っていた。