ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について 作:バガン
話は遡ること数時間前。物資補給をすませて一息ついていたネプチューンは、全体メンテナンスのために近場のドックに寄港しようとしていた。
だが、入港するシーンを見られては襲撃を受ける可能性がある、また潜水しながら隠れて移動する必要がある。
そして今は潜水システムのメンテナンスのために海上に停泊している。久しぶりの日光を浴びて、ネプチューンの群青の船体は黒光りしている。
「よし、7面クリア。」
そんな日差しを避けるように、遊馬はエアコンの効いた自室でゲームにふけっている。それも特に外に出る理由も無いので致し方なし。
「いつもならシェリルが誘ってくれるんだけどなー。」
何かしら理由をつけて遊びに誘ってくれていたが、その彼女も今は任務のためにここにはいない。だからか、やけに寂しく感じる。
今まで1人でゲームにふける時間も多かったが、こんな風に思わさせられるという事は、それだけ彼女の存在は大きかったということか。
なら、彼女が帰ってきたときのために遊馬はどうすればいいか。ゲーム的な選択肢としては『男を磨く』が欲しい。またシミュレーションをやらせてもらおうか?
「おうい遊馬、たまには部屋を出てみないか?」
「さすが、部屋に籠りっ切りな作家先生は言う事が違うなぁ。」
「そんなことはないぞ?買い物は俺が行ってるし。それに陽の光を浴びないとビタミンDの生成には程よく紫外線を浴びるのが肝要でな?」
「あーはいはい。」
突然部屋に入ってきた父親の鬱陶しい蘊蓄を聞き流す。ノックぐらいしてくれと思う。
「なんか用?」
「いや、別に用ってほどのことでもないが・・・息子の顔を見に来ちゃいかんか?」
「ダメではないけど、普段こっちから会いに行こうとしても顔見せなくくせに、こういう時だけ出てこられてもなって。」
「今はちょっとだけ時間があるから。何か話したいことがあるんじゃないのか?」
ふーん、とちょっと考える。話したいことと言えば、最近どうにも記憶の中の片桐遊馬と、今の自分が一致しないということ。
「ああ、前の世界ではお前はヒッキーだったからな。」
「ハハッ、嘘だろ?」
「本当だ。お前は学校の周りに着いて行けず、引きこもりになってしまったのだ。」
「そうだったのか。」
道理でひきこもりの記憶が混在していたわけだ。にもかかわらず、初めこの世界で目覚めた時学校に行こうとしていた。けど、その学校もレベリオンパイロット養成学校だったわけで・・・。
「じゃあ、この世界では僕はパイロット候補生だったのか。」
「そうなるな。」
自分の記憶が信じられないなんて、信じられない。頭を抱えたくなる。
「逆に考えろ、今がゼロならなりたい自分になれる。」
「なりたい自分ね・・・。」
少なくともそれは、今ここでゲームにふけるだけの自分ではない。
「シミュレーター借りてみるか・・・。」
「それでいいんじゃないか?」
気楽に言ってくれるが、その原因はこのオヤジにある。
ともかく、男を磨こう。有事の際にパイロットとして最低限の動きが出来るぐらいには鍛えておこう。
その有事がすぐに来るとは、この時は思わなかったが。