ダークリリィ:ゲーマーの僕が有名ゲームキャラたちと同じ空間に詰め込まれた件について   作:バガン

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第76話

 前回、最低限動きながら静止する目標を撃つことと、動く目標を静止しながら撃つことはできた。初日にもかかわらずそこまで出来たのも、養成学校に通っていた記憶があるおかげだと思う。その辺の記憶も無いんだけど。

 

 ともあれ、今の目標としては相手の攻撃を避けながら、動く標的を撃つこと。つまり、今できること二つの合体だ。

 

 「くっ・・・この・・・。」

 

 ロックオンに関しては、ある程度コンピューターがやってくれるが、右へ左へ、上へ下へ目まぐるしく変わる視界の中で、標的を捉えながら腕を向けなければならない。動体視力が追い付かなければあっという間に敵を見失い、そうなったら戦場では即命取り。

 

 「・・・やられた。」

 

 なんどやられようとシミュレーターでは死にはしないが、今日だけで何回死んだだろうか。

 

 「・・・なんの、コンティニューだ。」

 

 めげずにコインを連投する。死なないんだから、死ぬほどやり続けなければ身につかない。だからこうして死にまくっている。

 

 「くそっ・・・もう一回だ!」

 

 こういう、ロボットを操って敵を撃つようなゲームに、遊馬は非常になじみが深い。にもかかわらず負け続けているのが悔しいのだ。同時に、いかにヌルゲーに浸かっていたのかと反抗心もメラメラと燃えてくるじゃないか。

 

 10秒でやられた次には15秒耐え、その次には20秒耐えられるようになった。ほんのわずかな差であるが成長を実感できる、こんなに楽しい体験があるか。

 

 「くぉーっ!もう一回!」

 

 VRの限りなくリアルな映像に、またレバーやシートから伝わる振動にも慣れてきた。本物の景色や、Gがどんなものかはまだ体験していないが、少なくとも初見でビビることはなくなるはず。

 

 「もう一回・・・もう一回。」

 

 めげない、しょげない、あきらめない。それが攻略への近道。試行錯誤、トライアンドエラーを繰り返しながら、着実に敵AIを追い詰めて行っている。

 

 「・・・よし!」

 

 そうして幾十回目かの敗北を味わったところで、遊馬の中で何かが弾けた。

 

 攻撃にパターン、癖があるのは何度も戦っていてわかったが、それはコンティニューするたびに別のパターンに切り替わる。なので、パターンを読んで対処するというゲーム的な発想はあまり有効とは言えなかった。

 

 なのでゲーム的な攻略法は捨てて、ひたすら総当り的に無心で戦ってきていたが、不思議なことにここ十数回の動きには、一定のパターンが見えてきた。

 

 「この敵って、学習機能とか持ってるんですか?」

 「ああ、複数のパイロットやシミュレーション結果から自動的に最適な戦い方を学習するAIが組み込まれてる。」

 

 すぐ外で見守っていた情報士官さん、名前も知らないその人が教えてくれた。曰く、シェリルやセシルの戦闘データも組み込まれていたらしく、このプログラムを組んだのはパトリシアということだ。

 

 「ってことは、僕の戦い方を学習しちゃってない?」

 

 それすなわち、遊馬の癖を持ちながら、最適な動き方を計算して導き出してくれているという事だ。

 

 「これが模範的な動き方ってことか・・・すいませーん、この敵の動き方をこっちの操縦席にインプットって出来ますか?」

 「ああ出来るよ。そこに気づくなんてお目が高い。」

 

 つまり、敵は現在遊馬の持ちうるテクニックで再現可能な最適な戦い方をしているということだ。これをラーニング出来れば、確実にレベルアップを見込める。

 

 後は一旦敵のプログラムを抽出し、シミュレーターの戦闘システムにすり込めば、あっという間に遊馬の戦い方は洗練される。

 

 「さあ、出来たよ。キミの戦い方に合わせた『コンバットメモリー』だ。」

 「わぁい、まるでマンツーマンで勉強プログラムを組んでくれる通信教育のようだ。」

 「今なら月額サンキュッパ。」 

 

 ありがとう、名前も知らない情報士官さん。

 

 「でもこんなシステムがあるんなら、5人と言わずにもっとパイロットを雇えるじゃない?補欠パイロットは必要でしょうに。」

 「冗談、あんなピーキーな設計ばかりの機体に誰も乗りたがらないよ。」

 

 パイロットがいても、乗れる機体が無いんじゃしょうがない。戦いは数が物をいうが、それが出来るのはお金持ちの組織に限る。そのために少数精鋭のゲリラ戦法が役に立つ。特に、シェリルたちエースパイロットの腕は、世界有数クラスともいわれている。そんなチームワークのところに、新兵を放り込んでも役には立たないだろう。

 

 レベリオンの操縦スキルに劣るパトリシアやアリサがその質の差を少しでも埋めるため、自分たちの戦闘の補助のために作った学習システムが、今はこうして遊馬のためになってくれた。さあ、この戦闘プログラムを使って、さらに鍛錬を積んでみよう。

 

 「うっ!なんて振動だ!さっきまでのとは比べ物にもならない!」

 

 急激な自機の挙動の変化に、遊馬が追い付けない。訓練はふりだしに戻ったのかもしれない。だが、ランクアップはしている。確実に以前より高い位置にいる。

 

 グリグリと錐もみ回転のようなマニューバーを交えながらも、的確な射撃を繰り出せている。

 

 「行ける!行ける!」 

 

 ギャラリーからも驚きの声が上がる。

 

 「そこぉ!」

 

 その瞬間、遊馬の胸の高鳴りも、観客のボルテージも最高潮に達した。

 

 「勝ったぁあああああ!!」

 「うぉおおおおおおおおおお!!!」

 

 ついにやった、やりきった!遊馬は見事に敵を撃墜した!

 

 名前も知らない人達とハイタッチをして喜びをわかちあう。

 

 「・・・やるじゃない。」

 

 そっと、その様子を見てクリス司令はほくそ笑んだ。

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